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チート勇者の異世界冒険記  作者: 松竹梅
第一章 消える封印見ゆる真実
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閑話1-2 回想〜あの日の事件〜(優里サイド)

今日二話目です。

「不動ちゃん!俺と付き合ってくれ!!」

「嫌です」


SクラスとAクラスでの合同授業中、外で剣術の特訓をしていたらいきなりAクラスの男子が告白してきたが、優里は一瞬で断った。


「そんなーーー!!なんでなんだよーーー!!」


「私はもう、兄様に永遠の愛を誓ったからです」

「取りつくしまもないっ!!」


告白してきた男子は、叫びながら地面に寝そべってバタバタししだした。


「ねぇねぇ。優里ちゃんはなんでそんなに神鬼君のことが好きなの?」


遠くで見ていた女子の一人が寄ってきて、軽く尋ねてきた。


「・・・そんなの、決まってる。兄様の苦しみは、兄様の痛みは、優里だけでも分かってあげられ無ければ、兄様はいつか壊れてしまいますから」


「・・・どういう事?」


優里の含みをもたせた言い方に、尋ねた少女は疑問を持った。


「・・・この事を話すには、兄様が初等学年に当たる年頃の頃にあった、とある事件についてお話ししないといけません」


優里はそういうと、少しづつ話し始めたーー



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 私がまだ小学校に通う前、兄様は一足先に小学校に通っていました。


 兄様は当時からすごかったのです。成績優秀、頭脳明晰、スポーツ万能、しかもみんなからの評判もとてもいい。といった感じで、皆の中心だったんです。

 そんな兄様が学校の話をしてくれたり、勉強を教えてくれたりする時が、当時の私の何よりの楽しみだったんです。


 でもある日、そんな日常が崩れてしまったのです。


 兄様の通っていた学校を、テログループが占拠したのです。


 事件が終わった後に、テログループについて調べたのですが、そのテログループは『貪狼の牙』という者たちだったそうです。財閥や権力者の子供を狙って、法外な金額の身代金を請求してくる者たちだったそうです。


 え?『そいつらはどうなったのか?』ですか?


・・・それが、兄様の心に、いくら経とうと消えない、とても大きな傷の原因へとつながるのです。


 その事件の際、兄様は一人で何とかしようと、敵の持っている武器の破壊を試みたのです。

 しかし、兄様は途中で捕まってしまい、見せしめに殺されそうになってしまいました。


 そんな時、一人の少女が兄様の前に立ちはだかったのです。しかし次の瞬間、その少女は撃たれてしまいました。


 兄様はその光景を見た瞬間、自分の体から何かが湧き出てくるのを感じたのですが、同時に意識を失ってしまったのです。


 ちなみに、兄様の事をかばったその少女の名前は、『天海鈴果』と言います。

・・・えぇ。私たちと同じようにこの世界へと召喚された、兄様のクラスメイトの天海先輩です。


 今から言うのは兄様から聞いたことではなく、天海先輩や当時周りで見ていた人たちから聞いたことをまとめた結果、見えてきた真実です。


 天海先輩が撃たれた直後、兄様は髪が逆立ちはじめ、目からは光が失われ、まさしく、『悪鬼羅刹』といった様子だったそうです。

 そうして、周りから見てもよくわかるほど兄様の体つきが変わった頃、兄様はいきなり動き出したそうです。


 まず最初に、近くに寄ってきた三人ほどが、下半身を残して消え去った(・・・・・)そうです。

 何をしたのか、周りの人にはさっぱりわからなかったようなのですが、私は、兄様は腕を振っただけ(・・・・・・・)なのだと思います。


・・・『そんなことが人間にできるのか?』ですか?・・・正直言って、兄様はあのころから、もうほとん(・・・)ど人間を辞めていた(・・・・・・・・・)のです。


 兄様のやっていた修行と言えば、素手でクマを殺しに行ったり、滝を拳一つで空高くへと押し上げたり、一けりで鉄の塊を両断したりと、確実に人間とは思えないことをしていましたから。

(まぁ、私もやろうと思えばできる気がしますが・・・)


 まぁその事はさておき、いきなり仲間を殺されたテログループたちは、逆上して兄様に襲い掛かってきました。


 しかし、只の人間がちょっと近代的な武器を持ったところで、自然災害に匹敵する力を持っている兄様に勝てるわけがありません。


 近づこうとした者は、体を不可視の何かに穿たれ。


 遠くから撃ってきた者は、発砲音と体をのけぞらせて絶命し。


 逃げようとした者は、下半身がはじけ飛ぶ。


 そんな阿鼻叫喚とした空間に、その場所は様変わりしたそうです。


 やがてすべてのテロリストが殺されたとき、兄様は足元で倒れていた天海先輩に体を近づけると、伸ばした手のひらから暖かい光を天海先輩に纏わせ、天海先輩を一瞬で、怪我一つない状態にしたそうです。


 あ、ここから先はまた兄様から聞いた話です。


 その後、意識を取り戻した兄様は、自分の手についていた血、周りから向けられていた視線からすべてを把握し、その学校から転校したそうです。


その時の兄様はこう言っていました。

『なぁ優里。強い力ってのは、持ってちゃいけねぇのかな?守るために力を使っても、強すぎたらだめなのかな?』と。


 その話を優里に話してくれた時、兄様は泣いてました。

 幼いころから全く泣かず、どんなことだって耐えてきたあの兄様が、泣いていたんです。

 それほどに兄様は、周りから自分を『化け物』として見られるのがいやだったのです。


・・・話がそれましたね。この事件があってから、兄様は名前を偽り、どんなところでも『目立たないように』生きてきました。


 勉強で言えば、普通だったら満点だって取れるようなテストも、そこそこの点数しかとらなかったり。

 運動で言えば、だれよりも一番にできることを、わざと失敗したり。


 そんな風にして、兄様は生きてきました。


 自分の正体がバレないように、無数の錠を心に掛け。

 自分の力が漏れないように、数多の制約を力に負わせ。


ーー一生、自分がもう一度『化け物』と言われないように。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「・・・これが私が知っている、兄様に降りかかった『事件』の全てです」


優里がそう言い終えると、辺りには重苦しい空気が漂った。


そんな空気が蔓延する中、場違いな感じな程に底ぬけな明るい声が聞こえてきた。


「お〜い。優里ちゃ〜ん。相手しよ〜」


その正体は天海であった。

どうやら、剣術の練習での組む相手が見つかっていなかったようだ。


「あ、はい。分かりました。それでは皆さん、またいつか・・・」


優里はそう言って、天海の方へと走って行った。


 練習のメニューを半分ほど消化した頃、天海が優里へ話しかけてきた。


「優里ちゃん。優里ちゃんも『私があんなジン君を見た事があるのに、何でジン君から離れていかないんだろう』っていう風に考えているんでしょ?」


「!!・・・はい。私には、いまいち理解できないのです。いくらあの(・・)兄様が助けてくれたから、あの(・・)兄様が命の恩人だからとはいえ、よくわからないのです・・・」


「ふふふっ。優里ちゃんでもわからないか〜。ま、あの事(・・・)までジン君が言ってたかどうかは、流石にわからないからね、優里ちゃんには言っておくよ」


 そういうと、天海は優里の方を向き、自分の立場の再確認をするように、声を発した。


「私はあの時救ってもらうよりも前に、私は一回救われているの」


 天海はそういうと、古いアルバムを懐かしむような雰囲気のまま、語り始めた。


「私、ジン君に会うまでは、何をやっても上手くいかない、ダメな子だったんだ」


 天海のその言葉に、優里は少し、意外だと感じた。


「学校の女子の中でも一番どんくさくて、何をやっても平凡ぐらいの結果しか出せなかった私に、ジン君は声をかけてくれた。『一回やっていい結果が出ないなら、いい結果が出るまでやってみればいい』って言ってね。

 正直言って、あの時はそれをただの暴論だと思っていた。でも違った。

 ジン君は私に、『やれば出来るだけの才能がある』っていう風に見ていてくれていた。前評判なんて気にせず、自分の目の前にいる私自身を見てくれた」


天海は一旦言葉をきり、優里の方に向き直り、また言葉を繋いだ。


「それからかな。私がジン君の事を好きになったのは」


 天海はそう言い話を終えると、柔らかな笑みをうかべた。


その表情に、優里は何かを確信したように一人頷いていた。


「・・・そうですか。兄様が天海先輩に優しくしていたのは・・・。これで、しっかりと確認できました。兄様が欲しているものは、『第三者からの客観的意見』のようですね・・・」


「第三者からの・・・?何それ?」


優里がポツリとこぼした言葉に、天海は疑問を感じたが、優里はその場から足早に去ってしまった。


「第三者・・・どういうことなんだろう?」



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