音間さんは変
何?????????
本当に何????????
確かに俺は案件動画を作ったし、それが反感を呼ぶとは思っていたけど、まさか音間さんがあそこまでおかしくなるとは思わなかった⋯⋯。
十一月も下旬。音間さんに拒絶されて凹んでしまった俺は、午後の授業をサボって帰宅していた。目の前のPCモニターには、俺のアカウントページが映っている。
音間さんにとって、音MADが非営利目的かつ無邪気な遊びであることが、重大な条件であることはわかっていた。しかしそれにしても、俺は俺のアカウントで、俺の技術を用いて、お金を稼いだに過ぎない。
ことの発端は数か月前、ちょうど前作の博物館MADを投稿した頃。あの動画は少し珍しい角度のローカルネタだったこともあり、ニコニコでは二十万再生された。インターネットではなにがウケるか一切予想できない。
なにはともあれ、プラットフォームの大きさを考慮すれば十分すぎるほどの人気だった。
そんなとき、ツイッターのDMで、博物館の広報担当者から連絡を受けた。どうやらその人はネットのノリを活用した広報活動に興味があったらしく、ありがたいことにお声がけをいただいたのだが⋯⋯その時は即決で返事をすることはできなかった。
なにせ、音間さんの価値観のこともあるし、提示された報酬金額も、まぁそれまたとんでもない額だった⋯⋯節約しながらであれば半年は暮らせそうなほどの額だ。毎日ピザを食べても三カ月は持つ。そんな大仕事、当然のことながら受けたことがない。
結局その時は返事を渋り、夏休みに突入したのでバイトを増やしたのだが⋯⋯。そこで疲れ切った音間さんに出会ってしまった。
思い出すだけでも心配になってくるほどの、やつれた表情だった。髪は雑にまとめられ、大きな眼鏡も埃だらけ。目の下には濃いクマが出来ており、服はしわくちゃだった。
そして何より、普段の音間さんからは想像もできないほど、会話の受け答えが遅れていた⋯⋯。何を聞いても、返答まで妙に間があるし、常時ボーっとしている感じだった。
あまりにも酷い様相だったので、保留していた案件を速攻で終わらせて、音間さんを手伝いに行ったというわけだ。
⋯⋯うーん、恩着せがましかったかもしれないけど、それにしたってあそこまで責められるか⋯⋯? おまけに、今までの研究のときも含めて、俺はまだ感謝の言葉の一つすら貰っていない⋯⋯。
それになんだ、あの一言⋯⋯「どうせ私に惚れてるんでしょ? だったら私に従ってよ」って⋯⋯!
ええそりゃ惚れてましたとも! そりゃあそうでしょうよ! あんなに美人で、話すのも楽しいんだから! だけどそれに気づいてるからって、なんであんな言い方できるんだよ⋯⋯!
言い方ァ⋯⋯⋯⋯!
⋯⋯決めました。うん。もう決めたわ。音間さんには今後なるべく近づかないようにする。あそこまで拒絶されたんだから、そりゃそうだろう。研究室の教授にメシ誘われても、行かない。同じ講義に音間さんがいても、距離をとる。
あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーだったらどうすりゃよかったんだマジで⋯⋯⋯⋯。動画消すのも、仕事の契約違反だろうしなぁ⋯⋯。
かわいそうだね。
次回はまた視点が変わります。




