プラネタリウム(幼少期/彰良、玲)
「玲!早く!」
「……転ぶよ、彰良。」
夏祭りの夜。
提灯に照らされ賑わう三島神社で、彰良は玲の手を引いた。
しじら織の甚平は、玲と揃いで涼しい。対して玲は上から羽織を重ねている。
「玲、暑くねーの?」
「うん。……それより、前。」
「わ、ご、ごめんなさい!」
ねじり鉢巻を巻いた大男にぶつかり、彰良は尻餅をついた。
咄嗟に謝れば、豪快に頭を撫でられる。どうやら許されたらしい。
彰良はほっと息を吐き出すと、離れてしまった玲の手を探す。
玲は無表情のまま、呆れたような雰囲気で彰良に手を差し出していた。
「……だから危ないって言ったのに。」
「だって楽しみだったんだよ。」
「落ち着いて。」
玲の手に掴まり、彰良は立ち上がる。
玲は相変わらずの無表情だが、彰良の身体を軽く叩いて土埃を落としてくれた。
ぎゅっと繋いだ手に、彰良の気分も上がる。
「じゃあさ、何食べたい?俺、りんご飴と、わたがしと……イカ焼き!」
「……そんなに食べるの?」
祭りなど初めてだと言う玲を連れて、彰良は色とりどりの屋台を巡った。
たこ焼きを二人で分けて、イカ焼き、型抜き、りんご飴。
玲はわたがしを気に入ったらしく、珍しく嬉しそうに目を細めていた。
ヨーヨー釣りや、輪投げも遊び、そろそろ遊び尽くしたと帰ろうとした時。
彰良は射的の景品に目を止めた。
ーープラネタリウム……。
星空を映す投影機。
簡単に部屋が星空へと変わるらしい。
嬉しそうな子供の絵が描かれ、きらきらと輝いている。
ーーあれがあったら、玲喜ぶかも。
玲は星が好きだ。
星の本をよく読んでいるし、たまに屋根に上がって星空を眺めている。
けれど熱を出して外に出られないことも多い。
そんな時、部屋が星空になればもっと早く元気になるかも。
そうしたら、もっと沢山一緒に遊べるはず。
ーーよし!
彰良は意気揚々と射的へと向かう。狙うは投影機。
彰良の身長では机に届かないから台に乗り、最後のお小遣いを店番に渡した。
弾は五発。絶対に取ってみせる。
五分後。
彰良は肩を落とし、帰路へと着いていた。
射的は難しく、そもそも当てるのが困難だった。
折角当たった一発も、箱が重すぎてぴくりとも動かない。
あんなの詐欺だ。
「……取れないように出来てるんだよ。」
「でも……俺がもっと上手かったら……。」
「そんなに欲しかったの?」
繋いだ手を、玲がぎゅっと握る。
彰良の顔を覗き込み、こてんと首を倒した。
「作れるよ。」
「え?」
「プラネタリウム、作れるよ。」
玲は彰良の手を引いて連れて帰ると、段ボールと青や赤、黄色のセロハンを用意する。
「彰良。段ボールに、好きな星座を書いて。そこに穴を開けるから。」
「星座?」
「なんでもいいよ。適当で。」
二人で並び、段ボールに点を打っていく。
玲は本にある通りの星座を。彰良はよく分からないので、花や猫の絵を描いた。
描き終わったら、彰良の父親に穴を開けてもらい、今度はセロハンを裏に貼っていく。
父親は面白いことをしているな、と彰良たちの頭を撫でて笑っていた。
最後に玲は、器用に段ボールで十二面体を作り、底だけ丸くカッターで切り抜いた。
「……出来た。彰良、ランプ。」
「う、うん。」
出来上がったばかりの箱を、そっとランプの上に重ねる。
途端、部屋には色とりどりの星が散った。
「わ、」
彰良の喉から歓声が漏れる。
玲が描いた星座に、彰良が描いた落書き。
普通の星空とは違って面白い。
「……お花。」
「あ、これ見たことある。オリオン座?」
二人で指差し、天井の星を見上げた。
手を繋いで。
「すげーよ!お前やっぱり頭いいんだな。これでいつでも星見れるぞ!」
「……彰良、嬉しい?」
「当たり前だろ!」
「……そっか。」
玲が星を見上げる。
横顔は、うっすらと微笑みが浮かんでいた。
繋いだ手が、暖かくて。
彰良は自分の頬が熱くなる感覚に、首を傾げたのだった。
おまけ
玲「ちっちゃい頃、プラネタリウム作ったよね。あれ、熱出るたびにお前が部屋に持ってきてた。」
彰良「……あれ、まだあるぞ。」
玲「え、ほんと?……ふふ、じゃあ久しぶりにつけようよ。夜。」
彰良「ああ、いいよ。」
読んでいただきありがとうございます。
ハグレモノ短編第33話はいかがでしたでしょうか?
本編の方で、彰良がメインなので今回は彰良と玲の幼少期のお話にしました。
玲は今よりだいぶ大人しい子だったみたいです。
楽しんでいただけたら嬉しいです!
暑過ぎますね。
自分はクーラーを消すタイミングが分からないです。
皆様も熱中症にお気をつけください。
次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。
よろしくお願いします!




