表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
再戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

305/306

挿話「クラウン」

 認証が、通らなかった。


 アーンはもう一度コックピットに手を当てるが機体が応えなかった。インジケーターが赤く点灯して、そのまま落ちてしまった。

 要塞の廊下から聞こえてくる駆動音は変わらない。空調の風も変わらない。

 世界は何も変わっていないのに、ルークだけが黙っていた。


 機器の不調だ、とアーンは思った。


 それ以外の可能性は、頭の端にも浮かばなかった。


 七七七の格納区画に向かう。使い慣れた動き方で乗り込もうとしても、やはり同じだった。機体が沈黙した。


 アーンは少し首を傾けて、それから手を下ろした。


「まあ、いいけど」


 誰に言うでもなかった。廊下を引き返しながら、王の印の感触を確かめた。

 ある。力は出る。

 自分に問題があるわけじゃない。

 フレームの話だから、フレームで解決すればいい。そう結論が出るまで、五歩もかからなかった。




 製造区画の主任技師は、依頼を聞いてから短く間を置いた。


「七七七に、寄せる、ということですね」

「そう。完璧に再現しなくていい。動いて、それっぽく見えれば十分」

「理由を伺っても」

「会いたい人間がいてね」


 そう言って、アーンは軽く笑った。


 技師がそれ以上聞かなかったのは、賢い判断だった。理由を聞かされて得をする立場ではないと分かっていた。




 出来上がったのは三日後のことだった。


 格納区画に並ぶ機体の中で、一機だけ違う形をしている。

 七七七に似ていた。細部は違う。推進ユニットの配置が微妙にずれている。

 フレームを長く見てきた人間なら一目で分かるだろう。

 でも戦場で一瞬だけ目に入る程度なら問題ない。


 アーンは機体を見上げながら、名前を考えた。


 王様の機体に似せて作った。なら王様らしい名前がいい。王冠。コージの世界の言葉でクラウン。音の響きが気に入った。それだけの理由だった。


「クラウン」


 声に出してみるとしっくりきた。

 コックピットに乗り込み認証を入れると今度は通った。インジケーターが緑になった。


 やっぱり自分は大丈夫だ、という感触がゆっくりと戻ってきた。ルークと七七七はたまたま不調だっただけで、自分に問題があったわけじゃない。そう考えながら、機体の各部を動かして感触を確かめた。七七七に似た動き方が手にすんなりと馴染んだ。


 コージが来るのは分かっている。


 近づいている気配が、要塞全体を通して伝わってくる。どんな顔をして来るだろう。頭の中でその顔を思い浮かべたら、少しだけ楽しくなった。


「クラウンか」


 もう一度だけ転がした。


 王冠。自分には似合う名前だと思った。

 なぜそう思ったのかはわざわざ考えなかった。考える必要を感じなかったから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ