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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
再戦

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286/311

一進一退

「強大な魔力が…? 皆さん、要塞近くに凄い魔力を検知しましたっ! たぶん、魔道フレームですっ!」

「なんだって! じゃあこいつらは囮って事かい?!」


こそこそ隠れるのがうまい奴らだねぇと呟いているマリアさん。地声が大きいので呟いているつもりでも、しっかり聞こえます。なんだか楽しそうです。


「竜はディリンさんに任せて、私が行きます。サラどっちの方角?」

「要塞の南南西です。要塞からそんなに離れていません」


リリーが青い機体に逃げられ、追いかけて要塞の方へ向かっていたので一番近いからたぶんリリーが向かうのが一番いいのかな。


「リリーはあたしの替わりにここを抑えな。魔道フレームはあたしが叩く、いいね」

「分かりました師匠」


敵の気配を何か感じ取ったのか、マリアさんが直々に魔道フレーム討伐に向かうようです。現在要塞も攻撃を受けていますが、飛行フレームの攻撃は砲台を破壊するだけで内部にはいまだ取り付けないで居るようです。まぁ、中に入ったら入ったでこちらの飛行フレームがお出迎えするので、そう簡単に落ちる物ではないので安心ですけども。あの自動で動くフレームは中々凄いです。シミュレーターのデータを反映しているとかで、それなりの強さを持っているのですから。アーンさん、変形フレーム作ってくれないかなぁ。と言いますか、何故か私が持っている模型と同じ形のフレームが敵に居るんですよねぇ。なんででしょ?


「ぼさっとしないで、どんどん援護お願いしますよサラさーん」

「はいっ!」


凄く上機嫌で話しかけてくるディリンさん。古代竜の動きを牽制しながら、多数のフレームを相手に一歩も引かないその攻撃力は、見てて凄いの一言です。シミュレーターではあそこまで凄いなんて全く分かりませんでした。


動きを読みその先に弾丸を置く。もしくは誘導した先に本命の弾丸を置く。ディリンさんが教えてくれたコツはそんな事でした。攻撃を当てるのではなく、当たる所へ相手を動かすという事。シミュレーターでもディリンさんはマリアさん相手でも機体が弾丸へ吸い込まれるように、攻撃をしていました。見ていれば何故回避できないか不思議な攻撃なのですが、いざ自分が当事者になると同じように吸い込まれて攻撃を受けてしまうのです。


今だって、ディリンさんは無駄な弾をばら撒いているように見えますが、その実計算しつくされた攻撃になっているのでしょう。いまだに一機も落としていませんが、満遍なく相手に攻撃を当てています。きっと同時に全部落とそうとか考えているに違いありません。その方がスタイリッシュだとか良く言ってましたからね。


ですが、今わざと隙を作ってピンク色の機体に自分を狙わせています。今まで散々訓練してきたので、それが良く分かります。あ、今度は魔道フレームにも攻撃しやすいように動いていますね。一度に二機相手するんですね、しっかり期待に答えましょう。


ピンクの機体は先程も邪魔をしたので警戒しているはずですが、魔道フレームの方は隠れているようなので油断しているでしょう。まずはピンクの機体を威嚇射撃してから、魔道フレームと同じ射線上に誘導してまとめて狙い撃つ事にしましょう。まずは視覚外からのミサイルの雨を先に撃ち、二十ミリ機銃でピンクの機体を狙います。色だけ見ればマリアさんを狙っているみたいですが、マリアさん程殺気に反応しません。


「戦場を広く浅く俯瞰する…」


相手が動ける範囲、速度、攻撃パターン。意識した機体のパターンを瞬時に読み取る。私一人ではそう簡単にできるものではありませんが、ディリンさんもマリアさんもリリーも居ます。きっと今度もできます。


機銃で牽制したピンクの機体は狙い通りに先に撃ち込んでいたミサイル群へと突っ込みました。その間にディリンさんは古代竜へカノン砲とバズーカーを交互に撃ちこみ、しっかりと足止めをしています。あの巨大な竜とあんな間近で戦って楽しそうにできるのは、ディリンさんとマリアさんぐらいでしょう。正直、咆哮を聞いただけで少し漏らしてしまいましたし。


「いまです!」


連射可能な九十ミリカノン砲を間髪居れずに二連射し、ピンクと隠れている魔道フレームを狙い撃ちました。砲弾は狙いたがわずピンクの機体を弾き飛ばし、魔道フレームにも着弾しました。


「良い調子ですよ、サラさん。ですが」

「大丈夫ですっ」


隙のないように人型に変形し、急速に降下し突撃してきた青い機体をやり過ごします。広く浅く周囲を見ていたおかげで狙われている事もはっきりと掴めました。殺気も分かりやすい程向けられていたせいもあったんですけどね。先程、リリーを振り切った筈の青い機体は要塞に突撃するのを諦め先程感知した強大な魔力を出していた魔道フレームの護衛に回っているようでした。距離を離した瞬間に、かなり追尾してくるミサイルを置き土産にしていきこちらの追撃を防いでいるのは流石でした。


「あれっ!?」


機体が勝手に急上昇し、今まで居た戦域から全力で離脱しています。否、自分で無意識に動かしていました。気付けば機体の右半分、右手と右足がばっさりと落とされていました。


「おいおいおいおい、今のはなんだい?! サラッ大丈夫かいっ?」

「は、はいっ! 飛行形態であれば戦闘に支障はありません!」


今しがた離脱した戦域を確認すると、そこには先程の青の機体と色違いのピンクの機体がこちらを向いているのが確認できました。たぶんあれにいつの間にかやられてしまったのでしょう。殺気も何も感じる事無くこちらをやるという事は相当の手錬である事が分かります。マリアさんが凄く喜びそうです。機体の色も被ることですし、嬉々として本気を出すでしょう。


「サラは、一旦要塞に戻って右手と右足を付け直して来て。それまで要塞の援護射撃で持ちこたえます。五分です。五分で戻って来て」

「あぁ、それぐらいなら余裕で持ちこたえてますから、サラさんはしっかり修理して来て下さい」

「ごめんなさい、急いで行って来ます」


リリーとディリンさんがそう言って私を心配してくれる。機体の以上を示す赤いランプはついたままだけど、カノン砲を撃つとなると機体にひずみが出てしまうので、言いつけどおりに全力で要塞に帰還する。コース上には飛行フレームの群れが居るものの、こちらの一斉全力射撃で進路を確保し、要塞からの指示に従い無事に到達する事ができました。後は右手と右足を根元から切り離し、新しい予備パーツをつけてマッチングすればすぐに出れます。皆さん、無事に待ってて下さいね。







「ミミと同じ色のフレームが来るよ。あれがエースライダーなんだよね?」

「そうみたいです。気をつけてくださいミミ、あれはかなり危険な感じがします」


広域殲滅用の呪文の為の魔力を練りながらミミにそう忠告する。一撃で消し飛ばす程の威力を出すためにはかなりの時間が必要な為、ミミとエドワードさんに護衛をして貰っている。当初は内部に進攻するための風穴をあける程度の威力を考えていたのですが、あまりにも要塞からの砲撃が密な為に時間はかかるものの、魔法で一気に殲滅する方向へ変更しました。


「セリナは絶対守るから安心してねぇ」


そんな気軽な様子でミミが姿を消しました。ピンクという派手な色彩の機体なのに、そういった技術はかなりのものです。こちらに気付いた要塞側は砲撃を開始しますが、こちらに届く前にエドワードさんが砲弾を防ぎ、砲台を次々と無効化していきます。あの黒い機体もこちらへと射撃をしてきますが、いかんせん距離がある為にガーディアンが全て防ぎ切ってくれます。


飛行要塞が来たという知らせはすでにコージに連絡してあります。ですが、こちらに到着するまでどうしても一時間はかかるはずです。それまで足止めをしておけば、間違いなくこちらの勝ちなのですがどうせならコージの信用を勝ち取る為にも飛行要塞はコージ抜きで叩き落したいです。本気を出した私がどれだけ強いかはっきり示しておけば、今後はそう易々と浮気をしないでしょうから。


練り上げた魔力が収束し始めてきました。もう少し魔力を注いで練り上げないとあの巨大な飛行要塞を消し去る事はできないでしょう。


「中に人が居るでしょうが、承知の上です。クリムゾンの名は伊達じゃないですから」


感情を静め、あるがままを見て受け入れる。空に浮かぶ飛行要塞は敵。あれを倒さねばこちらがやられるだけ。ならば、迷いを断ち切って倒さないといけない。大きく音を立てて両腕が機体から離れていく。威力を高めるために魔方陣も巨大な物にする為、腕を着脱式にしているのです。ここらへんがフレームの強みという物でしょう。人の腕はこんな簡単にぽんぽん外したりできませんからね。


背面にあるアンプリファーが大きく展開を始め、練り上げた魔力をさらに増幅させる低い駆動音が響き始めました。こうなると動く事はできません。動くとせっかく集めた魔力が霧散してしまいます。先程、要塞に帰還した緑色の機体も再度出撃してきました。ミミにきり飛ばされた部分は元に戻っているところを見ると、この短時間で修理を完了したという事でしょう。こちらがいくらやっつけても要塞がある限り何度でも再生してしまうというのは厄介です。余計に殲滅呪文を完成させる必要ができました。


「セリナちゃん、大丈夫か? 魔力の光がここからでも確認できるんだけど」

「ええ、ここからが本番です。私にはまだ余力がありますが魔力操作に時間が掛かりますので援護の方引き続きよろしくお願いします」

「あぁ、大丈夫だ。任せとけ」


上空で護衛してくれているエドワードさんが、心配してくれているようです。最初出会った時はかなり無愛想な方でしたが、記憶を取り戻してからはかなり愛想の良い方になっていてびっくりしました。誰彼構わず口説いているせいで、女性陣には不評というか仕方ない子という印象を持たれてしまっていますけど、良い人なのは間違いないでしょう。


「負けないもんっ!!!」


ミミの叫ぶような声が響きます。どうやらピンクタイフーンというライダーはかなりの乗り手らしくミミが苦戦しているようです。今ここで援護に回るわけにはいかず、静観するしかない自分が歯がゆくもありますが、魔法を完成させる事がミミを救う事に繋がるのです。自分ができる事を確実にやるだけです。


「その人を倒せばきっとコージは褒めてくれますよミミ。ちゃんと録画しておきますね」

「うんっ! ミミ頑張るっ!」


戦闘記録を取り後でコージに見せれば、きっと喜ぶでしょう。それぐらいなら今の私にもできます。じりじりとしか高まらない魔力を必死に練り上げながら、冷静に周囲の状況を確認する事を怠らない。焦りは禁物と思いながらじっと耐える。ミミは大丈夫だと信じて自分のできる事をしっかりとする事だけを考えて要塞をじっと見つめました。


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