第十八話 学園生活15 地上への帰還
*8/25 訂正入れました。
*8/25 一部加筆しました。
「マジか・・・この槍、意志、というか自我があんのか」
神鬼は呆れ混じりにつぶやいた。ふと疑問に思ったことがあったが、それを遮るように、この空間の真ん中あたりに奇妙な魔方陣が出てきた。
「ん?これって・・・」
「シンドウ・・・いや、コクドウだったな。あれは多分、迷宮から出るための転移魔方陣だと思う」
そこに現れた魔方陣に、似たようなものを見たことがあったので首をかしげていると、モトル教官が説明してくれた。
「そっか。ていうことは、ここに入れば地上に戻れるってわけか」
俺が「地上に戻れる」といった瞬間、皆から歓声があがった。
「まじで?!やっと帰れる~!!」
「つらかったわ~!!」
「俺、ここから出たらうまいもの食うんだ・・・」
おい誰だ、とんでもなく不安でテンプレすぎるフラグ立てたの・・・
皆続々と魔方陣へ駆け出し、光の柱の内側へ入っていった。
「あ、一応あいつも拾っていくか」
皆からもすっかり忘れ去られていた箕田を回収し、今さっき手に入れたタナトスを【異空間武器庫】へしまうと、俺も光の柱の内へはいった。
その瞬間空間がゆがみはじめ、風景が変わりだした。
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・・・風景が完全に変わり終え、足元の魔方陣が消えたころ、誰かがぽつりと言った。
「帰って、きた・・・?」
その言葉を皮切りに、皆が歓声をあげる。
「やったー!!」
「ほんとに帰ってこれたー!」
「俺、やっぱりうまいものが今すぐ食いてぇ・・・!」
だから誰だよ、露骨にフラグ立てまくってんの・・・
「?みんな、なにか音が聞こえない?」
多香美の言葉に、皆が辺りを見回す。一通り見まわすと、東の方から何かがやってきているのが分かる。
「馬・・・いや、人が乗ってる・・・。あれは?!」
ヘリラ先生が目を凝らしたり魔法を使っていたら、何かが見えたようだ。
「何が見えたんですか?」
「まさか・・・いや、でも・・・?!」
自分の見たものが信じられないのか、何かぶつぶつ言っている。
やがてだんだんと近づいてきたため、神鬼たちもその姿が確認できた。そこにいたのはーー
「シンドウさ~ん!みなさ~ん!ご無事ですか~!」
『ルミナス(さん)(王女)(様)??!!!』
そう。アルバレス王国第三王女、ルミナス・ミラ・アルバレスだったのだ。
そして、そのままの勢いで馬から降りて、先頭にいる神鬼のもとへ一気に駆け出した。
「ご無事でしたかっ!?シンドウさん?!」
「はい、大丈夫ですよルミナス王女。それより、よく自分がシンドウだと分かりましたね?あと、自分は本来の名前は『哭動神鬼』と言います。気軽に『ジン』でいいですよ」
「そんなの簡単ですよ、ジン様。ジン様にはジン様からあふれているオーラがありますから」
(ジン『様』?なんで『様』何だろう?)
ルミナス王女の発言に若干の謎を感じながらも、神鬼は一応話を進めることにした。
「それでルミナス王女。なんでここに来たのですか?」
「それはですね、この迷宮を攻略した人が現れたからなんですよ」
「?それをどうやって知ったんですか?」
「王家には魔王がどこにいるのか知ることができる道具があるのですよ。ずっと確認していた【色欲】の魔王の反応がなくなったので、きっとジン様が倒してしまわれたんだと思ったので、早馬を飛ばしてこっちに来たのです」
なるほど。たしかに、魔王がこんな近くにいるのにあんまり案じてなかったのは、その道具でどこにいるのか確認できるからだったのか。
「まぁまぁ、こんなところで立ち話もなんですから。早く城へ戻りましょう」
そういって急かすルミナス王女に腕を引かれて、馬の方へ向かっていく。
・・・なんだろう、背中にとっても視線を感じる。
・・・頼む。胸を押し付けないでくれ王女様。視線がさらに痛い。
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道中もルミナス王女が絡んできて、それを見ている白河達から怒りの視線が飛んで来たりと、色々とあったけど王城へと着いた。
「・・・よくぞ無事でございました。皆さま方」
今いるのは食堂。迷宮でとっても腹が減っていたので、皆飯にすることにしたのだ。
「今日は皆さんお疲れでしょう、今日はゆっくりとお休みください」
そういって戻ろうとした王様は、一瞬こちらに目線を向けてきた。
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「・・・そんで、いったい何の用ですか?王様」
「そんなに他人行儀でなくて大丈夫じゃよ、シン君」
「ははは、わかりましたよヘリさん。あ、そうだ。俺、真名開放したんですよ、本当の名前は『哭動神鬼』っていうんで、『ジン』でいいっすよ」
「ふむ?そうだったのかね。では、これからは『ジン君』とでも呼ぶとするかのぉ」
「そんで?今回呼んだのはなんでなんすか?世間話するために呼んだんじゃないですもんね?」
「じつはの、今回来てもらったのはとても重要な話があるからなのじゃ」
プライベートで会う時には珍しく、とても神妙な面持ちで話を始めた。
「ルミナスから聞いておるやもしれんが、この国には魔王がどこにいるのか知ることのできる道具があるというのは知っておるかの?」
「えぇ」
「それと同じものが、この大陸の『三大国家』と呼ばれているフレナンド法国とウェルド帝国にもあるのじゃよ」
「どこすかそこ」
「授業で習わなかったかの?この大陸には、魔王の動向を知っておく義務のある三大国家がある」
王様はそういうと地図を引っ張り出して、近くにあった机の上に広げた。
「その三つの国はこの大陸で最も栄えていたので、魔王や魔族、魔物などが出るようになってからというもの、その三つの国が中心となって人族の運命を担っていくことになったのじゃよ」
「へぇ~」
「そんなわけで、ほかの二国にも【色欲】の魔王が倒されたことは知られたと思うからの。色々と気をつけておくれ」
「なんでっすか?」
「魔王を倒せるほどの実力者がいると分かれば、何かしらの手出しをしてくる可能性が高いのじゃ」
「そっか。心配してくれてありがとうございます。俺、ちょっと眠くなってきましたんで、今日はもう寝ますわ」
神鬼が部屋から出て行ったあと、王様はポツリとつぶやいた。
「・・・今日は、本当にありがとう。まさかこの世界に召喚されてから、十日と経っていないのに魔王を倒すとは・・・本当に、本当にありがとう・・・」
なぜだ・・・なぜ、神鬼がこんなにチャラ男に見えてくるんだ・・・?!
あ、もう少しこの国にいますよ。




