第三十四話 出発
すいません。ちょっと短めです。そして、数話閑話を入れてから、新たな章に入ります。
神鬼たちがエルファに戻ってきてから、一週間ほどたったころ。
神鬼とアル、そして新たについてくることになった少女ーーノアの三人は、ティムリ・ルーヴェント子爵(お久しぶりの辺境伯)の館へと赴いていた。
「そうか。もう行ってしまうのか・・・」
「えぇ。せっかく家まで用意して頂いたのに、本当にすみません」
そう、神鬼たち一行は、これからまた旅に出るため、ティムリ子爵に挨拶に来ているのだった。
「気にすることは無いよ。それに王女殿下からも、『彼は多分、早々にその村を出るかもしれない』と聞いていたしね」
「なんか、ほんと、すいません・・・」
「いや、本当に気にする必要はないんだ。それと、王女殿下はその後に、こういったんだ。
『なので、彼が少しでも安らげる時間を過ごせるよう、最大限手助けしてあげてください』
・・・とね」
ティムリ子爵からその言葉を聞いた瞬間、神鬼は目頭が少し、熱くなった。
「そう、ですか・・・。また今度会ったら、しっかり御礼しなくちゃいけませんね・・・」
すこし湿っぽい空気が、場を満たす。
そんな空気を換えようと思ったのか、ティムリ子爵が口を開いた。
「ところで、大体どれくらいに出立するんだい?」
「この後、ご近所に挨拶して回ったらすぐに。荷物もそれほどありませんし」
「これからの方針とかは、何か決まっているかい?」
「もとから決めていた魔王討伐のために世界中をめぐるんですけど・・・次は、ここから近いところにいると言われている魔王の所に行きます」
「その方向か・・・。ちょっと待ってね?」
そういうとティムリ子爵は立ち上がり、後ろにある自分の部屋に入り、またすぐに出てきた。しかし、入った時と違い、手には一つの巻物を持っていた。
「近くの魔王がいる方向だと・・・ここだ。ナヘルタ王国、だね」
「ナヘルタ王国、ですか。どういったところなんですか?」
「簡単に言えば・・・『いい国』だね。人は優しく、色々なものは集まりやすく、国としての質が高い。あの国の王族は民からもとても好かれている」
「文字どうり、『いい国』なんですね」
そんな国が存在するのか、と、神鬼は驚愕していた。
実際にそんな国を作ろうとしても、やはり人は十人十色、みんながみんな楽しく作れる国を作るなんて、とても難しいことだ。
だが、それをその国はやっている。もしかしたら少しぐらいは反抗する人いるのかもしれないが、それが目立たないぐらいの良さがある、というのは、とてもすごいことだろう。
「まぁそんないい国に行けるなら、この旅の楽しみも増えますね」
「あ、でも。ちょっと気を付けた方がいいんだよね」
「どういうことですか?」
「実は最近、ナヘルタ王国の近くにある国に、少し悪いうわさが流れててね。だからもしナヘルタ王国に行くなら、そこらへん気を付けてね?」
「分かりました」
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その後いろいろと雑談した後、ティムリ子爵の館から出て、そのままご近所さんへのあいさつをし、全員に声をかけた後、神鬼たちはコレから向かう方へと歩き始めた。
「な、なぁ。にいちゃん!!」
そしてエルファ村からも出るという時、後ろから声がかかってきた。
神鬼が振り返ると、そこには小さな子供がいた。
「なんだ?」
「お、おれ、ねぇちゃんたちを守れるように、なりたいんだ!その、おれも、にいちゃんみたいに、強くなれるかな?!」
少年は真っ直ぐに神鬼を見ながら、神鬼に尋ねる。
そんな少年を見た時、神鬼は、幼き日の自分が重なって見えた。
何も自分の力で守ることのできなかった自分を、そのために必死になって力をつけようとしていた自分と。
神鬼は少し苦笑してから、微笑みながら答えた。
「自分を信じろ。強者に立ち向かえ。そしてーー限界を、ぶち破れ。そうすりゃ、俺みたいになれるさ」
それだけ告げると、神鬼は背を向けて、歩き出した。
神鬼たちが少し遠くに離れた瞬間ーー
「にいちゃ~~~~~ん!ねぇちゃんたちを助けてくれて、ありがと~~~~~~~~!!おれ、ぜったい、つよくなるから~~~~~~!!」
少年の声が、周囲一帯に響き渡った。
その声に、神鬼は振り向かなかった。
だが、その右手を硬く握りしめながら、右手をただ、静かに上げた。
そのまま歩き続ける神鬼に、少年はいつまでも、手を振り続けた。
あ、新しい話を書き始めました。
まだ公開はしていませんが、できれば読んでくださると誠に嬉しいです。
たしか、12月1日ぐらいだったはずです。




