配信#40-3 山の中で四期生のみんなとお料理配信だよっ!:3
「うん、ポトフの方はもういいかな。それじゃあ、先にこっちを食べよっか。ピザはまだ焼けないからね。というわけで……はい、どうぞ!」
そう言いながら、僕は持ってきた……わけじゃなくて、どういうわけか、お姉ちゃんが作った器に四人分のポトフをよそって渡す。
「お、美味しそうですわッ……! もう、この見た目だけで胸いっぱいになりますのっ! あ、ちょっと涙が……」
「これがぽとふ、ですか。ふむ、多くの野菜が入っており、とても体によさそうですね。香りも優しく、いくらでも食べられそうです」
「おぉ~~! やっぱり、みたまちゃんの料理はいいですねぇ! 何度か既に食べてるけど、何度見てもいいもんですよ!」
「そう言えば、ポトフは食べたことなかったな……シチューならあるが」
「そういえばそうかも? まあ、スープ系はあんまり持っていくのに不向きだからね」
「まあ、そうだな」
【めっちゃ美味しそうww】
【ポトフってなんかこう、家庭的な感じがするよな……すごく好きです】
【うわー、マジでめっちゃええポトフやん……】
【感動し過ぎやろ、お嬢ww】
【なんで食ってないのにもう泣いてんだよww】
【めいちゃん、本当に知らんのかいw】
【外国の料理って言えばいいのに、なぜか異国って言うんだよなぁ、めいちゃん。っていうか、言い方が全体的にこう、古いって言うか、古風って言うか……いやまあ、現代でも十分通じるし、おらんわけじゃない言葉遣いだけども】
【いなりママも何度か食べてるしなー。本格的にデビューする前から普通にコラボってたし。らいばーほーむと】
【既に入るのが決まっていた時期にしれっと先輩方と普通にコラボしてた上に、飯食ってた幼女(20歳)だ。面構えが違う】
【ってか、司くんちゃんのくちから、しれっとシチューなら食べてる発言が出たな……】
【前々から知り合いって言うのは既に周知されてたけど、これ結構仲いいな?】
【知り合いなのはどうでもいいけど、しょっちゅう食べてるんだとしたらクッソ羨ましいんだが???】
【リアル友人だったら、友人だからこその特権だよなぁ……だが、なぜこいつは死なないのか】
【完全耐性持ちはやべぇんだよ】
「ともあれ、あったかいうちに食べて食べて! ピザの方もすぐに焼き上げちゃうので! さ、召し上がれ!」
「「「「いただきます!」」」」
「あぁっ、これが夢にまで見た、みたま様の手料理……! とりあえず、まずは一滴……」
「スープを一滴ずつ食べる人とか聞いたことないんだが!? っていうか、本当にやってやがる!? 器用だな!?」
「あぁぁっ! し、沁みますわぁ~~~~~~~~~~~~~! みたま様お手製のポトフがわたくしの体に染み込んでいきますの! もう死んでもいい……」
「たったの一滴で!?」
司君がツッコミしてる……!
なんていうか、いつも通りと言うか……うん、学園と同じ感じだなぁ……。
あと、一滴ずつ食べられるんだ、かざりおねぇたま……。
「司さんはみたま様の手料理を何度も食べているから冷静でいられるのですわ! わたくしは初ですのよ!? であればっ、一滴一滴、大事に食べねば不作法というものですわ! そして、美味しいですわ!」
「どんだけガチ勢なんだ!? って言うかその意気はもう、完全にみたまを神格化してないか!?」
「みたま様は現人神であり、唯一神ですわ! ちなみに、わたくしの実家の御祭神はみたま様ですわ! すでに、神像は祀られております!」
「まさかの家族ぐるみ!?」
「なんで僕の神像があるの!?」
僕、別に神様じゃないよ!?
設定上はたしかに神様見習いではあるけど……でも、神様じゃないから!
【草ァ!】
【心臓???】
【心臓があるのは怖いわ】
【心臓じゃなくて、神像な。簡単に言えば、信仰対象を象った像とか絵のことだな】
【なんであるのか】
【っていうか、家族で信仰してるのはヤバすぎるやろww】
【まあ、みたまちゃんはほら、神様だからね。一人前の神様になるために人間界に降りて来たって設定だから】
【実際、本当にみたまちゃんを信仰対象とする宗教があるからなぁ……】
【まあほら、日本では信仰の対象は自由だから……】
【っていうか、現人神と唯一神って同居できるんだろうか】
「って、お姉ちゃんのポトフだよ! これ食べて!」
『ありがとうみたまちゃん! このポトフがあれば、私はさらに限界を超えられるゥゥゥゥ! 全力で畑拡張するね! あ、育ててほしい物があったら言ってねぇ! ヒャッハァァァァァ! みたまちゃんのポトフは最高だぜぇぇぇぇぇぇ☆』
「そ、そっか。あとお姉ちゃん、すごく文字を書くのが速い……っていうか、一瞬でそれ全部書いたんだ……」
「ひかりさんは才能お化けだからな……」
「まあ、そうですねぇ。っていうか、ザッ! みたいな効果音で書いてそうなのに、すんごい文字が綺麗なの、やばくねぇですか? うち、あれ無理ですが? サインとか、さらさら~、って書くけど、あれもうなんか違くねぇです?」
【一体何が書かれていたんだ、邪神のカンペ】
【まあ、みたまちゃんのポトフが食べられてテンションMAXになってそうなのはわかる。邪神だし】
【っていうか、さっきからザザザザザッッ! みたいな音が聞こえるんだが、これ何の音よ?】
【自然音……にしてはなんか違うような……?】
【気にしない方がいい気がするので、私はここは気にしない! それよりも、みたまちゃんのポトフ美味しそう! 食べたい!】
「あ、めいおねぇたま、ポトフは美味しい?」
「至高でございます。私の長い長い神生において、最も良き味と言ってよいでしょう。それと、やはり大地の恵みが多く使われ、そしてとても美味、と言う点が素晴らしいかと。自然と涙が流れます」
「本当に泣いてるよ!? 大丈夫!? というより、泣くほど美味しかったの!?」
めいおねぇたまはすごく優しい微笑みを浮かべながら、ツー……と涙を流していました。
美味しいって言ってくれはしたけど、泣くほどなの!?
「はい。仮にもし、今後、ぽとふを食べるような事態に直面した場合であっても、みたま様のこのぽとふこそが至高のぽとふと断言できましょう」
「プロの人が作る方が美味しいと思うよ!?」
「いえ、みたま様の手料理こそ至高です。いいですか、みたま様」
「え、あ、はい」
「たしかに、本職の方々のものが美味である、と言う点は事実でしょう。しかし……それは日常としてではなく、非日常としてのものとなります。非日常で食すものは、時折食するから美味と感じるのです。何度も食せば感動は薄れてしまうでしょう。しかし、手料理とは、日常の中にある物。何度食しても美味、と思えることこそが大事なのです。つまり……みたま様の手料理こそがこの世における至高の料理であり、味と言うわけです」
「「めっちゃわかる」」
「なんで!?」
しみじみと頷くかざりおねぇたまといなりおかぁたまに、僕は思わず声を上げながら二人の方に視線を向ける。
司君はちょっと苦い顔を浮かべていました。
【草】
【草】
【どんだけだよww】
【でもまあ、言いたいことはわかるわ。高級なお店に行って食べればそりゃ美味いだろうけど、毎日食ったら最初の感動はないだろうし、何よりレパートリーの問題も出るしね……】
【たしかに、手料理が美味しい方が幸せだわ】
【外食ってたまに行くからいいわけだからなぁ……いやまあ、牛丼チェーンとかは良く行くけど】
【サ○ゼはいいぞぉ……】
「何はともあれ、とても美味です」
「そ、そっか。それならよかったです。あ、いなりおかぁたまと司君は味は大丈夫?」
「うん、めっちゃうめぇですよ! いやー、やっぱりみたまちゃんの料理はいいねぇ! うち、マジ大好き! あ、おかわりもらっても?」
「え、もう!?」
「美味しかったのでつい」
「おかわりもいいんですの!?」
「もちろん! たっくさん作ってあるから! さすがに、この後に来る他の人たちの分まで食べられちゃうのは困るけど、少なくとも普通に食べる分には大丈夫だよ!」
寸胴鍋で作ってあるし、この場にいる人数で考えても、問題はない量作ってあるけどね。
……大丈夫だよね?
「ならおかわりぃ!」
「くっ、一滴ずつ食べてしまっては冷めてしまいますわ……! いえ、冷めても美味しいのは、当然のことではありますが!」
「あの、ゆっくりでいいからね? いっぱいあるからね? それに、かざりおねぇたまは三日も断食したんだから、急いで食べると胃腸がびっくりしちゃうから、なるべくゆっくりにね?」
「そうですわね! やはり、ゆっくりじっくり味わうのが正義ですわ! さすがみたま様!」
「何も特別なことは言ってないよ!?」
「……諦めろ、みたま。みたまに助けられたことで、完全にみたまを神として見ているんだ。あれだ。みたまが言った言葉が自分の意志よりも最優先される、そんな思考回路なんだ」
「すごく心配になる考え方だよそれ!?」
【草】
【草】
【草】
【司くんちゃん、めっさ疲れとるw】
【まあ、既に何度か相手してるからね、配信で】
【お嬢って、なんかこう、狂信者っぽいからなぁ……】
【四期生は基本みたまちゃんガチ勢だからね、仕方ないね】
「いえ、みたま様の言葉は、いわば啓示ですもの! みたま教の信者として当然ですわ!」
『よく言ったかざりちゃん! それでこそ信者だね! 素晴らしい信徒を持てて、私は幸福だよ☆』
「恐縮ですわ!」
「いやひかりさん、カンペで会話に参加するくらいなら普通に会話に参加してくれません!? って言うか、カンペの文字を見せるためにだけに縮地で戻って来んでくださいよ!? いやそれよりも、さっきから畑を耕す音がこっちに聴こえまくってるんですよ! 速すぎて、なんかノイズみたいな音が入ってますからね!?」
【邪神ェ……】
【なんで縮地!?】
【え、縮地できんの!? あの邪神!? うっそやろ!?】
【あれって伝説の挙動じゃないのか……】
【つーか、さっきからなってた謎の音、邪神が畑耕す音かよ!?】
【明らかに人力で出せる音じゃなくて草】
【まあ、邪神は人間でありながら邪神と呼ばれる人間だから……いやほんとに人間?】
【一人で村作っておいて、あれで人間を名乗るのは無理あるやろ】
【邪神は人外、はっきりわかんだね】
『いやほら、私はあくまでもカメラマンじゃん? 私が入ったらまずいでしょー。元々、このコラボに参加する予定なかったんだし? まあ、私は畑耕して、軽く狩猟して来るのでね!』
「だから縮地式カンペ会話はやめません!? あと、何しれっと狩猟に行こうとしてんですか!」
「お姉ちゃん、さすがに危ないことはしないでね!?」
狩猟は怖いよ!? 色々と!
「大丈夫大丈夫。ちょっと私の畑こと、みたまちゃん畑を狙うイノシシを仕留めに行くだけだから! あ、ちなみに私はまだ猟銃免許持ってないので、素手での狩りだね!」
「いきなり声出しして言う事じゃないんですが!? あと、普通の人は素手で野生の動物を仕留められないんですよ! しかも、VTuberがすることじゃないし!」
【えぇぇぇぇ……】
【イノシシ仕留めようとしてる女性Vがいるってマジですか?】
【絶対人じゃないだろこいつ】
【猟銃免許を持ってないことを言った際に、まだ、と枕詞が付いたせいで、こいつ取りに行こうとしてんだなって思ったわ】
【こわ……】
【っていうかイノシシ出んの!? やばくねぇ!?】
【でもまあ、邪神がいるからな……】
【奴がいる場所に突撃かまそうものなら、それはただの自殺志願者なんだ】
【アーメン】
『じゃ、ピザが焼ける頃に私は戻って来るぜ☆』
お姉ちゃんはそんな文字が書かれたカンペを見せた後、すごい勢いで森の中へ入っていきました。
お姉ちゃん、自由だなぁ……。
「行ってしまいましたわね」
「ひかり様であれば問題はないでしょう。野生の獣に後れを取ることはありませんから」
「ですねぇ。……いやまー、素手でイノシシ狩れるって何? って思わねぇことはねぇですが」
「マジであの人なんなんだろうか……」
「あ、あははは……」
【俺たちが一番知りたいわー】
【リアルで顔を見合わせて話してる人らが理解してないのに、配信越しでしか知らない俺たちが理解できるわけないんだよなぁ……】
【邪神はヤバいからね、うん。いやほんとにやべぇよ】
【どこの世界に狩りをするVがいるというのか……】
ポトフ食べただけで一話が終わった。
話が進まねぇ! っていうか、作中時間、まだ2月中旬ってマ???
一年最も短い年のはずなのになぁ……。




