⑦格上との戦い方は煽るのが良いですよ(笑)
無謀企画実行中!
《冒険者ギルド・ロビー》
刻は夜。トラビスは一日の仕事を終え、今すぐにでも酒場で冷えたエールを喉に流し込みたい衝動と戦っていた。
クランマスターからの厳命により、このギルドのロビーで、あのガキを待たねばならない。
-ったく、あのカースとグーズの馬鹿どもめ。勝手な真似をしやがって。
心の中で、勝手な行動をしてクランの看板を汚した二人の若者を呪いながら、トラビスは不機嫌にロビーを見渡す。受付で教わった「若い少年」という特徴を頼りに、ようやく現れたそれらしき人物を見つけ、トラビスは猛然と歩み寄った。
「……おい、小僧。貴様がスローか?」
ようやく見つけた安堵と、8時間の待ち時間に対する怒りが混ざり合い、トラビスの声はひどく荒々しいものになった。
「あ、はい。そうですけど……何か御用ですか?」
スローが不思議そうに振り返る。その無防備な顔を見た瞬間、トラビスは確信した。こいつが、俺をこんな目に遭わせた元凶だ。
「俺たちが悪かった。これでいいんだろ」
トラビスは、これで自分の役目は終わりだとばかりに、さっさと立ち去ろうとした。しかし、スローはきょとんとした顔で首をかしげた。
「……えっと、どちら様でしょうか?」
「はぁ!?」
トラビスの頭に、プツリと何かが切れる音がした。
8時間、酒も断ち、屈辱的な謝罪のために椅子に縛り付けられていた。その相手に、謝罪の最中に「どちら様?」と聞かれたのだ。
「……俺だよ! 朝、ロビーでお前と揉め事になったカースとグーズの担当者だよ!」
「ああ! あの時の!……すみません、忙しくてあの2人の事はすっかり忘れていました(笑)」
スローは屈託のない笑顔でそう言った。
それが、トラビスにとって何よりも許しがたい侮辱だった。
8時間もの間、謝罪のため待っていたのに忘れるほど些細なことだと!?理性が崩壊する。
「忘れた……だと? 俺がこのクランの看板を背負って、8時間もこの屈辱を耐えて待っていたというのに……!」
「8時間もですか? それは……そんなに暇だったんですか?」
トラビスの全身から、どす黒い殺気が噴き出す。
「ふざけるなッ!! 俺を、そこまで馬鹿にするかッ!」
周囲の冒険者たちが「あーあ、トラビスがまた狂ったぞ」と足を止める。
「てめぇ...! その生意気な態度、実力で分からせてやる。ギルドの『訓練場』に来い。負けた方が、この街から消える。……それでいいな!」
スローは小さくため息をつく。
せっかく屋台のレシピを考えようと思っていたのに、と。
「消える、ですか。……面倒ですが、断るとずっと絡まれそうですね。分かりました、その決闘受けます。」
この事は夜にも関わらず一気に広まった。
「金儲けの匂いがするのう」(商業ギルド長)
「あのバカ、謝罪するのがどうして決闘になるんだよ!?」(ドムドム)
「われの【黄金の草】に手を出すとは!」(アルデンテ)
「想像よりマヌケがいたな、スローくんに勝てるはずないのに(笑)」(トレント)
★
《訓練所・控室、スロー視点》
ボクとしては、サックっと終わらせて身体を休めたいのだけど、どこからともなく商業ギルドの人間が現れて賭けを仕切り始めた。
「知らない間に、大事になっているね。スローくん自身はあるのかい?」
微塵も心配する様子も無いトレントさんが現れた。
「経験はありそうですけど、師匠より強いことはないですよ、だから大丈夫です。」
「それなら安心だね!」
「トレ坊、自分の所の新人が潰されそうなのに呑気だね」
薬師ギルド長のアルデンテさんも現れ、トレントさんが耳打ちする。
「オッズそんなあるのかい!?」
「楽して儲けられ、商業ギルドに一泡吹かせるチャンスですよ!」
「イイね〜その話乗るよ(笑)スロー坊われの為に勝つんだよ」
「スローくんは試合に集中してね!あとのゴタゴタは私が治めるからね!」
何がなんだか分からないうちに2人は控室から去っていった。
「スローくんは新人だし無理することないんだからね!もし、ケガしたら治療するからね!」
美人秘書のマカさんは優しいな〜
「ケガしないように頑張るので応援して下さいね」
マカさんが退室すると頭の中で勝つ算段を考え始めた。
★
《訓練所・控室B、トラビス視点》
「トラビスお前は解雇だ!」
「はぁ、何でそうなるんですか?」
「それはこっちのセリフだ!トレントに叱られた内容理解してなかったのか?【影の騎士団】に咎を言わないかわりに誠心誠意の謝罪をすると話がついていただろ!
どうしてそれが決闘になるんだよ!?
お前も【脳なし】なのか?クランが笑われているんだぞ!」
「アイツが舐めた発言して、俺様を貶める発言をするからで!」
「どうせお前のことだから、名乗りも事情も話さず適当に謝罪したんだろ!
状況も分かってない人間が変な発言になるのは当たり前だ!」
「8時間待ってあんなセリフ言われたら誰だってキレますよ!」
「そんな事は彼には関係ないし、お前の教育不足が招いた結果だろうが!反省の欠片もないのか!
勝敗がどうであれ、面倒は見切れん!」
クランマスターは控室から去った。
若手時代の粗相は当たり前だろ!皆大げさに騒ぎやがって!
トレントの野郎もドムドムもムカつくぜ!
この思いは小僧を血祭りにして晴らしてやる!
★
《訓練所・中央、スロー視点》
ボクは対戦相手を待ちながら周囲を見回した。
広さは体育館くらいで、観客席がある。
2千人くらいの観客がいる。
賭けをしている声もする。
「オッズはいくらだろう?自分に賭けたら屋台資金一発で稼げるかな?」
「オッズは50対2だよ、当然スローくんに賭けたから1割わたそうか?」
ボクの傍らには、トレントさんがいる。
所属冒険者の決闘だから審判としているようだ。
こういう時はギルドマスターじゃないのかな?
知らんけど。
「1年間は雑用メインで働くつもりなので遠慮します。泡銭より堅実に稼いだほうが、手に入れたものに愛着湧くと思えますし。」
「本当に面白い子だよ、師匠の教育の賜物かな?」
他愛のない会話をしていると対戦相手がやって来た。
その後ろには【脳なし】の2人が警備の腕章をした人に拘束され連れてこられている。
「自分達の行いの行く末を見せるために見学を許したんだよ」
ふーん、何も感じなかった。
「オマエはもう終わりだからな!」
「レベル1がトラビスさんに勝てるわけないからな!」
君達は犯罪行為して何も反省してませんよね?
「彼らの口を塞げ!冒険者のマナーも理解していない奴はこの場から連れて行け!
ごめんね、スローくんここまで【脳なし】とは思わなかった」
「事実ですから気にしてませんよ。」
ボクの本質はレベルは関係ないからね。
「何だオマエ、レベル1か?俺様は寛大だから土下座したら許してやるぜ!」
「レベル1に決闘を申し込む程、相手の強さを理解できない【傲慢】さんが土下座したらどうですか?」
「誰が【傲慢】だ!許さんぞキサマ!!」
「いい加減にしろ!お前が面倒見ていた奴を叱ったばかりなのに何でマナーが守れない?
勝っても負けてもペナルティあると思え!」
トレントさんは厳しく叱咤した。
こんな一面もあるんだね。
「もう始めよう、両者定位置に!」
ボクは定位置に向うため振り向きながら、ちょっと煽れば倍は激高する。
作戦通り(笑)
お読み頂きありがとうございます!
⋯システムは中国ショートドラマを参考にして書きました。




