アイリスとギルマス①
ギルドマスターの部屋はとても綺麗に整理されていた。
やはりエルフという種族の特性からなのか、知的分野の仕事は得意なようである。
アイリスとナタリアはソファーに座るよう促されるとそれに従う。
受付嬢の一人が三人分の飲み物と茶菓子を持ってきて、それぞれの目の前に置いていく。
「ありがとうございます。」
アイリスは受け取ると中身が黒い液体であることを確認した。
コーヒーと呼ばれる飲み物は苦味が特徴で、アイリスはその苦味が少し苦手である。
隣にあった角砂糖を3つ入れようやく美味しくいただくことができた。
ナタリアはブラック派なのでそのまま飲む。
ギルドマスターの飲み物はどうやら紅茶と呼ばれる香りを楽しむ飲み物のようだ。
アイリスと同じように角砂糖を2つほど入れて嗜んでいた。
「さっきは悪かったねナタリア。」
「いいさ別に、それより今日来た理由だが……」
「この子のギルド登録だね?」
猫舌のアイリスは息を吹きかけながらコーヒーを冷ましていたが、突如自分の話題になったことで一旦カップをテーブルに置く。
「こいつは前に話した私の弟子だ。ほら挨拶しな。」
「アイリスです。よろしくお願いします。」
アイリスは名前を言った後お辞儀をする。
それを見てギルドマスターは意外そうな顔をした。
「ほぅ、ナタリアの弟子と聞いてたからこんな礼儀正しい子だとは思わなかったな。」
「てめぇ、私をなんだと思ってやがる。」
ギルドマスターは「ごめんごめん。」と笑いながら軽く謝ると後ろの棚に置いてあった水晶を掴む。
「今から君の魔力量と属性を調べるよ。それをもとに冒険者ランクが決めるからね。」
アイリスの目の前にあるのは片手で持てるくらい小さな水晶玉。
今は透明だが、光った色によって自身の属性が分かる代物のようだ。
「よっ。」
アイリスは変な掛け声とともに水晶に魔力を込めてみた。
すると水晶は眩く光り出す。
「ほぉ。その年でナタリアや僕並みに光らせることができるとは。」
ギルドマスターが感心しているのも束の間、光が落ち着くと次は水晶の色が透明から徐々に変わっていく。
「これは……予想外だね。」
「思っていた通りの黒だな。」
驚くギルマスとは対照的にナタリアは自身の仮説があっていたことを確信した。
「どういうことですか師匠?」
アイリスは水晶から手を離すと隣で見ていたナタリアに問いかける。
ナタリアは椅子に深く腰かけるとギルドマスターに目配せをする。
すると、何かを察したギルドマスターはすぐに部屋全体を覆う結界魔法を展開した。
あまりの手際良さにアイリスは感嘆の声を上げる。
「ここから先の話はこの場だけで止めて置いてくれ。この話をする前にアイリスと出会ってから今までのことを話そうか。」
ナタリアはアイリスが森に捨てられていたこと。
そこから弟子として今まで森で生活してたこと。
人との関わりを持つために街で暮らしたこと。
道中襲ってきた魔族を簡単に倒したこと。
そして前世の記憶が残っていることなどをギルドマスターに話した。
正直ここまで話すとは思っていなかったのでアイリスは驚いたが、
「こいつは信用できる……いや、こいつ以外信用できないからな。早めに打ち明けていた方が何かと動きやすい。」
というナタリアからの説明で納得した。
「水晶が黒く……なるほど魔族返りとかいうくだらない風習を真に受けた貴族が彼女を森に。しかも前世の記憶持ちですか。」
ギルドマスターが一人の世界に入ろうとしていたところをナタリアすぐに止める。
「考えるのは後にしてくれ。」
「ん?あぁ、すまない。気になる事があったら解明したくなるのは僕の悪い癖だね。それで君の考えはどうなんだい?何か腑に落ちたような感じだったけど。」
「こいつは闇系統の魔法を使えるが水晶の反応を見る限りそれだけじゃなかった。そもそもこいつは私の目の前で色んな属性の魔法をぶっ放してたからな。」
思い返されるのはアイリスが放った数々の魔法。中には魔法同士を混ぜ合わせるといった驚きのものまであった。
「そんな奴が闇魔法オンリーなわけが無いだろ?アイリス、もう一回水晶に魔力を込めてみろ。」
アイリスは合われた通りに魔力を込めた。
「よく見てろ、こいつの色は最後は黒だ。でもその前に一瞬だが様々な色が浮かんでいるんだ。」
アイリスとギルドマスターは言われた通り水晶を注視する。
すると確かに赤、青、黄、茶、白、緑など、様々な色が一瞬ではあるが浮かび上がる。
そして最後それらが混ざり合い真っ黒になったのだった。
「これはもしかして……」
「あぁ。こいつは全属性持ちの魔法使いだよ。全ての色が混ざると黒色になる原理と同じだ。」
アイリスはいまいちピンとこない様子だが、ナタリアとギルドマスターは天を仰ぐ。
「そんな人物今まで聞いたこともないがな。」
「僕もだよ。エルフは長命だが見たことも聞いたこともない。はっきり言って異質だね。」
「しかし闇魔法が使えるのも事実……これはもしかしたら、この子の前世っていうのが大きく影響してるんじゃないかな?」
様々な憶測を立てたが全てに説得力のある理由が思い浮かばない。
そこでギルドマスターが着目したのは前世の記憶であった




