〜2.処刑令嬢、逃走金を作る〜
「なんとなくだけど、壁直せてよかった…代償は結構大きいのね。この魔術」
エルシアが安心してほっと息をつく。
『等価修復』
自分の持っている物を代償にある物を直す魔術である。
壁を壊したことを反省して改めて考える。
(魔力というかこの力はもう使ったら絶対処刑ルートに直行ね…)
「そうと決まれば、まずは……お金よ!」
エルシアはニヤリと不敵に笑うと、ベッドから飛び降りた。
狙うは、自分の部屋にある高級な調度品でも、父親の書斎にある金庫でもない。
自分の脳内にある『現代知識』と『魔力』の融合だ。
「お金を貯めて、もしもの時のために私の力は使わずにできるようにしておけばいいのよ!」
彼女は部屋の机に向かうと、白紙の羊皮紙を広げた。
そして、人差し指の先にほんの少しだけ魔力を込める。
「『等価錬成』」
ボッと淡い光が灯り、エルシアが思い描いた、あるものが何もない空間から次々と物質化して机の上に転がった。
それは、この世界の最高峰、極限まで不純物を取り除いた直付けの『超高純度・巨大ダイヤモンド』
それも、大人の拳サイズがゴロゴロと5個。
「ふふん、これでとりあえずお金は確保ね。」
にやりと不敵な笑みを浮かべた。
普通の5歳児ならおままごとで遊ぶ年齢だが、この幼女はすでに国家予算レベルの宝石を密造していた。
「これを鑑定してもらってお金にすれば…大儲けね」
ルンルンと嬉しそうにエルシアは満面の笑みで、その凶器のように輝くダイヤを、ポシェットへガサゴソと詰め込んだ。
「お嬢様?先ほどお部屋から何か光が見えましたが……」
タイミング悪く、先ほど下がらせたはずのメイドが、不審に思ってドアを開けて入ってきた。
ポシェットの紐を握りしめたエルシアと、バッチリ目が合う。
メイドの視線が、エルシアの小さな手元と、まだ机の上にギリギリ溢れている、夜空のように輝く巨大な謎の鉱石へと注がれた。
「お、お嬢様?その、輝いている石は、一体…?」
「これ? ……お、おはじきよ?」
――無理がある。あまりにも無理がある。
時価数億エルク(国家予算級)のおはじきが、この世にあってまるか。
エルク…この世界でのお金の単位




