一つ目小僧の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
江戸によく喧嘩をする二人がいた。この二人、とにもかくにもつまらないことで喧嘩をするので親類も近所の住民も困っていた。
けれども、この二人の住んでいる長屋の大家が上手い具合に仲裁をしていたので、どうにか暮らしができていた。
◇
ある日のこと。
また件の二人がくだらないことで喧嘩をしたので、大家の元に呼び出されて訳を話すように言われた。
聞けば今度の喧嘩の発端は『一つ目小僧』にあるという。
このところ、江戸の町で一つ目小僧がよく現れると言うので、専ら人々の関心を集めていた。瓦版や一つ目小僧の絵が飛ぶように売れる程の流行りになっていた。
その一つ目小僧の描かれた絵が問題であった。
それには皿に乗った豆腐を長い舌でペロリと舐めている絵が描かれていた。この二人はその持っている豆腐が「絹」か「木綿」かという実に下らぬことで言い争いをしているのだった。
これには大家もほとほと呆れてしまったが、当人たちは至って真剣であり、尚更性質が悪かった。
◇
とは言ってもこれまでも何十とこの二人の争いを鎮めてきた大家である。すぐに仲裁するためのいい案を思いついた。
「全く。一つ目小僧の持ってる豆腐が絹か木綿なんて下らない理由で、よく喧嘩が出来るもんだ」
「そうは言ってもね大家さん。何分確かめる術がないものでして」
「わざわざ確かめなくてもいい。この一つ目小僧の持っている豆腐は「木綿」だ」
「え。どうして分かるんです?」
「ようく考えてみろ。絹豆腐と木綿豆腐、固くて崩れにくいのはどっちだ?」
「そりゃ木綿ですよ」
「そうだろう。一つ目小僧が持っている豆腐だ、カタメの豆腐に決まっている」
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