音間さんは懐古厨 1
以降、俺と音間さんはそこそこ仲良くなり、校内で会ったら数分くらい話すような関係性になった。連絡先も交換したし、要するに友達だ。
とはいっても話すことといえば、音MADのことばかりだ。最近はあの素材が流行ってるとか、あの合作がよかったとか、そういう他愛もない話。
俺自身の音MAD制作活動は、あまり変わらずに続いていた。新作を上げると、24時間以内に必ず音間さんからお褒めのメッセージを貰えるので、なんとも嬉しい限りだ。
⋯⋯とはいえ、やはり活動の萎縮というか、遠慮が生まれたのも事実だ。
なんというか、音間さんは、どことなく怖いのだ。新作の音MADを上げる度に、逆鱗に触れないか恐れてしまう。音間さんが音MADに対して抱いている情熱って、なんか並々ならぬもののように感じるし。
「こんな駄作を上げるなんて⋯⋯失望したよ」くらいのことは言ってきそうじゃないですか? 完全な偏見ですけども。かといって本人にそれを言うと失礼だしなぁ。
土曜の昼下がり。素材ファイルをタイムラインに乗せながら、そんなことを考えていた。
いま作っているのは、少し前の連休で地元の博物館に行ってきたときの映像が素材の音MADだ。こういう旅行記の音MADは鉄道界隈に多いが、その界隈に限らずいろんなジャンルでもできるんじゃないのか? という実験も兼ねている。ちなみに曲は最近流行ってるボカロ。まぁ素材がニッチだからあまり伸びないだろうが、伝わる人に伝わればいい。
あの博物館には子どものころから何度も行っていたし、今自分がこうして理系の学部でT大学に入っているのも、この事実の影響が少なからずあると思う。そんな恩を音MADというウルトラ著作権侵害で返すというのもなんだか変な気はするが、まぁ、撮影はOKだったし、うん。
俺こと『あかひー』のアカウントページを見てみると、素材のジャンルに一貫性がないことがわかる。合作単品だったりするとまぁ王道なものになったりするが⋯⋯。
子ども向けアニメ、テレビCM、検索してはいけない言葉、ちょっと前に流行ったYoutuber、家にあるぬいぐるみ、テレビCM、版権キャラ、ボイスコミック、などなど。さほど意識しているわけではないけど、あまり音MADで使われることのないものたちだ。『自分が知っている』以外の共通点がない。
コメントでも『あかひーの素材チョイスは変』とか『これは何?』とか『本当に何?』とか言われることが多い。普通の素材を使ってもいいかもしれないとは思うのだが、流行りのソシャゲとかアニメとか知らないわけで、そんな状態で音MADを作るのもなんとなく申し訳ない(音MADを作ること自体が申し訳ない行為ではあるのだが)。
一方で使用曲のほうは、懐メロからボカロまでいろいろ。こっちはまぁ比較的オーソドックスだ。MIDIが元々用意されていたほうが作りやすいし、先人に倣ったほうがいい。
⋯⋯そんなこんなで作業が一通り終わったころ、スマホが鳴った。
「急で悪いけど、研究室まで来てくれない? なるべく身軽に」と、音間さんからメッセージ。
⋯⋯⋯⋯マジか。
これはビビるね。ドキドキしちゃう。
次回こそ音間さんの研究室へGO




