㉘遊ぼうか?
ヌエが去ってもしばらくは、安全のために動かなかった。
「魔物が消えた原因はアレですね。すぐさま報告に戻りましょう。」
「見ただけで絶望を感じた後に冷静だね」(バント)
「冷静にならないと生き残れませんし、ボク達だけではなく【ロブ】の危機でもありますからね。森を抜けるのは大前提ですが、迅速に伝える手段も考えないと。」
「本当にスローくんは冷静ね。討伐は考えなかったの?私も、マカちゃん、Bランクのバントも居るけど?」
「ボクは3人の実力を知りませんし、知っていても無謀な選択はしませんよ。」
「でもマカちゃんなら、できるかもしれないよ?」
「それは無理よ、今日は低ランクの【呪いの魔剣】しか持ってきていないし、ベストな装備で挑んでも上手くいって撤退させるのがやっとよ。」
「バント、鑑定した?力の差は?」
「あのクラスを鑑定したら居場所を知らせるのと同じだぞ!鑑定するまでもない格が違う!」
「矛盾しますけど迅速に安全に森を抜けるしかありませんね?
ロブと連絡を取る手段はありますか?」
「連絡の魔道具は存在するけど、言葉にはない。」(バント)
「迅速に帰る手段は?」
「私は飛べるわよ!」(ケーラ)
「なら森を抜けたらケーラさんに行ってもらって、ボク達は安全な場所で応援と合流ですね。」
方針が決まり森を抜けるために行動を始める。
そういう時に限って盗賊が現れる。
「【実験師】【災狂】が焦って戻ってきたんだ、本調子じゃないはずだ!連携をとって首をもらうぞ!!
後はガキだ!名を挙げるぞ!」
バントさんもパーティメンバーもボクを見る。
「時間が惜しい、秒殺だ!」
先に攻撃をせず、こちらの様子を伺って襲撃していた判断は良い。ただ相手が悪かった。
大人達は当然強いし、ボク以外の【道化師の食卓】は天才揃い盗賊がかなうはずもない。
ボクも戦うも途中で悪寒が走り、何かに深いところまで見られた感覚がした。
盗賊討伐はあっさり終わり、ボク以外は命を奪う。遺体はそのまま逃げることを優先する。
「ここからボクは別行動するよ。ヌエはボクに興味があるみたいだ。」
「どういう事なの?」(マリー)
「盗賊と戦闘中ヌエに鑑定されたんだ、皆はそんな感覚ないよね?」
「マリーちゃん達は兎も角、私達が鑑定されたらわかるわ。(ケーラ)」
「ボクがヌエを惹きつけるから脱出して、ギルドに報告してほしい。命を奪うだけなら鑑定なんて使うはずないし、言葉が通じるならボクならどうにでもなるよ。」
メンバーは「スローならヌエを説得しそう。」とか呑気な態度。こちらは平静を装いながら死を覚悟しているのにね。
「ヌエはどこにいる?」(バント)
「この先100mかな?」
「さっきもそうだが私達にもわからないのに何でわかるの?」(マカ)
「ボクはレベル1だから脅威には敏感なんだよ。命の危機を一番感じやすいからさ。」
「ケーラとマカは、皆を連れて森を出てくれ、私は残る!」
大人組は自分が残ると言い争いする。
「正直な話、ボク一人の方が何とかなる可能性が高いです。3人の強さだと真っ先に殺されて終わりですけど、鑑定した上でボクを待っていますからね。」
「スローくんは死ぬ気じゃないよね?」
「無事に帰ったら、オットーとボクプロデュースのお店のメニュー考えるんですから!」
「「「それ死亡フラッグ!」」」
皆とひと笑いし「絶対死ぬなよ」と言葉を貰い笑って別れた。
皆が見えなくなるまで、見送るとヌエの居る場所に重い足を動かして進む。
ヌエはどこか楽しげに待っていた。
「さあ、遊ぼうか異世界転生者。」




