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魔王ゼノンの最期③

この場に先程までの穏やかなムードは一切ない。

ゼノンの魔剣とアーサーの聖剣が交わる度、両者の剣は共鳴するかのように甲高い金属音が鳴り、それと同時に衝撃波が巻き起こっている。




魔王VS勇者の第1ラウンドは、お互い剣によるノーガードの命のやり取りとなった。



アーサーが首筋目掛け剣を突き出す。それをゼノンは紙一重で躱す。

一筋の切り傷が生まれるが瞬く間に回復する。



魔族の中には自己治癒能力と呼ばれるスキルを持つ者がいる。

人によって効果はそれぞれだが、ゼノンのそれは他を凌駕していた。



致命傷と呼ばれるようなダメージも回復する。

そんな規格外の自己治癒能力を持つゼノンは【不死の魔王】という異名で呼ばれていた。



魔王ゼノンを倒す方法はただ一つ。



魔核と呼ばれる魔族にしかない第二の心臓を破壊するしかない。

この魔核は魔力を生成する臓器で人間にも備わっているのだが、魔力がないと消滅してしまう魔族は、ここを破壊されると塵となって消えてしまうのだ。



最大の弱点ながらゼノンにとっては唯一の弱点。しかし、ここさえケアしていれば問題ないので、戦闘に関してゼノンの辞書に様子見や引くといった、守りの戦術は載っていない。




アーサーが首筋を狙うならギリギリで避け、そのまま横に一閃薙ぎ払う。



正確に動脈を狙った一撃に冷や汗が飛び散る。




「っく!」




間一髪でそれを受け止めると一度後ろに下がり、勢いをつけて聖剣を振り下ろす。




「はぁっ!!」




「っらァ!!」




ゼノンは真正面からそれを受け止めると、また部屋中に衝撃波が巻き起こる。

先頭が始まる前に全ての物をアウラの空間魔法に避難させていたので、周りを一切気にすることなく戦いに専念できる。




何度か撃ち合いアーサーは一度ゼノンと距離を取った。




(ちょっ!さすがに強すぎない!?)




ラッシュをかけたせいで呼吸が乱れる。何度か深く呼吸をして脳内に酸素を行き渡らせながら、自身の思考をまとめる。




対するゼノンは息一つ乱さずアーサーを見つめていた。




世間では今代の勇者と魔王の力は五分と言われている。

しかし本人の感想は全く別だった。




アーサーは既に身体強化魔法を最大限施している。

魔法はまだ使ってないとはいえ、ほぼフルパワーで剣を打ち合っていた。



対するゼノンは一切魔法を使っていない。

素の身体能力だけでやり合っていたのだ。




(これはまずいなぁ……)




魔族は基本、人間よりスペックが高い。

それは身体能力もそうだが、魔族が得意とするのは魔法。




それはここ何百年、人がいくら研究しようと決して追いつくことができないレベルであった。



そして懸念点はもう一つ。



ゼノンはまだ魔剣の能力を使っていない。



能力自体は至ってシンプルで、魔力を込めると剣の切れ味と技の威力が上がるというものだ。



四天王の頃から前線で戦ってきた為、能力については認知されており対策もいくつか施されたが、誰も撃ち破ることは出来なかった。



対するアーサーの聖剣にも能力がある。

ゼノンの魔剣と似ているが、自身の魔力を込めると聖魔法を放つことが出来る。



現状、アーサーはその能力を使っていない。

否、正しく言えば使えない状況に陥っていた。



アーサーは今、全ての魔力を使い身体強化魔法を施している。

一瞬でも気を抜くと即命を落とす。そんなやり取りを繰り広げているのだ。



両者身体が温まってきたのか戦闘は激しさを増していく。

それに伴いアーサーの身体に傷が増えていく。



致命傷にはなっていないが、確実にスタミナも減っている。



対するゼノンはまだまだ本気ではないのか、少し汗をかくくらいで余裕の表情を浮かべている。



「…………。」




ゼノンは無言でアーサーの剣技を捌くが、気に入らない点が一つだけあった。



そして固く閉じていた口を開くと四天王に向けて言い放つ。




「お前達はいつまで見物をしているつもりだ?」




「「「「っは!?」」」」




ゼノンに言われ初めて気づく。

この戦闘が始まってから、一度も自分達が戦闘に参加していないという事実に。



これは決して恐れから動けていない訳ではなかった。



アーサーの剣技、ゼノンの受け、カウンター、その一挙手一投足に目を奪われてしまっていたのだった。





「言われなくてもここから全員参加だよ!!」



ユベルは自身の武器である大鎌を構えるとゼノンに突っ込む。



それが第2ラウンドのゴングとなり、戦闘はより一層の激しさを増す。



アウラは槍を、サイモンは杖を、ケンドリックはグローブを両手にはめる。



前衛3、後衛1のフォーメーションでゼノンを攻め立てる。




「アーサーは少し下がって!少しでも体力の温存を!!」




ユベルがアーサーと入れ替わるようにゼノンに大鎌を振りかざす。




「分かった!」




アーサーはそのまま後退する。

ユベルの大鎌を身体を斜めにすることで避けたゼノンは、そのまま魔剣を薙ぎ払う。




その一閃はユベルに届く直前、アウラが槍で受け止める。



攻撃の手が止まったことでその後ろから来ていたケンドリックが怒涛の連打で殴り掛かる。



この中でリーチが一番短いのは武器を持たないケンドリックだが、懐に潜り込めばその圧倒的手数で敵を圧倒してきた。




老将と呼ばれるケンドリックは、見た目とは違いこの四人の中で一番血の気が多く好戦的な性格であった。



懐に入ってきたことでゼノンの表情が少し焦る。

ケンドリックの攻撃を捌くことに重きを置くと、一撃の重いユベルとアウラの攻撃が飛んでくる。





この三人の動きが良い理由が、後方でサイモンが三人に支援魔法をかけているからだ。



殆どの魔族は攻撃魔法を得意とし、補助魔法を使うことができない。



だが、このサイモンは魔法の天才だった。

攻撃魔法だけならゼノンに勝てないが、補助魔法まで含めた全ての魔法を使えば、魔王ゼノンを超える逸材と呼ばれていた。



大鎌を振るうユベルもその自由奔放な性格が攻撃にも現れており、非常にトリッキーな動きをしてくる。



「ほらほらほらほらー!!」




ケンドリックに集中していると思いがけない攻撃がユベルから飛んでくる為、肝を冷やす場面が増えている。




そしてその四人をまとめるのが次期魔王アウラである。



戦況をしっかり見極め的確に指示を出す。

チャンスと見れば自身も攻撃に参加し、少しでも危ないと見るや防御に徹する。



他の三人が全力で戦えているのは、このアウラが上手くバランスを取っているからだった。



(こいつらこんなに強くなってたのか……)



感慨深いゼノンはふと昔のことを思い出す。



そもそも四人とも最初から強かった訳では無い。

なんなら結果がなかなか出ず、落ちこぼれのような扱いを受けていた。



そんな彼らを根気よく指導したのが、当時最年少で四天王に抜擢されたゼノンだった。



それぞれに武器の扱い、戦場での立ち回り、現場での指揮など全てを叩き込んだ。



必死に着いてきた四人は、いつの間にかゼノン率いる部隊の隊長格となり、その後四天王にまで登り詰めたのだ。



だからこそゼノンは嬉しかった。

あの四人が協力しながら自分を追い詰めようとしていたことに。



だが負けるつもりはサラサラなかった。




「お前達に贈る最後の授業だ。」




あえて全ての攻撃を受けることで部下の成長を感じ取ったゼノンは、ここで初めて魔力を練る。



魔王ゼノンの本気の戦いが始まった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




それにいち早く気づいたのはやはりアウラであった。




「っ!?まずい!全員退避だ!!」




その声を聞きユベルとケンドリックは距離を取ろうと後ろに飛ぶ。



サイモンは防御魔法を展開すべく再度魔力を練り直す。



術式を構築し防御魔法を展開しようとしたその瞬間、サイモンの身体から練り上げたはずの魔力が霧散して消えた。




「えっ?魔力が消え…た?」



あまりの突然の出来事にその場で止まってしまったサイモン。



気づいた時には目の前に魔王ゼノンの姿があった。



「馬鹿が、どんな状況に陥っても考えることを放棄するな。お前は昔からそこが弱点だった。常に考え動き続けろ。お前が居なくなればこのチームは一気に弱体化する。」




「かしこまりました……」




「だが見事な魔法だったぞ。」




「…ありがとうございます!」




褒められたサイモンの目には光るものがあった。



そんなサイモンの首筋に手刀を落とすと、サイモンは意識を手放しその場で倒れ込んだ。

ゼノンはサイモンが怪我をしないように受け止めると、少し離れた場所に身体を寝かせた。





魔王ゼノンが発動したのは『リライズ』と呼ばれる妨害魔法。



相手の魔力経路に自身の魔力を送ることで魔力の流れを乱す魔法で、サイモンの練り上げていた魔力を霧散させたのだった。



シンプルな魔法だが、不測の事態への対応が苦手なサイモンにとっては一番の攻撃となった。




補助魔法が無くなったことで戦況は一気に傾いた。



次にゼノンが標的にしたのはユベルであった。



ユベルは強い。だがその幼さがゆえ簡単な挑発にも引っかかる。

冷静さを欠いた状態でゼノンに勝てるはずがない。




大振りで鎌を振り回すが、かする気配もない。

小柄な体型で大鎌を振るうユベルの弱点は二つ。



一つは直情的なところ。このように挑発などに耐性があまりない。そこを突かれるとこのような展開になってしまうこと。



そしてもう一つがスタミナの低さであった。



「はぁ、はぁ、はぁ。」




何度も空振ったことで瞬く間にスタミナは削られ、動きがどんどん重くなっていく。



こうなったらゼノンの敵ではなくなる。




「お前はまず考えて行動すること。後、苦手かもしれんが体力強化のメニューはちゃんとやること。」




ゼノンはよくアウラからユベルのサボり癖を相談されていた。

戦闘のセンスだけで言えば魔王ゼノンと遜色ないものだった。それ故に訓練をサボるユベルの事で毎回頭を悩ませていた。



序列が上とは言え、ユベルは誰の言うことにも耳を貸さない性格だった。

いや、唯一ユベルが耳を傾けていたのが魔王ゼノンだった。



だからこそ最後にゼノンは伝える必要があったのだ。




「お前は強い。だが、サボればこんなもんだ。」




そう言われ悔しそうにするユベル。




「悔しいなら強くなれ。お前なら俺を超えることも造作ないだろう。ここだけの話しだが俺はユベルの事を誰よりも認めているつもりだ。」




俯いて話しを聞いていたユベルだが、認めているというワードに顔を上げる。



その瞳には涙を浮かべている。悔しさと嬉しさの混ざった複雑な涙であった。




「だが今日は俺の勝ちだ。サボらず精進しろよ?」




「ッはい!!」



勢いよく返事をするユベル。その瞳にもう迷いはなかった。



満足したゼノンはサイモンの時と同じように、ユベルの首元に手刀を落とし意識を刈り取った。



そのまま魔法でサイモンと同じ場所に運ぶと、次の相手ケンドリックと向き合う。




傍から見ればなぜ一人づつ戦うのか?と思うだろう。



これは魔王ゼノンから、教え子に送る最後の指導なのだ。それを皆が分かっていたからこそ、それぞれの時間を邪魔せず静かに見守っていたのだ。




「次は私の番ですな。」



左の掌に右の拳をたたきつけ気合いを入れ直すケンドリック。




「そんな律儀に一人ずつ来なくていいんだぞ?」




「いえいえ、魔王様との最後の一戦。そんな最高の時間を邪魔するわけにはいきませんよ。」




瞬間ゼノンはケンドリックの姿を見失う。




「私も思う存分楽しませてもらいますよ!」




懐に飛び込んだケンドリックは右の拳を突き上げる。




間一髪のところで避けると、体勢を整える為に一度後ろに下がろうとしたゼノンだが、そのままの勢いで突っ込んでくるケンドリックの連打に防戦一方となる。




(この戦闘狂が!一番の年長者が一番好戦的ってどういう事だよ!?)




突き、蹴り、裏拳、回し蹴り、掌底など様々な攻撃パターンの攻撃を仕掛けるケンドリック。




経験が豊富なことがよく分かる引き出しの多さだ。

様々なパターンで攻撃を続けるが、少しずつゼノンが対応し始める。




ケンドリックのスタミナがなくなってきた訳では無い。

攻撃が真面目すぎるのだ。



(パターンは読めた。ここから反撃だ!)




ゼノンは防御を捨て攻撃フェーズに移った。



魔剣を一度空間魔法の中にしまうと徒手格闘で相手をする。



ケンドリックと同じように豊富なパターンの攻撃を仕掛けながら、少しずつ追い詰めていく。




「っぐ!?」




徐々に被弾数が増えていくケンドリックの瞳には、焦りの色が映し出されている。



(なぜ当たらない?なぜここまで簡単に攻撃を受けている!?)




脳内の処理も追いつかないまま遂に片膝を着くケンドリック。




「分からないか?」



ゼノンの問いかけに無言のまま視線をぶつけるケンドリック。




「お前は素直すぎる。攻撃は豊富だがそのパターンは実に単調だ。フェイントをかけることもなければ、驚くような予想外の一撃もない。徒手格闘だけなら俺より強い筈だ。もっと卑怯になれケンドリック。」




ここまでどんな相手にも、自身の力を全てぶつけることに誇りを持っていたケンドリック。



しかし、今後それだけでは民を守ることはできない。卑怯というワードは悪いように聞こえるがそうとも限らない。



相手が卑怯な手を使ってきて負けた時どうする?

自分は正々堂々戦ったから負けても良い?



これからアウラを支える一番の実力者がそんな甘い考えでは困る。

だからこそゼノンはケンドリックに知っておいて欲しかった。

卑怯な戦術は己を助ける武器にもなるということを。



ゼノンは全ての攻撃に少しずつフェイントを交えながら当てていた。

少しのフェイントを入れるだけで思うように攻撃を当てられる。



ケンドリックは身をもって、勝つための戦い方を教えてもらっていた。




「いいなケンドリック、正々堂々が正義じゃない。どんな手を使っても、己の持てる全ての力を使って相手を倒す。そうすることでアウラは安心して魔王として動くことができる。」




「はい。」



身をもって体感したからこそ素直に言うことを聞くケンドリック。




「お前はこれからまた強くなる。アウラ、そしてほかの魔族たちのこと頼んだぞ!」




「ッはい!ありがとうございました!」




ケンドリックは決意新たに返事をする。

その表情を見て安心したゼノンは、ケンドリックの背後に回り込むと、静かに手刀を下ろした。



気を失ったケンドリックを魔法で同じ場所に運ぶと、四天王最後の一人アウラに向き合う。




「お前で最後だアウラ。」




「貴方を倒してこの戦いを終わらせます!」



アウラは槍を構え直すと右足を少し引き力を溜める。



ゼノンは魔剣を取り出し構える。

左足を少し引くことで攻撃、防御どちらにも移れるような体勢でアウラの出方を伺う。




合図なんてものはない。アウラが突きを放ったことが開戦の合図となった。




槍の基本攻撃は突きである。上段、中段、下段の突きや、何度も突き技を放つ連撃。



更に、なぎ祓いなどの斬撃を組み合わせながら戦う。

状況判断に長けているアウラはそれらを組み合わせながら、少しずつゼノンに傷をつけていく。




しかし、治癒能力のあるゼノンに対してダメージ自体はあまりなかった。




「…………。」




無言でアウラの攻撃を捌くゼノンだが、アウラに対して以前から思っていることがあった。



それはアウラにとって長所であり短所でもある部分だ。



アウラの長所は、状況判断能力の高さを活かして仲間を最大限に活躍させること。



どんな場面でもアウラの指揮下に入ると、その部隊は最大限の功績をあげられる。



部下からの信頼が最も厚い男だ。



しかし、それは裏を返すと我を突き通さないということ。

アウラの部隊の評判の良さは耳に入ってくるが、アウラ自身の活躍を耳にすることは少ない。



アウラは良くも悪くも他の者を輝かせる天才であった。



ゼノンはそれで良しとするアウラを残念に思っていた。



次期魔王に選ばれる程、本人の能力は高い。なのにそれを発揮しようとせず周りに手柄をあげさせる。



もっと自分を出して欲しかった。

この戦いでもそういう動きをずっとしていた。



今まではそれでよかったが今後は違う。

アウラは魔王となって皆を引っ張る立場になるのだ。



だからこそゼノンは決めていた。

今日でアウラの本性を全てさらけ出させてやると。




「勿体ないなアウラよ。お前の実力はそんなもんじゃないはずだ。俺に対して遠慮するとはな…………舐めるなよ小僧が。」




終始防御に徹し様子を見ていたゼノンが一気に攻め立てる。



初めて魔剣に魔力を注ぎその真価を発揮させる。



鋭くなる剣筋、重くなる斬撃。

一撃一撃が致命傷となる必殺の攻撃となった。



アウラは歯を食いしばりながらそれらを受け止める。

何度も受けることで腕が痺れ槍を持つ力が弱くなる。



何度目の攻防か、遂にアウラの槍は弾き飛ばされ地面の上に転がった。




「失望したぞアウラ……お前がこの程度の男だったとはな。どうやら俺の目は節穴だったようだ。」




ゼノンから発せられた失望の声。

興味が失せたように向けられた瞳は、その辺に転がる石ころを見ているようだった。




「ッ…………。」



たまらなく悔しかった。

尊敬する魔王ゼノンにそんな表情をさせてしまった自分に。

興味が失せて失望の眼差しを向けられた自分に。

全てを託そうとしてくれた自分自身がここまで弱いという事実に。




(私は何をしているのだ…魔王様との最後の戦いでここまで不甲斐ない姿を見せて。)




歯を食いしばりながら前を向くアウラ。




(最後だからこそ、安心して託されるような姿を見せないといけないじゃないか!)




落ちていた槍を拾い上げるともう一度、両手に力を込め構え直すアウラ。




(表情が変わったな。)



アウラの表情が戦う戦士の顔に変わったことを、内心では嬉しく思うゼノン。



アウラは残りの魔力を全て身体強化魔法に注ぐ。




「すいません魔王様。次で最後です……私の全てを貴方にぶつけます!!」




「来い!次期魔王アウラの全てを見せてみろ!!」




二人が部屋の中央でぶつかり合う。

ゼノンの重たい斬撃を受け流しながら連続の突き技を放つ。



ここまでアウラの連撃の最大手数は8発。



それはゼノンも知っており、その後にできる隙に最大限の攻撃を放つべく、一撃一撃を剣で受け流す。




(四、五、六、…七、八、ッ!?まだ止まらないだと!?)



それはゼノンにとって想定外の出来事だった。

最大手数の八撃目を終えてもアウラの勢いは止まらない。

それどころか勢いは増し攻撃力が上がっていく。




(最後の最後に俺の想像を遥かに超えるかアウラ!!)



止まらない連撃を魔剣で全て弾き返す。

その度に衝撃波と火花が飛び散り、二人の額からは汗が吹き出す。



連撃の数が二十を超えた頃、火花と同時に漆黒の欠片が数片宙を舞う。




(そろそろ限界か…)




ゼノンがそう思った瞬間アウラの攻撃の速度が少しずつ落ちてきた。




「はぁ、はぁ、くそっ!」




アウラの魔力が底をついたことで身体強化の魔法が解けたようだ。




「自分を卑下するなアウラよ。お前は最凶の魔王に本気を出させた唯一の魔族だ。」




その言葉を聞きアウラの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。




「今のお前になら安心して後を託せる。任せたぞ魔王アウラよ。」




「は、はい!!私の全てを捧げて魔王様の、いえ我々の悲願である人魔共存の道を…必ずや実現させて参ります!!」




アウラの表情は晴れていた。

そんな感動の場面に間延びした声が聞こえてくる。




「ちょっとー!私じゃなくて私達でしょ!!僕達のこと忘れないでよねー。」




視線を横に移すと意識を取り戻したユベル、ケンドリック、サイモンの姿があった。




四天王が横並びに立ちゼノンを見つめる。




「強くなったなお前達。アウラ、ユベル、ケンドリック、サイモン……今のお前達なら全てを託して逝ける。あとは任せたぞ!」




「「「「かしこまりました!魔王ゼノン様!!」」」」



決意を固めた四人に迷いはなかった。

そのまま戦いの舞台を降りると部屋の端に移動する。






これから始まるゼノンとアーサーの最後の戦いを見届けるために。




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