夜更けの冷蔵庫(現代/清治、玲)
今日の任務は珍しく、外での術式サポートだった。
普段は書類仕事しかしていないからか、すっかり鈍った身体が重い。
清治は疲れに息を吐き出しながら14番隊の執務室へと戻った。
「おかえり。」
「ただいま。」
夜も更けた時間からか、執務室には隊長である玲しか残っていない。
穏やかに迎えてくれる玲に笑って、清治はほっと息を吐き出した。
「ふふ、お疲れだね。」
「身体鈍りすぎかも……。明日からちょっと鍛錬しようかな。」
「いいじゃん。残夏と彰良のに混ざってきたら?」
「それはちょっと……。」
意地悪そうな響きに苦笑を漏らす。
流石にあの二人についていける気がしない。でも本当に鍛練しないと。
こんなに疲れるなんて思ってなかった。
清治は息を吐き出す。
すると、玲が小さく笑みを浮かべた。
「清治。冷蔵庫見てみて。」
「え?」
玲の言葉に首を傾げる。
しかし玲はにこにこと表情を変えない。
なんだろう、と立ち上がり休憩室の冷蔵庫を開けると中には水羊羹が入っていた。
「水羊羹?」
「いいでしょ。ちょっとお茶しよう。」
「こんな時間に?あ、ちょっと待って。隊長にやらせるのは、」
「ふふ、二人きりなのに?」
揶揄うような笑顔に、うっと言葉を詰まらせる。
玲のこういうところは良くない。とはいえ動く元気がないのも確かだ。
清治はソファに座ってぼんやりと玲の後ろ姿を眺めた。
しなやかに動く手足と、華奢な背中。玲の方が疲れているだろうに、背筋がしっかり伸びている。
清治はあの背を任せてもらえるようにならないと。
「はい、出来たよ。」
はっと我に帰る。
どうやら、物思いに沈んでいたらしい。
ふるふると首を振って玲が持ってきたトレイを見ると、抹茶と皿に出された水羊羹が乗っていた。
水羊羹は上が透明で金魚が中で泳いでいる。
「わ、」
「綺麗でしょ?抹茶も伊勢のやつだから、デカフェだよ。」
どうぞ、と言われてそっと手を伸ばす。
まずは美しい金魚の水羊羹。上品な甘さが口の中で溶けた。
ついで口に含んだ抹茶はほろ苦く、じんわりとした温かさが身体に沁みていく。
「ありがとう……。」
「お前は頑張り屋だからね。」
「え?」
目を瞬けば、玲が小さく微笑んだ。普段よりも柔らかい笑顔だった。
「たまには、ご褒美。」
「……ご褒美。」
かちゃ、と茶器の音が響く。
静かな夜。
その言葉こそがなによりの褒美だと、玲はきっと知らない。
読んでいただきありがとうございます。
ハグレモノ短編第35話はいかがでしたか?
今回は清治と玲のお話でした。
この二人の、上司と部下でありながら友人同士、という関係性が好きです。
玲は同期の中でも清治には少し甘めですね。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。
よろしくお願いします!




