女装コンテスト(高専時代/同期4人)
「っんで俺が参加するんだよっ!!!!」
高専の文化祭の特設イベント。
そのひとつである、女装コンテストの控え室で怒号が響き渡った。
しかしそんなものに怯む人間は、ここにはいない。
怒りすぎて肩で息をする彰良の、刺し殺すような視線にも負けず、真剣な表情で楽は眉を寄せた。
「ほらほら動かない!あとちょっとで完成するんだからさ!ボクのメイクが彰良のせいで失敗したら許さないから。」
「だからなんで俺なんだよ!?」
楽の怪力に抑えつけられながら、なおも彰良が叫ぶ。
そのあまりにも悲壮な様子に、清治は苦笑を漏らした。
「僕も楽も実行委員だからね。あと玲は……、」
「俺が参加しても優勝するだけじゃん。面白みがないでしょ?」
「あはは……。」
確かにその通りだが、そこまでハッキリ言われると返答に困る。
それに彰良は、その返答では納得しない。
「お前が出てサクッと優勝してこいよ!!」
「いいじゃん彰子ちゃん。可愛いよ?」
「ふざけ、」
「彰良!動かない!!」
楽の厳しい声に、彰良は喉の奥から呻き声をあげたのだった。
どうしてこうなったのかというと、女装コンテストとMr.コンテストに急遽空きが出来て、困っていた実行委員に声を掛けられたからだ。
声を掛けられた理由は、同じく実行委員の楽と清治がいたから。
そこで文化祭に積極的に参加していない、玲と彰良を代役として選んだのだが。
玲の『俺が女装で彰良がMr.だと意外性なくない?』という、自分が女装を逃れるための発言に、楽やその他の実行委員がノってしまったのが事の次第である。
彰良はずっと苛々しているし、楽はいつもの明るさが形を潜めて眉を寄せているし、玲はずっと肩を小刻みに震わせている。
明らかにこの状況を楽しんで笑い出したいのを我慢しているのだ。
どう転んでも地獄のような雰囲気の中、ついに彰良の化粧が終わった。
「よーし!可愛い!いいじゃん彰良〜!流石ボク!」
「へえ……可愛いね、彰子ちゃん。背も高くてモデルみたいだよ?」
「……うざ。」
やり遂げた楽の満足そうな表情と、玲の感心したような態度。そして最底辺に落ちた機嫌の彰良。
三竦みの状態で、清治は誰にもつかずに状況を見守る。
もちろん本当は彰良側についてあげたいのだが、楽や玲の言う通り、精悍な顔つきがキツめの美人に成り代わっていて案外悪くないのだ。
「まあまあ。優勝したら賞金も出るし……思い出だよ、彰良。」
「写真撮ったら殺すからな。」
清治の応援に冷たい声で応じて、しかし観念したのか彰良は舌打ちを溢しながら試着室へと入っていった。
あとは彰良の瞳に合わせた、濃い青色のマーメイドドレスを着れば完成だ。
「写真は撮るよね〜。」
「むしろなんであれで撮られないって思ってるんだろうね?」
談笑し合う楽と玲に溜息を吐き出しつつ、清治が少しばかりの好奇心に思いを馳せていれば、試着室のカーテンが開かれた。
そこから現れた彰良の姿にーー、
「ちょ、なんで筋肉ゴリラになってんの!!?」
「あはははは!!」
楽の悲鳴と、玲の爆笑が響いた。
それもそのはず、顔は完璧な彰良だったが、筋肉質な身体つきのせいで、あからさまにドレスがパツパツで似合っていなかったからだ。
というか、下手に顔が良いからギャップで余計に笑いを誘う。
清治も咄嗟に口を抑えて笑いたいのを我慢していると、表情を消した彰良が仁王立ちで腕を組んだ。
「どうした?笑えよ。」
その言葉に、今度こそ清治は吹き出してしまったのだった。
その後、彰良は特別賞をもらい、玲は眼鏡を外してMr.コンテストに匿名で参加し、準優勝していた。
これもまた、青春の1ページである。
(ふふ、あはは……っ、げほ、あははは!あ、彰子ちゃん!俺と結婚しよう?そんで毎日笑わせて?)
(そのまま笑い死ね……!!)
読んでいただきありがとうございます。
ハグレモノ番外編第二十一話はいかがでしたでしょうか?
今回は本編のアルバムに出ていた、青春の1ページからの切り抜きでした。
楽と玲が結託すると、余計なことにしかならないので清治と彰良は苦労していたようです。
皆様の青春もいかがでしょうか。
思い出しながら、楽しんでいただけると嬉しいです。
次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。
よろしくお願いします!




