↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/44

銀杏の絨毯(現代/雄星、凪)

 これはまだ、四人一組を組んだばかりの頃の話。


「あ、雄星(ゆうせい)くんだ。」

「……お、おお。蓮池(はすいけ)。よう……。」


 秋になりかけの気温は眠るのに最適だ、と雄星は思っている。


 ぽかぽかの陽気と、鮮やかな銀杏(いちょう)の葉。ひらりと舞い落ちた銀杏の絨毯(じゅうたん)なんて、夢がある。


 出来れば授業をサボってでも惰眠を貪(むさぼ)りたい。


 ーーなんて……授業サボる勇気もねーけどなぁ……。


 だからこうして休日にわざわざ外で寝たりしているのだが、今日は先客がいたらしい。

 アイマスク越しにも分かるほど、眦(まなじり)を下げて笑っている凪(なぎ)に雄星は内心気まずさを感じていた。


 最近、実技で組むようになった相手である凪。


 雄星、司(つかさ)、残夏(ざんか)、凪の四人一組でなんとか単位を取ろうと必死になっているし、昼を一緒にとることで打ち解けてきたとは思っている。


 思っている、が。


 ーー……蓮池、苦手なんだよなぁ……。


 いつもにこにこしていて考えている事が分からない。しかも邪視が怖い。

 まだ残夏の方が、表情が動くから分かりやすいのに。


 折角寝に来たのに、と息を吐き出して雄星は踵(きびす)を返そうとした。


 しかし。


「……?なにやってんの?」

「綺麗な銀杏の葉っぱを集めてるんだよ。」


 ぴょこぴょこと跳んでは、散り落ちてくる銀杏の葉を掴む凪に、雄星の好奇心が恐怖を上回る。

 首を傾げれば、凪はへにゃっと笑って手に持った数枚の銀杏を掲(かか)げて見せてくれた。


「ふーん。なんで葉っぱなんて集めてんの?」

「残夏くんにね、秋が来たよーって渡そうと思って。」

「へー。」


 不思議な理由に、雄星の首が益々傾く。

 秋が来たことくらい、残夏も分かっているだろうに。


「あのね、残夏くん最近すっごく悩んでるの。透(とおる)くんに負けないって言ったのに実技上手くいかない〜って。でもそれでうんうんしてるからね、もう秋なんだよーって教えてあげるんだ。」


 少し得意げな凪に、雄星はぱちりと瞬く。

 残夏と白石(しらいし)の言い合いが勃発したのは丁度三日前のこと。


 残夏がそこまで実技を気にしていることも、凪がそれを見ていたことも知らなかった。


 残夏はあの時、雄星や司のためにも白石に怒ってくれたのに。


 ーーそっか。


 本当は、白石に負けるならそれでも良かった。

 そうしたらこんな怖い世界から逃げられるし、司がやる気なのは困るけど、なんとか説得して、またのんびり出来たらいい、と。


 それで全部終わりだって。


 でも。


「……蓮池。」

「うん?」


 不思議そうな凪に、雄星は笑いかける。


「ここ、もう少し降ると絨毯みたいになんだ。銀杏。」

「えー!そうなの?」

「そうそう。だからさ、俺にいい考えがあんだ。」


 凪の耳元でそっと囁けば、凪の雰囲気がわくわくと浮き足立っていく。


「すごいよ雄星くん!残夏くん、絶対喜ぶね!」

「おー。だから内緒な。」

「うん!」


 楽しげな様子は、怖さなど微塵も感じさせなかった。

 雄星はそれに笑って、銀杏の木を見上げる。


 実技が終わったら、またここにみんなで来よう。

 その為に、負けないようにしないと。


「……頑張ろうなぁ。」

「うん!」


 小さく呟いた言葉に返ってきたのは大声で。

 驚いた雄星は、凪と顔を見合わせて笑った。



おまけ

残夏「わあ……。すごい。」

凪「ねー!銀杏の葉っぱいっぱい!」

司「ほう。なかなか粋(いき)だな!」

雄星「銀杏の絨毯みたいだろ。ここで寝るときもちーんだぞー。」

凪「雄星くんが、実技終わったらみんなでここで寝ようって言ってたんだよ。」

残夏「え、そうなの?……わ、ふかふかだ。」

司「ふふん!僕のおかげで実現したな!」

雄星「司のおかげ……?」


読んでいただきありがとうございます。

ハグレモノ短編第39話はいかがでしたか?


今回のお話は、本編の「夏の残りと秋の空」頃の、雄星と凪のお話です。

雄星と残夏、凪と司が気が合うのですが、この二人にするとどんな会話をするのかな、と思いながら書きました。

楽しんでいただけたら嬉しいです。


次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。

よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。