開発チーム篇 第四話『銀の弾丸』
『もし第一人者になれないのなら、私は何事においても第二位にはならない
-サミュエル・コルト-』
ある日、警告音で目が覚めたゼルチュルナーは飛び起きた。
けたたましくなるその音は、ただの異常ではなく何者かの襲撃を意味していた。
「……ッ!」
ゼルチュルナーは服を着替えて急いで治療チームへと走った。
ナイチンゲールとハンターが居て……
「こっちに来るな!」
ハンターがゼルチュルナーの姿を確認すると、動きを止めさせた。
「なっ…なんで…なんでですか…ッ!?」
「いいから……危ないから…下がってろ」
「……あ、あの……ノストラダムス先生は…?」
「……」
ハンターは目の前の相手を見ている。
ゼルチュルナーはその視線を追うように見ていくと二人組が見えた。
「主治医をお探しか?」
3mはあるのだろう、やけに背の高い男性が語りかけてきた。
「黙れ!葬儀屋!」
「アハハ……」
葬儀屋と呼ばれた人物は背負っていた棺桶をコンコンと示した。
「貰ったよ。予言の力と、ペスト医師であった形跡は……さぞ良いもんが作れるだろうって思ってなァ…よく肥えて来たから、貰いに来たんだよ」
ゼルチュルナーは一瞬その意味が分からなかった。
しかしノストラダムスの姿が見えないことと、テロリストの襲撃の音、治療チームの部屋ではいつも確認できる継承者達のバイタルの内ノストラダムスが既にバイタルロストしている事から全て分かりきってしまった。
「ノ…ノストラダムス…先…生……」
ゼルチュルナーは蠍の尾を翻し、葬儀屋に向かって突き刺そうとした。
モルヒネを体内に打ち込めば、副作用の吐き気や眠気を引き出せれば動きを止められる。最悪、もっと入れれば息を止められる。
「ゼルチュルナー!止まれ!」
ゼルチュルナーが尾を突き刺そうとした時、それは弾かれる。
「私をボディーガード扱いしないでもらおうか、葬儀屋」
火炎放射器を持った人間が立っている。
ちょうどその金属部分で弾かれたらしい。
色が正反対の、フロイト先生に見えなくもない
「おー…怖い怖い…ボディーガード扱いにゃ、してなかったけどね…ブラッドベリ…」
「ベリーだ!伸ばせ!」
「変わらんだろ……偽名には……小説家に憧れてるからって名前パクるのよぉ分からんでな」
「こだわりがあるのだ!名を名乗るということは、それほど重大な意味がある!面倒くさがって省略しようというな!怠惰な男が!燃やし殺すぞ!」
「はいはい……ブラッドベリー…久しぶりの故郷はどう?」
「まぁまぁだ」
目の前で呑気に会話する二人を見てゼルチュルナーは初めて怒りに支配されそうになる。
「下がりなさいゼルチュルナー、貴方まで死に至る必要はないんです」
ナイチンゲールはゼルチュルナーを押さえながら、力強くこちら側へと戻した。
その様子を見たブラッドベリーは苛立たしそうに舌打ちをした。
「私だってあぁいう空気吸ってみたかったよ。暗い底暮しで腹が立つね」
「今の生活にご不満?」
「いいや全く」
「アハハ………。じゃ、俺は次行く所があるんだ。失礼するよ……ブラッドベリー、お前は?」
「ここに燃やしたいやつはいない。別の所に行く」
あっそう、と葬儀屋はそのまま棺桶を重そうに背負いながら出ていった。
ブラッドベリーはゼルチュルナーを見ると先程までの怒りが嘘のようにニヤついた。
「フリードリヒ・ゼルチュルナーだって……歴史上でもモルヒネばかりが有名で、全然名前が上がらない裏役者……ハハ…俺お前のこと好きだよ…
前世の死ぬ間際に……救われたものでな…」
ブラッドベリーは威嚇射撃のように三人に向けて火を放つ
「うおっ…!?」
ハンターは二回目に備えて近くにあった消火器を構える。
「やんないよ…行く所があるから……生きたけりゃ外には出ないことだ。そうだな…アンタらの事は嫌いじゃないし、教えてやるけど、今朝の10時だろ?それでだ……午後の4時くらいになら出ていってもいい…それ以降には出ないことだな
死にたくなければ…ね……外にいる奴らは諦めるといいさ…ハハ…」
ブラッドベリーはそういうと、扉から出ていった。
閉められた扉の奥でガタガタという音が鳴る。
ハンターが急いで扉を開けようとすると、何かが突っかかったように開かなくなった。
「チッ…救助活動を打ち切られたか……」
「…仕方ありません。時間まで待ってるしか……」
ナイチンゲールはそういうと、急いで救援物資の在庫を数え始めた。
「そんな……アイツらは、アイツらはなんなんですか…」
「テロリスト。とだけ覚えておきなさいゼルチュルナー」
ナイチンゲールはあくまでも冷静に、数え続けている。
「今までは葬儀屋一人だけでしたが……仲間を連れてきたみたいですね」
「あの怪物…目的以外の殺しはしないはず、でもこの……バイタルロストの数は異常だ。葬儀屋がいないはずのところで何人か出てる…」
「観測チームでも死者が出ましたね。今回は…職員だけではなく、継承者の死も多いと判断した方がいいでしょう」
平然と話し続ける二人に、ゼルチュルナーは混乱が抑えきれなかった。
「なんでそんなに……冷静なんですか…?」
「…ゼルチュルナー」
「落ち着きなさい。ゼルチュルナー」
ナイチンゲールが物資を数えるのを中断し、ゼルチュルナーの方にヅカヅカと歩くと目と鼻の先まで顔を近付ける。
「…仕事と、私事の感情は分けなさい。たとえ悔しくとも、今はそれを表に出さず、やるべき事のみを成しなさい」
「や、やるべき事…って言ったって……」
ナイチンゲールは手の甲で蠍の尾を叩いた。
「これがあるでしょう?…私達が解放を許される午後4時までの間に、貴方は薬品の投与の準備をしてください。恐らく戦闘しているはずの方々もかなりの重傷を負っている可能性が高いですから、貴方のその鎮痛は助けになります」
ゼルチュルナーは自分の尾を動かし、針の先を見た。
「……」
そしてやっと、まともにナイチンゲールの目を見た。
厳しさの奥に悲しみが見えた気がした。
(ナイチンゲールさんも辛いんだ……表に出さないだけで…)
ゼルチュルナーはそう思うと目をゴシゴシと袖で拭き、やるべき事をなすために薬品庫に向かった。
「フロイト先生…出歩いてていいんですか?」
「良くは無いな」
「だったら、なんでわざわざ危険な外を歩くんです…!」
心療チームの三人は死体で塗れた廊下を歩いていた。
「ハァ…いいか?聞け、上層部のバカがな。この異常事態に対処する為に完成者を作ろうとしている。
それもフィンセント・ファン・ゴッホの、だ
処刑チームのニーチェにテオドルスを殺させ、それを兄のゴッホに見せつける……それで適合率を意図的に溢れさせる魂胆だ」
フロイトは歩みを進める。
「それだけは止めないといけない。完成者がこれ以上増えては世界が持たない」
ユングは恐る恐るとフロイトについていった。
「だからと言って…こんな中を歩くなんて…」
「敵は葬儀屋たった一人だろう?」
「…その、葬儀屋一人で出せる死者数なんですか?これは…」
アドラーは周りの死体を見ながら言った。
「……言われてみれば、おかしいかもな。あいつは一定ルートを歩いて死体安置所まで行く。ここまで犠牲者を出すのは初めて見る」
「じゃあやっぱり仲間がいるんじゃないですか…フーコーさんも放送を一時中断したっきり、なんの音沙汰もないじゃないですか」
「……!止まれ」
フロイトは二人の前に腕を出した。それを合図に二人は止まった。
「……言った通りだな。仲間がいたらしい」
三人の目先には、死体をバラバラにしながら皮と肉を裏返し、剥き出しにした骨に臓器を突き刺して飾る男がいた。
唸りながら、他の職員の死体から皮を星型に切り取ると、べちゃと臓器に貼り付けた。
「……誰だ、お前」
フロイトはコルトから受け取っていた拳銃を構える。
男はその問いかけに気がつくと、工作をやめた。
「芸術家だ」
「悪趣味だな……それでだ。お前は素直にこの道を通してくれるか?」
「………」
男はしばらく考える素振りをすると、嫌だと言った。
「何故だ?」
「継承者も材料に使えば…いい作品が生まれるかもしれないと今思った。あの人もこれほど珍しい材料にはびっくりするだろう…!?」
「…お前の想い人のことなどどうでもいい。なら仕方ない」
フロイトは躊躇なく六発全てをその男に撃ったが、男はすぐに近くの死体を盾に使った。
「チッ……」
「無機物を加えるのも、良いなぁ…」
「ユング、アドラー、銃は?」
「あります」
「隙を見て撃てるか…?」
首を傾げながら、ユングとアドラーは銃を構えた。
男は呑気に、作品の構造について考えているようだ。
その手に死体を握りながら
「お、危ない。こんなの心のお医者さんが持ってちゃ、ダメだろ」
三人の後ろから現れた葬儀屋は、果実を採るように二人から拳銃を奪った。
すぐさま遠くに捨てると、そのまま三人を通過して男の横に立つ。
「ヘリアンサス……何喋ってたわけ?」
「………私は無名の芸術家で、行きたかったな」
「うっさいわ……、この道通さないって話してた。通す代わりにあの三人のうち一人が欲しいって私は言った。」
それを聞くと葬儀屋は笑いだした。
「しょーもねぇ会話!」
「うるさい」
フロイトは拳銃を撃ちきったことを後悔していた。
目の前の怪物たちに対する対抗手段がない。
「…で?誰が欲しいの?」
葬儀屋の問いかけに、ヘリアンサスはしばらく考えるとアドラーを指さした。
「子供を材料にするのはもう飽きた。男は肉が硬い。やるなら女だ」
「ッお前ら…!さっきから調子に乗りやがって…!」
ユングが掴みかかろうとするのを、フロイトが止める。
「アドラー…」
フロイトはアドラーの方を見る。アドラーはフロイトに対し、笑顔で答えた。
「いいですよ。先生」
「…は!?何言ってんだよ…!アドラー!」
「ここで足止めを食らっている場合でもありません。でしょう?今すぐにでもニーチェがテオドルスさんを殺しているかもしれません。善は急げです」
ユングはフロイトを強引に振り切り、アドラーの胸ぐらを掴んだ。
「何考えてんだよテメェ!!自己犠牲が尊いとでも思ってんのか!?テオドルスなんかどーだっていい!他のチームの奴らのことなんてどうでも…!」
アドラーはユングの頬を思い切り叩いた。
「…!」
「ユング…それでも、完成者が生まれるのだけは避けなければならないんですよ……そうですよね?フロイト先生」
「ふん…」
フロイトはわざと二人の顔を見ないようにした。
「ッ…なら、こいつらを…こいつらを殺せば…」
「できんの?」
葬儀屋は煙草を吸い始めている。
煙を吐き出しながらケラケラと笑う。
「二人は戦意喪失済みだ。ユング……お前一人でどうこうできんのか?いいぜ?俺は…新しく加工品を追加しても…お前は想定外だったけどよ」
「は…」
フロイトはユングの首根っこを掴むと、わざと尻もちをつかせて床に伏せさせた。
「…三人とも、戦意喪失だ」
「賢いな、老害…」
アドラーは二人を見ながら、ヘリアンサスの前に立つ
「どうぞ。芸術家さん」
「どうも……これは関係ない質問だ。最期に聞くけど、お前は不老になりたい?美しいまま、その姿を保ちたいとかある?」
「思い出は、その時その時だけに留めておくに限りますよ
起きるべくして起きる変化も、また思い出です」
「…そっか」
芸術家の男は剣を使い、アドラーの首を断ち切った。
「苦しみは無くしておいたよ…これの方がお互い、イーブンだろ」
葬儀屋はそれを見届けると、フロイトとユングを摘み、治安維持チームの区画の方に放り投げた。
「じゃあな、もう二度と会えないといいね」
葬儀屋は二人が起き上がるのを見届けながら、廊下の扉を閉めた。
「…フロイト先生………」
「…行くぞ。」
「フロイト先生…!なぜ彼らに権能を使わなかったんです!」
ユングはフロイトに掴みかかった。
フロイトは煩わしそうにその手を見ている。
「無理だ。心が既に捻じ曲がっている彼らに、私達の力が及ぶと思うか?私達の……声が届くとでも…?」
「っ……」
ユングはそっと、手を離した。
「アレらはね、ユング……盲目の自由を手にしたんだ。狂気に至らしめる代わりに、何者にも縛られない自由を得ているんだ……
……もうどうでもいい、私達が食い止めるべきはゴッホの完成者だ。行くぞ」
フロイトは治安維持チームに歩みを進める。
ユングも、それについて行った。
時刻は午後2時を指していた。
葬儀屋達の襲撃がありながらも、各々安全のためにそれぞれのチームに居た。
開発チームの四人は部屋にいながらも、自分達の開発した武器があの怪物達に聞くかどうかの話をしていた。
その話の間際、コルトがソワソワとし続けていた。
「コルト、どうした?ガールフレンドのモールスでも心配?」
ノーベルが緊張がほぐれるようにとからかうように発言すると、コルトは違うと首を横に振った。
「コルトのおまじないの銃がありません……警告音でびっくりして、お部屋に置いてきてしまいました」
「……取りに行きたい?」
「いや、そんなわがままは言いませんけど、無いとずっと不安に駆られます」
「うーん…こういう時の勘は大切にって、俺も思うけどねぇ〜」
パラケルススはその様子を見ながら平和ボケしやがってと言いながら、自分自身も落ち着く為に紅茶を飲んだ。
パラケルススは端末を見ながら、ノストラダムスのロストをずっと気にしていた。
「ライバルが居なくなって、明日から寂しくなりますね」
「……」
横槍を入れに来たテスラの声を、パラケルススは無視をした。
「気、気まず〜」
ダ・ヴィンチはその様子を見ながらルービックキューブの色をすぐに揃えていた。
「まさかダ・ヴィンチさんが遊びに来た途端にこんな事起きるなんて思いませんでしたね。テスラもびっくり」
「ホントだよ〜トホホ〜。せっかく作りたいものあったのにこれじゃあ工房にも行けないからね」
「何作ろうとしたんです?」
「研磨剤…大理石用の」
襲撃の合間でもなんの変哲もない会話を、なんてことのない日常を過ごそうとしていた時に、扉が強く叩かれる音がした。
「……」
無事を確認する為のノック音でもないそれは、強く、扉をひしゃげさせるようなものだ。
コンコンとした音が、やがて中の鍵を破壊するほどの衝撃で壊れた音に変わると、扉を蹴破ってお辞儀をするように葬儀屋が入ってきた。
「おー……メンバー変わってんな……あ?別チームのやついんじゃん」
葬儀屋は五人をジロジロと見て、目的の人物を見つけたのかニンマリとした。
「…コルトに何か用ですか?」
ノーベルがコルトの前に立った。
「んー、まず俺の事分かる?なんなのか」
「…他の方に名前と概要だけなら……継承者の死体を武器に加工するテロリストだと」
「正解。だからここに来た意味わかるな?」
「私を武器にしたいんですか?」
コルトが声を震わせながら言うと、葬儀屋は頷いた。
「どうしてもコルトじゃないとダメか?私じゃダメか?」
ノーベルは葬儀屋にも臆せずに前に出る。
「ノーベルはダメ。爆弾はもう事足りてる」
「……」
「俺が欲しいのは銃なんだよ。分かる?」
「どうしても銃じゃないとダメか」
パラケルススが他の可能性も無いかと確認をとるが、それでも葬儀屋は銃がいいと言った。
「…神は人間を創ったが、サミュエル・コルトは彼らを平等にした……良い言葉じゃんねぇ?コルト」
葬儀屋はコルトを見つめた。どうしても欲しいらしい。
「万能の僕じゃダメなの?僕ってばかなり凄い偉人だけど?」
ダ・ヴィンチは親指を立てながら自分を指さした。
「いんや、ダメだね」
コルトは他の人達への危害を加えられる事と、自分一人の犠牲をひとつ、天秤にかけた。
「良いですよ。コルトを持ってってください」
コルトは声を震わせながらも、ノーベルを押しのけて葬儀屋のもとへと行った。
「コルト!」
ノーベルが来ようとするのをコルトは必死に止めた。
「いいんです…いいんです…!コルトが、コルトの犠牲だけで終わるなら…それで…!……葬儀屋さん…コルト一人だけで、終わりにしてくれませんか?」
「うん?……ん〜…いいよ」
葬儀屋はコルトの頬に手を当てると、その震えた唇に親指を添える。
「いいよ。健気なコルトちゃんの為に、お前でおしまいにしてやる。他の奴らにも呼びかけて、予定より早く終わらせてあげるよ」
「よ、良かっ……」
コルトは目に涙を溜めながら、一つハッとする。
「ま、待って…待ってください最後に1個だけ…!」
「…いいよ」
葬儀屋はコルトから手を離す。
「あ、あのっ…コルトの…おまじないの…リ、リボルバー…!コルトがいっつも持ってましたが、今日はお部屋に置いてきたんです…!」
コルトは必死にほかの三人に語りかける。声は殆ど出てきてない。
「だから…っ……それ…それ…モ、モー…ルスに…!渡して、渡してください…ッ!おまじないだから…!無事に居られる、おま、おまじない…だからァ………それで今まで…いけ、いけて…たのに……あんなに皆にも、いっ…てたのに…っ…」
コルトは目からボロボロと涙を流している。
死にたくないのか足を震わせてはいるものの、嗚咽混じりでもしっかりと、己の意志を伝えようとしている。
葬儀屋はその様子を静かに見ている。
「コルトが……それ…ッ!忘れちゃ…ったからっ…こんな、悪いこと起きちゃ…ったんでず…っ!だから…それっ…それを……」
「分かった。分かったよ。コルト、絶対にモールスに届ける」
ノーベルはしっかりとコルトの目を見て答えた。
「あっ…ありがとう……」
葬儀屋は静かに拍手をした。
コルトは涙を拭い、葬儀屋の方を見た。
「良いですよ。連れてってください………」
「うん、分かったよ。本当、不運だったな
俺みたいな厄災に出会っちまってなぁ……」
葬儀屋はその大きな手でコルトの首を摘むように持つと、ゴキッと嫌な音を立てさせた。
「…ッ!」
ノーベルはその様子を見て崩れ落ちそうになるのをパラケルススが支える。
「……じゃあ、これでおしまいだ」
葬儀屋はコルトを担いで開発チームから出ていった。
「おい、撤収だ。ブラッドベリー、ヘリアンサス、何獲物を取合いっこしてんだ」
葬儀屋はコルトを棺桶に入れながら、廊下で喧嘩していた二人を止めた。
「もう終わり?私は午後4時に終わると言ったんだが」
「終わりだ。健気な嬢ちゃんに俺はそう誓ったんだ…もうおしまいってな」
「お前が言われたろうが、こっちは知らん。もう少しで良い芸術が完成する!」
ヘリアンサスはアドラーのその心臓を、背骨のてっぺんに飾ろうとしていた。
どうやらその周りに使う為の新鮮な人間の素材を、ブラッドベリーが焼こうとした為に怒っていたらしい
「いーから、早く、しろ」
「アンタレスは?」
「あいつ先に帰った。俺はパノプティコンに置いといたヤツ回収してくるからちょい遅れるわ、とっとと出るぞ」
ヘリアンサスとブラッドベリーはお互いを見合わせると、葬儀屋の指示に従い出ていった。
午後4時になると、治療チームのメンバーは急いで治療活動を開始した。
トリアージを行ったが、殆ど黒だった。




