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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
再戦

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291/310

あっちで訓練、こっちは

空を駆けるブルーとピンクの疾風。上になり下になり、前になり後ろになり。つかずはなれずの距離で撃ち合うも互いに紙一重でかわしながら、追いつ追われつを繰り広げている。時折、人型になり格闘するも決定打を繰り出せずすぐさま、飛行形態でのドッグチェイスとなる。先行するブルーの機体を追う形で、空戦を繰り広げる。背後を取られているブルーの機体が不利かというとそうでも無い。後方にも攻撃する手段がある為、気が抜けないのだ。ピンクの機体はブルーの機体上面へ位置付けしようとするが、その度にロールをして取らせない。牽制しながら位置取りを有利にしようとするが、中々うまくいかない。


「しっかし、エドはフレームに乗るのがうまいのぉ。ミミちゃん相手に全然負けてへん」

「あれだけ撃ち合ってて互いにかすりもしていないんですからねぇ。なんというか、比べるとへこみますね」


エドワードとミミの模擬戦を観戦しているイーサルークのライダー達。勿論、ハルト達も同じように観戦していた。飛行フレームという今までに無かった物を操縦するにあたり訓練をしてきたのだが、一つ、いや二つ以上頭が抜けている二人の操縦技術を見てもらって技術の向上を計るというのが目的である。そういった主旨である為二人は最初、無難に戦っていたのだが、エドが楽しくなってきたのかミミに本気で仕掛けていってからは、真似のできない高速戦闘を繰り広げてしまっていた。正直、同じ事ができるとは到底思えない程の動きである。


先の要塞との攻防戦で最前線で常に戦場を駆け巡りながらも無傷だったエドワード。あまり目立たない所で活躍していたようで、ハルト達の目には止まっていなかったのである。光司からは凄いと聞かされていたが、今日の模擬戦が始まるまでは全く信じていなかった。


空の対決は佳境を迎えていた。何を撃っても綺麗にかわすミミの癖をつかんだのかエドワードが仕掛ける。突如、急降下しミミに向けてフレーム用のナイフを撃ちだす。しかしミミはロールしながら降下する事で綺麗に身をかわす。そこへエドワードが閃光弾を放ち、今までの鬱憤を晴らすかのようにミサイルを撃ちまくった。


しかし至近で閃光を食らった筈のミミはまるで見えているかのようにミサイルの雨をかいくぐる。回避した所を狙った射撃もかわし、逆に撃ち返して来る。地表がぐんぐん近づいてくるが、互いに攻撃の手を止めず降下していく。そして地表すれすれで機首を引き上げるエドワード。その一瞬の隙を狙ってミミが一斉に射撃を開始した。


だが、エドワードもそのタイミングが分かっていたようだった。Vの字を描くような急上昇をしてみせのけ即座に離脱してのけたのだ。普通なら機体がバラバラになるかもしれない機動。さらにいえばライダーも意識を飛ばす可能性が高い機動である。しかし、エドワードの無茶な要求をブルーの機体はなんなくこなしてしまった。それを見たミミは無難にUの字を描くようにして太陽に向かって飛ぶエドワードの機体を追撃する。が、そこへ何かがミミの機体をかすめていった。


「はりゃ?」

「ようし! かすったよな? 今、翼をかすっていったよな?」

「…右翼にナイフがかすってった」


どうやら先に撃ちだしたナイフがミミに当たったようである。遅まきながらそれに気付き、がっかりした様子のミミ。当然、それは下で観戦していたハルト達にも見えていた。


「とは言っても、こっちも飛んできた破片で機体が傷だらけなんだよな。という事で俺が一矢報いた所で引き分けだな」

「むぅ、もっかい。もっかいしよっ!」

「待った待った、ちょっと熱くなりすぎだ。今のは参考にならねぇよ」

「あ」


勝負に夢中になりすぎて当初の目的を忘れていたミミ。あくまで参考になるような模擬戦を見せる予定だったのだ。こんな本気な空中戦を見せる予定では無かったのである。


「模擬戦はまた今度って事で。次は空中で格闘戦をやろう。人型のままでやる方法と飛行形態で一気に間合いを詰めて、手前で人型になって格闘を仕掛ける奴の見本だな」

「分かった。次は負けないからねっ」

「じゃあ、行くか」


そして、間合いを離して向かい合う二機。下で観戦しているライダー達は次はどんな機動をするのか一瞬たりとも見逃さないと期待した目で二機を見詰めていた。







シュライト城の地下にあるフレーム格納庫。今日は珍しくストライクホークの姿が見える。普段はアルラ姫の部屋に近い城の専用のバルコニーにて待機しているのだが、整備の為か格納庫で待機していた。そしてその横には光司の機体シャイニングブレス。外れていた両腕はすでに回収し再度取り付けられ修理は万全のようである。


「うーん…金属疲労とかは無いみたいだし歪みも出てないね。さすがはルーツって所かな」

「ずっとこの国を守ってきた機体ですからね。でも、どこも壊れてなくて良かったです」


なにやら器械を持った光司とアルラがストライクホークの検査をしていたようだ。少々の破損であれば時間をかければ自動で修復してくれるルーツとはいえ、かなりの衝撃を食らった後は心配になって当然であった。そしてそんな二人をシャイニングブレスの腕部に腰をかけて眺める白夜。ぷらぷらと足を揺らしながら座っているその姿はどこか不満げであった。


「なぁ、主よ。本当にあの武装は使わないのかー?」

「宇宙に行ったら使えるかもだけど、地上で使う気は無いよー」

「むぅ。宇宙、宇宙かぁ。宇宙で一体何と戦うつもりじゃ主は…」


直接的にも婉曲的にも使わないと宣言された白夜は、不満な表情がありありと浮かんでいた。あの武器で自分もずたぼろになってしまったのだが、その部分は都合よく頭から抜けているようである。白夜に何度注意しても、光司におねだりをするのでアルラは気が気で無いのだが、光司が平気そうな上に白夜を止めようとしないので、ぐっと我慢している。


そこへひょこっと姿をあらわすラウラ。フレームにまったく興味の無いラウラはアルラへの遠慮もあるのかあまりこういった場所に顔を出す事は無かった。そんなラウラが顔を出すということは。


「コージ様、休憩しませんか? おいしいおいしいお菓子用意しましたし」

「あー、うん。じゃあそろそろ休憩しようか。行こう」


くねくねと入り組んだ通路と階段を通り、格納庫から城の上層部にあるアルラ達の居室へと移動する。無駄に回り道をしなければならない為に、これだけでも結構な運動になるのだが、ラウラは疲れた様子も見せずに軽快な足取りで光司の後をついて行った。


「ささ、どうぞどうぞ。コージ様はこちらに座って下さいね」


いそいそと光司をソファへと誘うラウラ。ぐっと近くまで寄るのだが自分から光司に触れる事はないラウラ。光司はラウラにすすめられるがままにソファに腰を掛け、背もたれに身を預ける。その様子は少し行儀の悪い感じなのだが、ここにそれを咎める人間は居なかった。そして手ずから飲み物の用意をするアルラ。ラウラはというとなぜか部屋のカーテンを閉めてうれしそうにしていた。


「午後から兵隊さんの訓練なんだっけ?」

「え、はいっそうですよ。コージも見てくれるんですよね?」


お詫び行脚がひと段落したので、今度はこの国の守り手たる兵隊の訓練に参加する事にした光司。今後もアーンが攻めてくるのであれば、訓練するに越したことは無い。イーサルークに攻めてきた部隊は少数とはいえ、一騎当千のつわものが揃えられており下手なライダーは物の数に入らないからである。とはいえ、一朝一夕に強くなるものではないので今は実力差を感じ取って貰い、せめて本気を出した光司と打ち合えるぐらいまで強くなって貰う予定である。アルラも強いのだが、ここの国民は姫様大好きなだけあって誰も本気で戦えないのである。


「強くなって貰いたいですからね。いつまたあの要塞が来るか不安ですし」

「要塞をやっつけたのにコージは心配性ですね」


なにやら背後でラウラが何かもそもそと動いているが気にしていない光司。以前なら相手にすると喜ぶから気にしていなかったのだが、今はどうやら気を回す余裕が無いようである。笑顔のアルラから温かい飲み物を受け取り、皿に盛られた焼き菓子に口をつける。


「あ、これおいしい…初めて食べるけど、これなんていう…のっ?!」

「あ、見つかっちゃいました」


えへっ、とペロリと舌を出して微笑むラウラ。背後にラウラが居ると分かっていたので振り向いた光司が見たのは、何故か服を脱ぎ捨てているラウラが光司に抱きつこうとしている所であった。


「ちょっ!? なんで脱いでるの?! ていうかアルラさんも見てたなら止めて下さいよ?!」

「え? カーテンは閉めてますから大丈夫ですよ?」

「って、アルラさんもなんで脱ごうとしてるんですかぁああっ!?」


呆気にとられている光司の隙をつくかのようにアルラも早業で服を脱ぎ捨てていた。そうだ白夜、白夜はとわらにもすがる思いで白夜を見るとにこっと笑いながら服を消した。


「殿方は女性の裸が好きと聞きます。僭越ながらこのラウラ、コージ様に元気になって貰いたいのでたっぷり堪能して頂きたいと思います」

「という訳ですコージ。どうでしょう? 私は鍛えすぎで筋肉が結構ついてしまっているのですが、お気に召しませんか?」

「主よ、最近なにやら元気が無いのでいい加減元気を出してくれると嬉しいぞ!」


三者三様のその言葉に脱力する光司。そしておもむろに頭をかきむしり大きなため息をついた。言いたい事は色々あるが中々言葉が見つからないようだったが、急に笑顔になり三人を恥ずかしそうに見つめる光司。なるべく体を見ないように顔だけを見つめている。


「三人ともありがとう。なんか気づかわせちゃったね、元気にしてたつもりなんだけどやっぱり分かっちゃうんだね。その気持ちだけ有難く頂くよ」


体を張って喜ばせようとする三人に心底嬉しそうに感謝を述べる光司。思い返せば光司を一人にしないように必ず誰か傍に居て、色々話しかけてきてくれていた。それでも、やっぱり落ち込んでいる時はあったようで、心配を掛けたのだろう。


「気持ちだけでは最早納得いきません。ここは名実ともにコージ様の奥さんにして頂きます!」

「そうですね、そろそろ良いでしょう。ここは年が上の私から行くのが妥当だと思います」

「これで主も満足いくじゃろう?」

「え、いやあの…正直、気持ちだけで有難いっていうか、そんなに急いでする事も無いと思うっていうか…」


いつまでも落ち込んで心配を掛けててはいけないと、心に誓って気持ちを入れ替える事ができたので、目のやり場に困るので服を着て欲しいと願う光司。気持ちを入れ替えはしたが、事に及べるかどうかはまた別問題である。ぶっちゃけ、野獣の目をしたラウラと冷静なようで手段を選ばなさそうなアルラが怖い。


「問答無用です、コージ様っ!」

「腹をくくりましょう」


綺麗な美少女と美女に据え膳されて嬉しいかと聞かれれば嬉しい。だけど、今は勘弁して欲しかった光司であった。なので、本気で逃げようと心に誓った。


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