親密とは(高専時代/同期4人)
「彰良っ!」
楽は目の前でハグレモノを切り捨てた後、倒れた彰良へと駆け寄った。
彰良は苦しそうに顔を歪めて荒い息を吐き出している。その腕には、竜の鱗のようなものが現れていた。
今回のハグレモノは、いつもの下位とは違う中位になりかけの強い個体だった。
いつもの四人で、外部講習という名の任務に来ていたのだが、件のハグレモノが見つからず二対二に分かれて調査していたところを襲われたのだ。
彰良も楽も近接向け。
相手の攻撃を受けながらの反撃は苦しく、連携も上手くいかない。
通信機はとっくの前に戦闘の激しさで壊れていた。
このままでは死んでしまう、という段になって彰良が自身の契約している龍神を呼び出したのだ。
しかしその力はまだ高専生である彰良には過ぎた力だったらしい。
神力を受けて、彰良はハグレモノを切り捨てた後、倒れてしまった。
彰良の瞳はいつもの深い青から龍神の力を帯びた金色に変化している。
ーーこのままじゃ……!
神力が彰良の霊力を食い尽くし、龍へと身体が少しずつ変化して死んでしまう。
とはいえ連絡手段がない。
楽は焦燥を募らせながら、周りを見回した。
その時。
「どうしたの?焦ってるね。」
ふふ、と柔らかい笑い声と共に玲が姿を現した。
対して玲の背後にいた清治は、彰良の様子を見て驚いたように目を見開く。
清治は駆け寄ってくると、彰良の状態に眉を下げた。
「彰良……!酷い……早く組織の病院に運ばないと……!」
「ボクが運ぶよ!彰良、もう少し我慢してーー、」
「ダメだよ。清治、楽。それじゃあ間に合わない。」
焦っている楽と清治を置いて、玲はのんびりとした足取りで近づいてくると、楽しげに彰良を見下ろした。
繁々と眺め、嘲笑のように口端を歪める。
「カッコいいじゃん、彰良。似合うよ、龍の鱗。」
「……っ、うる、せえ……。」
玲の軽口に、彰良が苛立ちを口にした。しかし顔は苦しげだ。
楽は珍しく玲に苛立ちながら、玲と彰良の間に割って入る。
「玲!ふざけてる場合じゃないだろ!!」
「落ち着きなよ、楽。」
「僕も楽に賛成だよ、玲。軽率だ。」
楽の大声と清治の冷たい声も意に介さず、玲はもう一度彰良に近づくとその横に膝をついた。
そして自分の懐からナイフを取り出すと、徐ろに自分の腕を深く切り付ける。
そこから滴る赤い血に、楽は怒りも忘れて目を丸くした。清治も動きを止めている。
玲は自身の血を口に含むと、彰良の胸ぐらを掴んで引き起こした。
「え……。」
楽はその光景に、一瞬頭の中が空っぽになる。
清治が隣で顔を赤く染めた。
それもそのはず、玲は彰良の唇に自分の唇をくっ付けると、含んでいた血を彰良に飲ませたのだ。
それは美しい光景であったが、同時に高専生である楽たちには刺激の強い光景だった。
どの位経ったのだろう、玲が口を離すより先に、彰良の腕が玲を払う。
玲は難なく彰良の腕を躱すと、立ち上がり自分の口を舐めた。赤い血が紅のようだ。
「……っ、てめぇ……!!」
「ふふ、動けるようになったじゃん。よかったね、彰良。」
その言葉で、彰良の身体に現れていた鱗が消えているのに気がつく。
彰良の瞳は黄金からいつもの深い青色に戻っていた。
「ふざけんな!こんなやり方……!」
「お前が未熟で龍神の力を使いこなせてないのが悪い。」
「っ、……!」
彰良が悔しそうに顔を顰めるのと、楽が我に帰るのは同じタイミングだった。
「な、な、なな何してんの、玲!?」
「別に大したことじゃないよ。彰良の身体で神力が強まってたから、呪いで穢れてる俺の霊力を流し込んだんだ。血液が一番簡単に霊力を渡せるからね。」
にっこりと笑う玲に、彰良が盛大な舌打ちをこぼす。楽はその様子を呆然としながら見守っていた。
玲の言うことは分かるが、実行できるかどうかは微妙だ。
彰良の言う通り、あんなやり方、普通はやらない。
玲は話は終わったとばかりに、塵になりかけているハグレモノの側へと歩いて行く。
彰良はもう動けるのか、その後を追って玲の腕を掴んだ。どうやら気に入らないのは口移しではなく、玲がナイフで自分の腕を傷つけたことらしい。
軽い言い合いが始まった二人をよそに、楽と同様、呆気に取られている清治と目を合わせて楽はそっと呟いた。
「……あいつら、ちょっと親密すぎない?」
「……親密って言葉で済ませていいのかな……。」
清治の疑問は、この先ずっと楽の記憶に残ることになった。
後日
楽「彰良。恋愛相談ならボク、乗るよ?」
彰良「は?急になんだよ気持ち悪りい。」
読んでいただきありがとうございます。
ハグレモノ短編第34話はいかがでしたか?
前回は幼少期だったので、今回は高専時代の四人をお届けしました。
玲の皮肉がとても好きです。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。
よろしくお願いします!




