第二十六話 逆鱗に触れるという事
今回はグロいです!
食事中の方、あまり耐性のない方はお気をつけください!!
エルファ村から北西方向へ遠く向かった先、モミの木のような縦にとても長い木が大量に生い茂っている森があった。
そして、その森の中の岩肌がむき出しになったりしていて、若干周りと比べて開けたような感じになっている場所に、人の手で掘られたような洞窟があった。
その洞窟の前に男が3人、横に並びながら話をしていた。
話をしながらも付近を警戒しているのか、一切相手の方を向こうとはしていなかった。
「なぁなぁ。これから来る奴って、結構強ぇのかな?」
「どうだろうなぁ・・・。仲間を殺しまわることができたほどなんだから、ちっとばかしは強ぇんじゃねぇのか?」
「ま。団長より強いってことは無ぇんじゃね?」
「もしかしたら、俺らより強ぇってのはうそなんじゃね?」
男たちの話を聞く限り、この者たちは『貪狼の牙』の者であり、門番のような仕事をしているようだ。
男たちは声をそろえて笑っていた。しかし、そんな風に笑っていることができるのは、あとほんの少しだけだとは、誰も考えられなかった。
ボンッッッ!!!
突如自分たちの近くで大きなことが聞こえた為、横並びになっていた門番は、とっさに音のなった方を向いた。
音の鳴った方を見るとそこには、首だけが消し飛んだ死体があった。
「なっ!!」
「どうなってやがる?!」
あと二人となってしまった二人の男は、互いに背を合わせて周囲を警戒した。
すると、ちょうど洞窟の入り口の真正面に当たる方向から、誰かがやってきた。
その者は16,7歳に見えるくらいの背丈で、フード付きのローブのような服を身に纏い、目深に被ったフードからは、布の色とは対照的な白い髪をのぞかせていた。
「おい、とまれ!!」
男の一人が声を張り上げても、少年は足を進めることを止めなかった。
そのまま男たちの方へ歩いて行った少年は、男たちから5歩ほど離れた場所で立ち止まり、声を発した。
「お前たちが、『貪狼の牙』だな?」
少年から聞こえてきたのは、とても、とても低い声であった。
「・・・俺らがそうだったとして、てめぇはどうするつもりだ?」
男の一人は、今にも膝をつきそうな自分を気力だけで支えながら、少年に尋ねる。
尋ねられた少年は、フードからわずかに見えている口角を吊り上げ、男たちに告げた。
「俺の名前は哭動神鬼。俺がここに来たのは、アルの救出。そして・・・
お前ら全員の、抹殺だ」
そこにいた少年ーー神鬼はそういうと、自分の周囲に漆黒のオーラを漂わせ始めた。
周囲に見知らぬものが漂い始めたのを見て、男の一人は何が起こってもすぐ反応できるよう、手にしている槍を神鬼に向けて身構えた。
しかし、槍の穂先を向けられても、神鬼はその不気味な笑みを崩そうとはしなかった。
その態度になめられたと思った男は、何も考えずに神鬼に一直線に進んでいった。
が、
「そんな行動、何一つ意味がねぇんだよ」
神鬼は一言つぶやくと、一度だけ指を鳴らした。すると、次の瞬間ーー
男の数歩前に、無数の黒い槍が出現した。
「なぁっっ?!!」
突進していた男は、何とか直前で止まることができたが、その命は、一瞬にして刈り取られた。
ボッッッ!!!
先ほど、男の一人がやられた時と同じ音が鳴った。
後ろで控えていた男は、目の前で起こった悲劇に、恐怖で足をすくませていた。
わずか16,7ほどの少年が、自分の仲間の腹に、腕を貫通させていたのである。
「は・・・?へ?」
腹を貫かれた男は、今自分の身に起こっていることを理解しきれずにいた。
しかし、神鬼はそんな事は気にも留めずに、腹から手を引き抜いた。
「グ、グハァ!!」
腹に風穴があいてしまったために、体をうまく支えることができず、男は地に倒れ伏した。
その男の頭を踏みつけながら、神鬼はしゃべり始めた。
「痛いか?苦しいか?辛いか?まぁ当然だろうな」
神鬼は男の頭を踏みにじりながら、言葉を紡いだ。
「だがな、その痛みは、苦しみは、辛さは、俺だって感じたさ」
神鬼は、男を踏みつける力を徐々に強くしていった。
「お前らが俺からアルを連れ去ったことは、今俺がお前にしていることよりも、とても辛かったんだよ」
言葉に怒気を含ませながら、その顔に怒りを浮かべながら、頭を踏みつける力をさらに強めながら、神鬼は話を続けた。
「だから俺は、てめぇら全員ぶち殺す。例外はねぇ。そうでもしなけりゃ、俺はこの怒りを抑えきれねぇんだよ」
神鬼がそこまで話すと、踏みつけられていた男が言葉を発した。
「な、なんで、一人の女ごときで、俺ら全員殺されなくちゃいけねぇんだよ?!」
男は声をかすれさせながらも、懸命に口を動かし、抗議の声をあげた。
すると、次の瞬間。
神鬼の体から、先ほどまでとは違い、量も濃さも全く違うオーラが、周囲に立ち込め始めた。
そのオーラは、今までのようにただ空間にあるのではなく、神鬼の発する殺意や怒りなどの感情が感じ取られた。
その濃密な殺意に、立っていた男は息をのんだ。
神鬼はそんな男たちの反応に何も返さず、口を開いた。
「・・・てめぇらは、絶対わかんねぇよ」
踏みつける力を更に強くする。
男の頭が『ミシッ』となった。
「たった一人だけの女が、奪われてしまうことが、消えてしまうことが、どれだけ悲しいことか」
踏みつける力は弱まらない。
男からは何の反応も返ってこない。もうすでに、男はこと切れているようだ。
「それが繰り返されることが、俺には耐えられねぇ。耐えられねぇんだよ!!」
神鬼が力を一層込めると、男の頭はつぶれてしまった。神鬼の足を中心に、紅い花のような模様ができた。辺りには、血臭が立ち込めた。
「・・・あぁ、やっちまったな。ま、途中の反応からして、なんか言った後には死んでたんだろうな」
神鬼は、いましがたした行動に何の感情を抱くことなく、もう一人の男に視線を向けた。
「さて、あとはあんただけか」
視線を向けられた男は、すぐさま後ろを振り返り、アジトの内部へと駆け出した。
(まずいっ!あいつは、俺らみたいなやつよりも数段ヤバい!ボスに知らせねぇと!!)
そう思いながら駆け出していたが、その足を強制的に止めることになった。
「ッ?!!」
男の目の前には、先ほど頭をつぶされた男が足止めをくらった時と同じように、無数の槍があったのだ。
「おいおい、逃がすわけねぇだろ」
そういって神鬼は、右手をぐっと握りしめ、自分の方へ勢いよく引き寄せた。
そうした次の瞬間、槍が男の方をめがけ、一直線に進みだした。
とっさのことに反応しきれず、そのすべての槍が、男の全身に突き刺さった。
「ガハッッ!!」
無数の槍に貫かれ、男は先ほど殺された男のように、地に倒れることになった。
「驚いた?俺はな、オーラで物体を作り出し、それを念動力で操ることができるんだよ」
そういいながら、神鬼は男に近づいて行った。
「さてさて、お前はどうしようかな~・・・。あ、あれでいいや」
神鬼は少し悩むそぶりを見せてから、男から少し離れてから、また指を鳴らした。
その時、男の頭の上に、黒い鉄球のような何かができ始めていた。
「ま、まさか・・・?!」
「はい、多分正解。これでお前の頭をグシャッとやることにしました」
神鬼は無情に告げ、鉄球のコントロールをきった。
鉄球が地面についた瞬間、『グチャッ』という音と共に、紅い模様がもう一つ出来た。
「よ~し。これで邪魔を消すことはできた。後は中の奴らを・・・っと」
洞窟の内部を目指そうとした神鬼は、背後に残っている男たちの死体の方を向いた。
「『火球よ、燃やし、灰へ返せ』【火球】」
神鬼が呟くと、男たちの死体の真上に、頭より一回りほど大きい火の玉がうまれた。
その火の玉は男たちへと燃え広がり、跡形もなく燃やし尽くした。
「よし。それじゃあ潜入するか」
神鬼は今度こそ、洞窟の内部へと向かっていった。




