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世話の焼ける幼馴染(高専時代/同期4人)

 野外訓練と名を打って、学生にハグレモノを討伐させる、なんて気が狂っていると思う。


 彰良(あきら)は町外れの薄暗い廃墟の壁にもたれながら、溜息を吐き出していた。


 今日の討伐任務は、ハグレモノが集団で根城にしている廃墟内の掃討。

 一匹ずつなら大した労力ではないが、多数となると相手が低級とはいえ骨を折る。


 広い敷地に、二手に分かれること数十分。

 彰良と(れい)のペアの前には、ハグレモノの集団が現れた。


 処理に追われること、更に数分。


 玲の正確無比(むひ)な射撃のおかげで、大した怪我もなく任務は完了した。


「おい、そろそろ行くぞ。清治(きよはる)(らく)と合流しないと。」


「うん。」


 戦闘終わり、ぼんやりと(たたず)む玲に声をかける。

 存外(ぞんがい)に返事は明瞭(めいりょう)で、玲はすぐにこちらを向いた。


 そのまま駆けてこようとしてーー、


「あ、」


「え?」


 玲は、パタリと床に倒れ伏した。


 どくん、と大きく心臓が跳ねた。凍りつくように、胸が冷たくなる。

 

 もしかして怪我をしていたのか。

 それとも毒でも受けたのか。


 嫌な想像に、心臓の音が(うるさ)くて吐きそうだ。


「玲!!」


 彰良は焦りを隠すことなく、玲のもとに駆け寄る。


 しかし。


 玲は倒れたまま、のんびりと息を吐き出した。


「……あー、ヤバい貧血……。」


「は?」


 困ったように玲が眉を下げる。

 彰良は隣にしゃがみ込むと、首を傾げた。


「貧血って……お前、体調悪いの隠してたのか?」


「違う違う。うーん、心当たりはあるんだけど……怒らない?」


「いや場合によっては怒るだろ……。」


 しっかりとした受け答えに、緊急性はないのかと彰良は安堵する。

 とはいえ、玲の言葉には嫌な予感しかない。


 彰良が黙ったまま続きを(うなが)すと、玲は少し考えた後、あっけらかんと笑った。


「いや〜昨日の朝から何も食べてなくてさ。」


「……は?」


「忘れてたんだよね。ごめん。怒んないで、彰良。」


 咄嗟(とっさ)に低い声が出た彰良に、玲は真剣な表情で謝ってくる。


 しかし、彰良は理解が追いつかない。


 食事を忘れる?

 倒れるまで気づかない?


 こいつは、


「……っんの、馬鹿かお前は!!!」


 腹の底から響いた大声に、玲は肩を(すく)めると慌てて口を開いた。


「ごめんごめん……!怒らないでマジで頭に響く……気持ち悪くなってきた……。」


「あほか!早く帰るぞ!」


 彰良は動けない玲を(たわら)のように片手で担ぐ。

 軽すぎだ。どこに内蔵が入っているのやら。


 ーー早く帰って飯……、


 しかし。


 彰良の思考が終わるよりも先に、ゆらりと影が揺らめいた。

 顔を向けた、廃墟の奥。

 残党がわらわらと溢れてくる。


 彰良は、自分の顔から血の気が引いていくのに息を呑んだ。


「あー……置いてく?彰良。」


「バカ!!お前ちょっと黙ってろ!!」


 軽口もそこそこに、彰良は全力で廃墟の入口へと駆け出す。

 背後からは、瓦礫を押し除ける無数の足音と、乾いた発砲音が響いていた。


「……うう、目が回って当たらない……。いっそ目を(つむ)るか……。」


「なにもしなくていいから、じっとしてろ!!」 


 走って、走って、走って。


 ようやく見えた入口では、楽と清治が待っていた。

 こちらに手を振っている。


「彰良!こっちこっち!」


「玲、怪我したの!?」


 楽が呼び、清治が玲の様子に顔を青ざめさせる。


「このバカ貧血だ!!!」


 余裕のない彰良は、ひと言返すと、全力で入り口を抜けた。



 その後、楽と清治の援護、そして玲の目を瞑ったままの精密射撃により、ハグレモノは逃走中に一掃された。


 帰宅した彰良は、玲の軽さと軽薄さに頭を抱えることになったのだった。



おまけ


玲「彰良、怒ってる?……もっとご飯食べろって言わないの?」


彰良「食べれないもん無理してもヤバいだろ。でも忘れないように今度から一緒に飯食うぞ。」


玲「うん。」


読んでいただきありがとうございます。

ハグレモノ番外編第25話はいかがでしたでしょうか?


久しぶりの投稿です。

疾走感がある短編にしました。

高専時代からの玲のポンコツぶりを楽しんでいただけたら嬉しいです!


次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。

よろしくお願いします!

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