①前世と変わらないよね?
1時間に1話掲載企画中!
ボクの名前は【スロー】。もう少しで15歳、この世界でいう成人になる。
ボクには誰にも言えない秘密がある。どうやら前世は「地球」という場所の日本人だったらしい。
といっても、転生特典のような大それた知識があるわけじゃない。ただ、この世界の住人と比べると、少しだけ考え方がズレている自覚がある。
この世界には【レベル】という概念がある。生命を奪うことで経験値を得て、強くなるシステムだ。
ボクには【不殺】という固有スキルがある。生命を奪えない。だから、レベルは永遠に1から動かない。
周りの大人たちは、それを見て「人生詰んだ」「不遇だ」と絶望していたけれど、ボクにはその意味がよくわからなかった。
この世界の住人全てが冒険者じゃないんだから、命を奪わない仕事でいいじゃん!
――地球にレベルなんてなかったし、そもそも他者の命を奪うなんて平和な日常ではありえないことだ。
鍛えてステータスの基礎値が増えるなら、それで十分じゃないか。
レベルが上がらなくても、身体は強くなる。技は磨ける。
ボクのスキル習得法は、この世界の人から見れば随分と奇妙らしい。
【剣術】なら、複数の使い手に話を聞いて共通点を抽出し、自分に合わせてカスタマイズする。
【解体】なら、対象の構造を徹底的に解析する。
【刃物研ぎ】なら、摩擦係数と角度を物理的に検証する。
【算術】なんて、前世の知識があればあまりに簡単すぎて拍子抜けするほどだ。
【魔法】に至っては、想像できないから無理でした。
繁盛店の三男として生まれ、物心つく前から料理の真似事をしてきた。おかげで【料理】スキルもすぐに習得できた。
新しいスキルを覚えるたびに「天才だ」と騒がれるけれど、ボクにはそれが当たり前で、普通のことのように思える。
だから、特別な力に溺れることもない。
ただ、明日も今日と同じように、堅実に、確実な一歩を前に進めるだけ。
ハミング夫妻に鍛え上げられたこの身体と、磨き抜いた雑用スキルがあれば、屋台を開く資金なんてすぐに貯まる。
明日は、ハミング師匠達と旅立ち楽しみだな!
★
早朝、ヴァンダム侯爵領への定期馬車乗り場には、多くの人が見送りに来てくれた。
「お前は屋台の資金集めに行くが料理を忘れるなよ」(父ボンド)
父は包丁セットをくれた。
「あなたは夢中になると寝るのも忘れるから身体を大事にしなさい」(母アンナ)
母はテントで使うマットレスを
「俺達もお前に負けない料理人になるから頑張れよ」(長男クイック)
「辛くなったら帰ってきても良いんだからな」(次男ステイ)
2人からは中古だけど丈夫なテントを
周囲の人が中古なんてケチ臭いと笑うと
「新品贈って良からぬ奴に絡まれたら大変だろうが!!」
「新品を買えないんじゃない!スローの安全を考えた結果だからな!」
他にもたくさんの常連客が選別をしてくれた。
家族の優しさに、皆の真心に心から感謝した。
でも、こんなにいっぱい荷物をどうやって運べばいいの?
「これを使いなさい」
Bランク冒険者【ハミングバード】のナナ師匠が使い込まれているけど大切に使われていたアイテムバックを手渡してくれた。
多分貸してくれるんだよな?
「ナナ師匠ありがとう!」
お礼をいってバッグに皆の餞別を入れる。
「ヴァンダム侯爵領へは、安全にスローを送り届ける、安心してくれ!」
ハンス師匠がそういうと馬車に乗り込んだ。
ボクも乗り込み皆が見えなくなるまで手を振り続けた。
資金が貯まったら帰ってくるからね!
皆も元気でね!
ボクの冒険が始まったのだ!
お読み頂きありがとうございます!
無謀な挑戦してますが少しでも反応があればモチベーション上がるのでブックマークや評価をおねがいします!




