フルーツ飴(現代/残夏、凪、清治、玲)
「暑い……。」
夏休み。
窓の外からの熱気だけで溶けることが出来る気温。
残夏は14番隊の執務室で、凪と共に項垂れていた。
なんせ寮のクーラーが壊れたのだ。
学生たちはこぞって仮配属の部隊の執務室で涼を取っている。
数時間で直るらしいが、その数時間が耐えられない。
逃げるように14番隊に転がり込んだはいいものの、誰もいなかった。
「暑い……。」
もうこの言葉しか出てこない。
別に灼熱というわけではない。クーラーは効いていて、適温ではある。
しかし玲が寒がりのせいか一定の温度に設定され、残夏たちには物足りない。
もう少しキンキンに冷えたいのだ。
「リモコン、梓くんのせいで清治くんの管理になっちゃったもんね……。」
凪が力なく呟く。
そうその通り。
あまりにも梓が設定温度を下げるため、怒った清治が鍵付きの引き出しにリモコンをしまってしまったのだ。
ああ、でももう少し温度を低く設定して欲しい。
そんな風にぐだぐだと溶けていると、執務室のドアが開く音が響いた。
「あ、やっぱりいた。清治〜二人溶けてる。」
「ごめんね!少し出ちゃってたんだ。」
ひょっこり顔を覗かせる玲の後ろから、ぱたぱたと申し訳なさそうな清治が駆けてくる。
清治は残夏たちの様子に慌てて引き出しの鍵を開けると、温度を下げた。
「ごめんね。皆んな出てるから、組織の推奨温度にしてたんだ。」
「推奨温度?」
「28度。世も末だよね。」
残夏の疑問に、清治に代わって玲がくすくすと応える。流石に玲も、28度はごめんらしい。
「玲ちゃん寒くない?」
「大丈夫。ありがとう。」
抱きつく元気もない凪の髪をかき混ぜ、ついでに残夏の頭も撫でて、玲は思いついたようにぽんと手を打った。
「そうだ。二人とも、いいものあるよ。清治、出していい?」
「いいよ。僕たちも食べよ。」
いいものとはなんだろう。
首を傾げる残夏たちを手招いて、玲と清治は顔を見合わせて笑った。
「わああー!」
凪の感嘆の声が上がる。
残夏も声こそ上げないまでも、目の前のキラキラ輝く宝石に目を瞬かせた。
「凍らせた……果物?ですか?」
「そうだよ。マスカットと苺とさくらんぼ。この間もらったんだ。」
玲の言葉に、繁々と宝石のように霜を纏った果物たちを見つめる。
しゃりしゃりした食感を思い描いて、勝手に喉が鳴る。
玲はそんな果物に串を刺すと、横に置いたコップの水にそっと浸らせた。
「わ……!」
残夏の口から声が漏れる。
霜が落ちて、綺麗な氷を纏った苺が現れた。
はい、と差し出されて手に取る。
「氷のフルーツ飴。この前やってるの見てさ。やりたくて清治と作ってたんだ。」
「凪もはい。冷たいから、食べ過ぎちゃダメだよ。」
清治からマスカットを受け取った凪と顔を見合わせ、ゆっくり口に含む。
薄い氷のぱりぱりとした食感と、少し溶けた苺のしゃりしゃりが混ざり、果物特有の甘さが熱い体を冷やしていく。
「〜〜〜!」
天国のような味わいに、言葉も出ずに悶えていると、玲がふわりと微笑んだ。
「良かった。果物、余ってるから持って帰っていいよ。友達とやりな。」
またくしゃりとかき混ぜられる髪。
残夏は幸せを噛み締めながら甘い余韻と共に飲み込んだ。
おまけ
清治「美味しい。氷なんてって思ってたんだけど、いいねこれ。」
玲「ふふ、甘くて水分補給もできていいよね。」
清治「またやろうかな。今度はメロン?桃?蜜柑とか……。」
玲「あーこれ長くなるやつ。」
読んでいただきありがとうございます。
ハグレモノ短編第32話はいかがでしたでしょうか?
毎日暑いですね。
今年は冷夏らしいですが、30℃超えると溶けそうです。
今回はそんな夏の一幕を切り取りました。
最近流行りのフルーツ飴、美味しそうなので残夏たちに食べてもらいました。
楽しんでいただけたら嬉しいです(*´꒳`*)
次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。
よろしくお願いします!




