銀杏の絨毯(現代/雄星、凪)
これはまだ、四人一組を組んだばかりの頃の話。
「あ、雄星くんだ。」
「……お、おお。蓮池。よう……。」
秋になりかけの気温は眠るのに最適だ、と雄星は思っている。
ぽかぽかの陽気と、鮮やかな銀杏の葉。ひらりと舞い落ちた銀杏の絨毯なんて、夢がある。
出来れば授業をサボってでも惰眠を貪りたい。
ーーなんて……授業サボる勇気もねーけどなぁ……。
だからこうして休日にわざわざ外で寝たりしているのだが、今日は先客がいたらしい。
アイマスク越しにも分かるほど、眦を下げて笑っている凪に雄星は内心気まずさを感じていた。
最近、実技で組むようになった相手である凪。
雄星、司、残夏、凪の四人一組でなんとか単位を取ろうと必死になっているし、昼を一緒にとることで打ち解けてきたとは思っている。
思っている、が。
ーー……蓮池、苦手なんだよなぁ……。
いつもにこにこしていて考えている事が分からない。しかも邪視が怖い。
まだ残夏の方が、表情が動くから分かりやすいのに。
折角寝に来たのに、と息を吐き出して雄星は踵を返そうとした。
しかし。
「……?なにやってんの?」
「綺麗な銀杏の葉っぱを集めてるんだよ。」
ぴょこぴょこと跳んでは、散り落ちてくる銀杏の葉を掴む凪に、雄星の好奇心が恐怖を上回る。
首を傾げれば、凪はへにゃっと笑って手に持った数枚の銀杏を掲げて見せてくれた。
「ふーん。なんで葉っぱなんて集めてんの?」
「残夏くんにね、秋が来たよーって渡そうと思って。」
「へー。」
不思議な理由に、雄星の首が益々傾く。
秋が来たことくらい、残夏も分かっているだろうに。
「あのね、残夏くん最近すっごく悩んでるの。透くんに負けないって言ったのに実技上手くいかない〜って。でもそれでうんうんしてるからね、もう秋なんだよーって教えてあげるんだ。」
少し得意げな凪に、雄星はぱちりと瞬く。
残夏と白石の言い合いが勃発したのは丁度三日前のこと。
残夏がそこまで実技を気にしていることも、凪がそれを見ていたことも知らなかった。
残夏はあの時、雄星や司のためにも白石に怒ってくれたのに。
ーーそっか。
本当は、白石に負けるならそれでも良かった。
そうしたらこんな怖い世界から逃げられるし、司がやる気なのは困るけど、なんとか説得して、またのんびり出来たらいい、と。
それで全部終わりだって。
でも。
「……蓮池。」
「うん?」
不思議そうな凪に、雄星は笑いかける。
「ここ、もう少し降ると絨毯みたいになんだ。銀杏。」
「えー!そうなの?」
「そうそう。だからさ、俺にいい考えがあんだ。」
凪の耳元でそっと囁けば、凪の雰囲気がわくわくと浮き足立っていく。
「すごいよ雄星くん!残夏くん、絶対喜ぶね!」
「おー。だから内緒な。」
「うん!」
楽しげな様子は、怖さなど微塵も感じさせなかった。
雄星はそれに笑って、銀杏の木を見上げる。
実技が終わったら、またここにみんなで来よう。
その為に、負けないようにしないと。
「……頑張ろうなぁ。」
「うん!」
小さく呟いた言葉に返ってきたのは大声で。
驚いた雄星は、凪と顔を見合わせて笑った。
おまけ
残夏「わあ……。すごい。」
凪「ねー!銀杏の葉っぱいっぱい!」
司「ほう。なかなか粋だな!」
雄星「銀杏の絨毯みたいだろ。ここで寝るときもちーんだぞー。」
凪「雄星くんが、実技終わったらみんなでここで寝ようって言ってたんだよ。」
残夏「え、そうなの?……わ、ふかふかだ。」
司「ふふん!僕のおかげで実現したな!」
雄星「司のおかげ……?」
読んでいただきありがとうございます。
ハグレモノ短編第39話はいかがでしたか?
今回のお話は、本編の「夏の残りと秋の空」頃の、雄星と凪のお話です。
雄星と残夏、凪と司が気が合うのですが、この二人にするとどんな会話をするのかな、と思いながら書きました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。
よろしくお願いします!




