第十四話 学園生活11 神鬼の本気
この話も、文字数頑張って増やしました。
見づらい、読みづらい、という人はご意見いただければ幸いです。
神鬼の背後に現れた『何か』は、少しずつ姿があらわになってきた。
それは、流れるような真っ白の髪を、腰ほどまで伸ばしていた。
それは、山のように隆起した、鋼のような体つきをしていた。
それは、人とは思えぬ、恐怖をもたらす顔をしていた。
それは、頭に二つ、何よりも美しく、しかし、畏怖を抱かせる『角』を持っていた。
「・・・初めまして。と言えばいいのかな?神鬼」
神鬼は、自分の背後に現れた者に、声をかけた。
「初めて、ではないよ。神鬼。そして、私の事は『神鬼』でなくていいよ」
「そうなのか?じゃあ、『アーラ』って呼ぶことにするよ。ちなみに、由来はスンダ語で『神』だ。ちょっと変えたけどな」
「なんでそれをチョイスしたのかは聴かないでおこうか・・・。まぁ、あの時聞けなかった私の名を、今聞いた、というだけだからね」
「あの時?どうゆう事だ?」
何か深い意味を持つようなアーラの言葉に、神鬼は疑問を感じた。
「君は気付いていなかっただろうが、君は一度だけ、私の力を使っていたのさ」
「うそだぁ。そんなことないいだろ?俺はお前を顕在させたことなんてーー」
「あの事件、と言えば、君はわかるだろう?」
「っっ!!!」
アーラの一言に、神鬼は何かに思い至ったような表情をしていた。
「そうか・・・あの時に、お前は俺を助けてくれていたのか・・・」
「今はそれよりも、目の前の敵を倒すのが先だ。さっさとやってしまおう」
「そうだな・・・あとでしっかり、話は聞かせてもらうぞ?」
そういうと、神鬼は自分の前にいる魔王をしっかりと見据えた。
「お前は、その【魔装】が切り札だ、と言っていたよな?」
「ぅむ?確かにそうだが・・・だから、何だというのだ?」
「俺は、お前が切り札だと思っていたその【魔装】、俺は今まで、本気で避けてねぇんだよ」
「・・・虚勢であろう。現に、避けていたときのおぬしは、本気で精いっぱいであったろう」
魔王は、見え透いた嘘はつくな、といった表情で神鬼を見ていた。しかしーー
「だからさ、その時がまだ本気じゃなくて、これから本気になるって言ってんだろ?」
神鬼はそう告げると右手を頭上へとのばし、背後にいたアーラはその手に自分の角を近づけた。
「あぁ、やっとだ。やっと、あの時の力が、また味わえる・・・!」
アーラはこれから来る何かに、とてつもない期待を寄せているようだ。
周りにいたものは、これから何が起こるのか、次の一瞬に来るであろう『結果』を絶対に見過ごさないように、といった表情で神鬼を見ていた。
しかし、その中でただ一人、不動優里だけが周りと違った表情をしていた。
その表情は、『不安』であった。
(兄様はこれから、【鬼纏】を使うのでしょう。それは予測できるし、理解できます。でも・・・
あれを使うということは、もう完全に、人の生活を辞める。ということを決めてしまったのでしょうか?
もし、そうなのであれば、私もーー)
不動優里がとある決意を決めようとした時、急に神鬼から声がかかってきた。
「おい、優里」
「っ!なんでしょうか兄様?」
ついさっきまで考え事をしていた為、少し反応が遅れてしまった優里に。
神鬼は、いつものような、優しい声で。
「確かに今から、俺は人の生活を完全に辞める。だけどな、お前までそうする必要はねぇんだ。」
その声は、頼むようで、願うようで、見えない何かにしがみつくようだった。
「頼む・・・お前は、お前だけは、みんなと一緒に・・・人でいてくれ・・・」
こっちを振り返りもせず、しかし、切実に告げた。
神鬼のその言葉に、優里が大きく頷いた。
その反応を確認すると、神鬼は掲げていた手を少しアーラに近づけた。
それを見て、アーラも自分の角を、神鬼の手に近づけた。
神鬼の手とアーラの角が触れた瞬間、とてつも無い量の光が辺り一面を塗りつぶした。
光が辺りを埋め尽くしていたとき、神鬼から声が聞こえてきた。
「見せてやるよ、魔王アスモデウス。これが、人を辞めた者の力だ」
光がおさまり、神鬼の姿が見えた瞬間、優里以外の全員が驚きを通り越して、信じられないものを見るような眼を、神鬼に向けていた。
そこにいた神鬼は、先ほどから話していたように人ではなくなっていた。
そこにいたのは、まさしく『鬼』であった。
しかし、『鬼』と思われるような顔ではなく、神鬼の優しさと、アーラの恐ろしさを、足して二で割ったような、冷酷のように見えて、奥底に優しさを秘めた表情を持った、『人』に見えた。
それでも、万物を切り裂けそうな爪を携えた手や、この世のものすべてを貫けそうな角、何者も敵たりえぬような圧倒的なオーラが、その存在を『鬼』と物語っていた。
「お主・・・その姿、『鬼人族』と似たような姿であるが・・・お主、本当に人なのか?」
「さっきの話聞いてなかったのか?俺はもう、人間じゃねぇんだよ。人の姿をした、化物だからな」
神鬼は軽く言い放つと、魔王のいる方へ軽く、手を横薙ぎに振るった。
ズガァァァン!!
その瞬間、轟音と共に魔王の体が後ろへ、2メートルほど何かに弾かれたように下がっていった。
「・・・なにを、した、人間よ?」
若干ダメージが入ったようで、言葉を途切れさせながらも魔王は聞いてきた。
「なに。俺の纏うオーラを、お前にぶつけただけさ」
神鬼はそう言うと、少しづつ魔王へと歩いていった。
魔王は、神鬼が自分に向かってきていることへの警戒よりも、神鬼の先ほどの攻撃に、ただただ驚愕していた。
(なんと・・・人間の身であそこまて自由自在にオーラを扱える者など、今まで一度も見たことなど無かったが・・・やはりこの者は、先程から言うように、自らを『人』では無くした。というのか?)




