第十三話 学園生活10 【魔装・ラスト】
今回、魔王がちょっと活躍します。
「さぁ、あんたの乗り物はもう動かねぇ。おとなしくやられちまいな」
神鬼は刀の切先を向けたまま、魔王へ宣言した。
しかし、魔王から帰ってきたのは諦めではなく、余裕だった。
「ふふふふふふ。何を勝った気になっておる。我はまだ、使っていない力があるのだよ」
「力・・・?面白れぇ、使ってみろよ。その力とやらを」
「ふふふ・・・。後悔するなよ?」
そういうと、魔王はオーラを自身の体に凝縮し始めた。
「・・・?!こりゃやべぇ!!皆、今すぐ防御しろ!!!」
神鬼は叫ぶと、自身の前にも障壁を作った。
「我、色欲を司りし魔王、アスモデウスなり」
魔王がつぶやくと、体に集めていたオーラが少しづつ、色と形を変えていった。
「色欲は迷いなり。色欲は惑いなり。色欲は誘いなり」
「色欲好むは色情なり。色欲好むは人の利欲なり」
「今ここに、色欲の心を集め、我が力となさん」
魔王が一文唱えるたびに、周囲に怪しげな魔力を感じる。
「色欲を糧に、今こそ出でよ!!」
魔王が締めくくると、魔王のオーラがいきなり爆風のように襲い掛かってきた。
オーラの威力で巻き上がった砂煙がおさまった為、魔王の方を見てみるとーー
ーー魔王の纏うオーラが、変わっていた。
「てめぇ・・・それなんだよ?」
神鬼が、苦々しげにつぶやく。
すると、魔王は今度こそ勝てる、という、自信に満ち溢れた表情でこっちを向いた。
「ふふふふふ・・・。これは魔王へと至りし者のみが使える力。名を、【魔装・ラスト】という。これを使ったからには、もうおぬしに勝ちの目など、万に一つも無いわ!」
魔王は叫ぶと同時に、地面を思い切り蹴って神鬼に殴りかかってきた。
頭めがけて槍をぶつけようとしてくる魔王に、神鬼はとっさに腕をクロスして防ごうとするがーー
突然。魔王の槍が上から向かってきていたのに、真正面から突き出されてきていた。
「ぐおっっっ!?」
突然自分の腹に向き先が変わった槍に反応しきれず、横っ腹を少し傷付けられてしまった。
そして、そのまま倒れこんでしまった。
「兄様っっっ!!!」
優里の悲痛な叫びが響いた。
「全く槍が見えなかったであろう?その種明しぐらいはしてやってもよさそうじゃのう」
魔王はそう言うと、自分の体の周りに漂うオーラを掌に集めると、自分のMPを流した。するとーー
魔王の姿が、人になった。
「なっっ?!!」
その場にいた全員が、驚きを隠せない、といった表情で魔王を見ていた。
「なに、驚くほどではない。我が今使ったのは、【魔装・ラスト】が使える力、『幻惑』だ。人も、闇属性の魔術が使えるであろう?これは、その上位版のようなものだ」
魔王はあっさりと言った。
しかし、いくら闇属性の魔術が使える人でも、自分の姿を完全に変えることまでは出来ない。ましてや、それによって声を変えたり、触感を変える事など出来るはずがないのである。
だが、それも人間の尺度で、しかも暗黒属性では試したことがないので定かではない。
しかし、あれが人間に再現可能とは、誰も思えなかった。
「そうそう。我の持つ槍、【タナトス】はの、死を司る精霊の名じゃ。傷一つ負えば、命に関わる程の致命傷へ変えることもできる」
魔王の発言に、その場にいた全員が凍りついた。
「はっはっはっは!これでお主も、手も足も出せまい!!」
勝利を確信した魔王は、神鬼を見て笑った。
しかし、その表情はすぐに怪訝なものへと変わった。
神鬼が、笑っていたからだ。
「何がおかしい?人間よ」
「可笑しいったらありゃしねぇさ。だってよ、いつ俺が、『本気を出した』と言った?」
「むっ??」
神鬼は少し息をあげながらも、負けを感じさせない雰囲気を漂わせながら、ゆっくりと立ち上がった。
「なぜじゃ?タナトスの力でお主の体力は底をつくほどのはず。なのに、なぜまだ立ち上がれる?」
魔王は、今日何度目かになるかわからない回数した、驚愕といった表情を浮かべた。
「ふん。そんなの簡単さ」
「では、一体なんだというのだ」
魔王の言葉に、しっかりと立ち上がった神鬼は、魔王をしっかりと見据え、堂々と言った。
「俺には、守るべきものがある」
「そこにいる優里、白河、天海、先輩。召喚される前の世界にだって沢山いる」
「俺は、その全てを守りたい。だからーー」
そこで神鬼は一度言葉を切り、しっかりと宣言した。
「俺は、俺の守るもののためなら、どんな奴が相手でも、たとえ神が相手でも、絶対に負けはしねぇ!!!」
「そのために!俺は、どんな力だろうと使うと決めたんだ!!」
そう叫ぶと、神鬼は魔王が【魔装】を使った時のように、自分の体に力を溜め始めた。
「まだ一回もやったことなかったけどよ、やるっきゃねぇなぁ!!」
神鬼はパンッ!と両の手のひらを合わせると、ゆっくりと目をつぶった。
「我が名は哭動神鬼。鬼が神を宿らせる者なり」
神鬼が唱えると、神鬼の神が、ゆっくりと、不可視の力によって持ち上がっていく。
「我求むるは鬼の力。我求むるは鬼の権能」
「我、この身に宿りし我が鬼と、二体で一つの力となさん」
「哭動に伝わりし秘儀において、我が体を、鬼と共にせん!」
最後の一文を唱えると、神鬼の背中に『何か』が現れた。
神鬼は次回活躍します。おたのしみに~




