表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/24

午睡(現代/久遠、玲)

 まろい日差しが窓を通り抜ける。


 穏やかな午後。

 何度見ても新鮮に思えるのは、己が夢の世界にどっぷりと(ひた)っているからだろう。


 ーーこんなに起きていられるのも久しぶりだ。


 久遠(くおん)に選ばれて、どれ程の時間が経ったのだろうか。

 夢を揺蕩(たゆた)う時間は日毎に増していく。


 きっともう、そう時間はない。


「ここは庭が美しいですね。」


 ふと物思いに沈みそうだった耳に、涼やかな声が響いた。

 窓際の光を浴びて、まるで神のように美しい青年。

 久遠のただ一人の友人である、東條(とうじょう)の弟弟子。

 

 亜月(あづき)(れい)は光がよく似合う。


「そうだね。綺麗に手入れをしているから。」


 (はな)から予言など聞く気のない玲に笑って、こちらへと手招いた。


 相変わらず美しい瞳は、この世のどんな宝石よりも尊く見える。

 それに目を細めて、久遠は久方(ひさかた)ぶりの雑談に喉を震わせた。


残夏(ざんか)はいい子だったよ。」


「そうでしょうとも。あの子は良い子ですよ。」


 我が子を自慢するかのような声音に、くつくつと笑い声が漏れる。

 玲は玲なりに、残夏を大事にしているのだ。自分が東條や大人たちにされてきたように。


 ああ、もう。


 ーー心残りは本当にないなぁ……。


 幸せだった。

 宝物のような人生だった。

 短くとも、大切な人々に出会うことができた。


 だからこそ、これだけは。

 これだけは、伝えておかないと。


「……残夏はお前が探していた子だ。だからこそ、忘れないように。あの子の三つの選択を、お前はただ一回だけ変えることができる。」


「ほんとその予言、嫌ですね。どんなに避けても結局は当たる。……分かっていますよ。」


 嫌そうな顔にまた笑いが溢れた。


 優しい子。

 決まったことだと予言を遠ざけ、無意味と知りながら、予言に(あらが)う意思を持つ。


 優しくて強い子だ。

 だからこそ放って置けない。


「玲。だけどそれをしたらお前はーー、」


「いいです。それ以上は聞いても意味がないので。」


「……そう。」


 だけどやっぱり玲は受け取らないから。


 久遠は笑って、そしてそっと息を吐き出した。


「玲。この世は絶望も希望も等しく、残酷でありながら美しい。私はずっと見てきたから。」


 過去も未来も現在も。

 すべてが久遠にとっては輝かしい。


 どれだけ悲しみを含んでいても。



 まろい日差しが窓を通り抜ける。


 愛しい世界。

 少しずつ霞んでいく、現実。


 夢がまた久遠を呼ぶ。

 ああ、もう少しだけここに居たかったのに。


「……まだ、いれますよ。大丈夫。だから今はお休みください。」


 子守唄のような心地の良い声に、久遠は夢へと踏み出した。

 

 大丈夫。もう一度戻って来れる。


 だからーー。


 友人に会うのは、まだもう少し先になりそうだ。


読んでいただきありがとうございます。

ハグレモノ番外編第24話はいかがでしたでしょうか?


本編エピソード5「狭間の逢瀬」で、予言を受けた残夏の裏側のお話になります。

楽しんでいただけたら嬉しいです。


本編ですが、次のエピソード14でひとつ大きな転換点となります。

そのため、エピソード14、エピソード15が終わるまではこの短編はお休みして、本編を週二回お届けする予定です。


もし本編を読んだ事がない方がいらっしゃいましたら、是非この機会に目を通していただけると嬉しいです。


次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。

よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ