閑話#55 邪神の開拓日記(笑)
時は少し遡り。
「ん~、やっぱりちょぉ~~っと殺風景だよねぇ」
目の前の光景を見て、邪神こと、桜木愛菜がタンクトップにスパッツという姿で、腕くみしながらそう零した。
現在愛菜がいるのは、自身の修行用として購入した山の中腹にある開けた場所。
どういうわけか、この場所は平らであり、丁度いい修行スポットだったこともあり、愛菜はここでトレーニングをしていたである。
「基本的に私しかここは使わないし、柊君はもう卒業したから、誰かに見せる、ってわけでもないんだけど、ちょっとやり過ぎで荒れて来ちゃったんだよね」
そう言う愛菜の目の前には、砕けた岩や、根本よりやや上の辺りからへし折れた木がある。
これらは、愛菜が普段から自身に課している修行によって出た被害……というより、その修業が原因で破壊された物である。
とはいえ、本格的に鍛える場所はここではなく、少し離れた場所だ。
そこにもありとあらゆる残骸があるが……。
「今はいいけど、将来的に椎菜ちゃんを呼ぶかもしれないしなぁ。うぅむ、今の内にこう、開拓をした方がいい気がする」
などと零す人間(?)。
この時点では、既にVTuberとして活動をしているのだが、まだまだ駆け出しもいい所である。
まあ、その様なことは今はどうでもいいとして、だ。
愛菜は現在進行形で、目の前に広がる殺風景な場所をどうしようかと考えていた。
将来的に、椎菜を呼びたい、と言うのが愛菜の考えだ。
というのも、この山は色々と立地も良く、そして豊富な食材も手に入る。
川にはイワナなどがいるし、山菜もある、それ以外にも竹林が一部にあるため、タケノコも採り放題。
そして、椎菜は料理好きだ。
豊富な食材+椎菜=とても喜ぶ
というのは、愛菜からすれば物が落下することと同じレベルで真理なのだ。
「となると、ここをこう、自給自足出来るような形にしたいところ……。基準は私ではなく、椎菜ちゃんの基準。つまり……美味しい食材がいつでも採れ、そして食べられる場所ということ……!」
色々と考えた末、愛菜はここを自給自足できるような場所に開拓しよう決心した。
かくして、愛菜の山改造計画が始まる。
◇
まず最初に愛菜が始めたのは、畑作り……ではなく、水源の確保だ。
この山の中には川があるのだが、場所がこの開けた場所から少し離れた所にあるため、少々手間だと考えた愛菜は、川を造ることにした。
結果はと言えば……
「よし、川完成ッ! いやぁ、手堀だと結構きついものがあるね! だが、椎菜ちゃんへの愛がある私からすれば、この程度造作もない! ……まあ、規模的にはそんなでもないし、ちょっとした渓流みたいなものだけど。……いやこれ、渓流って言えるのかな? ん~~~……まあいいや」
普通に完成させていた。
一瞬、山の中とは言え、開けた場所にある川は、果たして渓流と言えるのだろうかと悩んだが、すぐに気にする必要はないと判断。
実際どうでもいいことなので。
「ん~、川はこんな感じでいいとして、次は畑、と。何を作ろうかなぁ。椎菜ちゃんは野菜が好きだし、割と何でも喜んでくれそう。トマトは苦手だけど、加工すれば問題ないし……うん、とりあえず、簡単そうなところから行こう」
次に、愛菜は畑を作った。
地面を耕し、柵を作って囲い、種を植え、一年が経つ頃には……。
「豊作ゥ!」
見事に豊作だった。
目の前には立派に生っている野菜がたくさんあり、愛菜はそれを見て満足そうに頷く。
デザイナーの仕事をして、同人作家としても活動し、そしてVTuberとしての配信も行う、まさに三足の草鞋状態であるにもかかわらず、この超人は見事な畑を完成させていた。
開拓がはじまってから一年でこの結果である。
やりすぎだ。
「うんうん、やっぱり自分が汗水たらして作った物が見事に実る光景を見るのは気持ちがいいねぇ! そして味は……うん、美味しい! いやぁ、初めてでこの味はなかなかにいいね! 個人的には、もう少し味を良くしたいところだけど……まあ、最初はこんなもんかな。あとは……肥料を変えてみるとか? ん~……ま、いいや。次は田んぼ作りかな」
とか言い始めた。
愛菜は畑を作っただけに留まらず、今度は田んぼを作ろうとしていた。
何をどうしたら、田んぼを作ろうと言う発想になるのか、これがわからない。
愛菜は再び頑張った。
◇
「よし、ツリーハウスとログハウスを作ろう」
それからさらに一年以上が経過。
気が付けば、愛菜の弟が妹になり、そして自分が所属する事務所に三期生として入って来た。
それから、椎菜……というより、神薙みたまは凄まじい快進撃を見せた。
デビューしてから半年も経たない内に、登録者数が200万人を突破すると言う偉業をの成し遂げていたのだ。
邪神は狂喜乱舞したし、常日頃から布教しまくり、さらにはみたま警察、そしてみたま教の設立者として、妹への害そうとする者には容赦なく、静かに、そして決して日の目を浴びることなく、叩き潰すのだ。
具体的にはネット世界からの退場である。
中には改心という名の入信を行い、信者になった者もいたりするが……まあ、今の神勢が幸せそうなので問題はないだろう。
そしてある日、みたまが豚骨ラーメンを作ってみたいと言った。
それはなんてことない、普通のみたまの願望だった。
家の中で作れば、においが充満してしまうし、庭で作れば、近隣の方々への迷惑が掛かってしまう。
なので、今は作れないのが残念、という方向で話は落ち着いたかに見えたのだが……邪神がツリーハウスとログハウスを作ると言い出した。
そして今、邪神はそれらを建築しようとしていた。
「とりあえず、まずはログハウスとツリーハウスが先。ツリーハウスは中央のあの巨木を活用して、ログハウスは……まあ、木材を調達して、それを用いて建築かな」
などと言いながら、軽く図面を作成し、流れるように邪神は建築を開始。
こいつだけ、サンドボックス系のゲームをやってるようなノリだが、邪神なので致し方ない。致し方ないのである。
ツッコんだら負けである。
そうして建築を始めた元日、椎菜からのプールへのお誘いを受け、邪神は限界突破した。
建築は始まったばかりであるにも関わらず、謎の限界突破である。
お前は絶対人間じゃない。
限界突破した邪神は止まらなかった。
まず、家に帰るのを止めた。
泊りがけで作ることにしたのである。
もっとも、不眠不休で動いたのだが……。
何が酷いって、この邪神、1月1日~1月5日まで一切眠っていないことである。
最早人ではない。
だが、人体構造はちゃんと人間なのはバグではなかろうか。
「んっ、んん~~~~~っ! ふぅ……こう、建築ばかりしてると、変に体がなまっちゃうなぁ……ん~……たしか、このエリアから少し離れた場所に、大きな岩があったっけ……よし、それ砕きに行こう」
こいつは一体何を言っているのだろうか。
何はともあれ、邪神は行動を開始。
少し離れた場所である、謎に大きな岩を砕くべく移動し……
「ふぅ……今の私がなまっていなければ、この岩を砕くことなど容易なりぃ! ッシャオラァァァァァ!!」
明らかに、23歳の女性がおおよそ出すことはないであろう、気迫が凄まじいことになっている叫びと共に、邪神は跳躍。
そのままくるくると縦に高速回転し、凄まじいかかと落としの一撃を大岩の天辺に叩き込んだ。
すると、びしりっ! という音と共に、岩が縦に割れて行き……
ドォォォォォォ!!!
と、大岩があった場所から水……温泉があふれ出した。
「って、なんか出た!?」
さすがの邪神も、まさかの事態に驚きの声を上げる。
軽やかに地面に着地するなり、およそ五メートルほどのバックステップを二回ほど行って、噴き上がる温泉から離れた。
ナチュラルに人間を辞めた動きをしているぞ、このアホ。
「これは……温泉っぽい? においもそうだし、何よりここにいるだけで熱気というか、温かさを感じるし。と言うかこの山、温泉あったんだ」
腕を組みながら、今も尚噴き出し続ける温泉を見て、邪神はそう零す。
なんでこいつは温泉が出たのに平然としているのだろうか。
「でもこれ、どうしようかな……いやまあ、せっかくの温泉だし、当然有効活用するし、個人的に温泉は好きだから嬉しいけど、さすがにこれは……………………いや待てよ? そう言えば、今年の椎菜ちゃんの誕生日プレゼントをどうしようか悩んでいたところだったよね? 私。もしかしてこれ……ここに露天風呂を作れば、私至上最高の誕生日プレゼントになるのでは??? ……それだァァァァァ!」
邪神に天啓降りる。
邪神の頭の中にいる、神(見た目みたま)が慈愛に満ちた表情で言う。
『汝、露天風呂をプレゼントせよ』
と。
ここまで来ると最早病気なのだが、邪神の場合はこれが正常運転なのが酷い。
人間じゃない行動をするが、それは普通のことなのだ。
こいつの場合は。
「ん~、とりあえず周りに被害が出ないように、まずはこっちの建築が先かねぇ。幸いなことに、温泉の温度は大したことない……いやむしろ丁度いいくらいだし。となれば、ささっと仮の浴場を作ってしまおうと言うね! んじゃ、建築建築ゥ!」
再び邪神は頑張った。
◇
その後は、無事に仮の浴場を完成させ、そしてプールへ行く日までに邪神はツリーハウスとログハウスを完成させた。
この時に、ピザ窯を作ったし、知り合いの電気工事士などに頼んで電気も通したし、さらに言えばネット回線も頑張って繋げられるようにもしたりと、こいつはなんかおかしなことをしていた。
そして、椎菜が四期生との料理配信でそこを使いたいと言い出した椎菜のお願いを断るはずなどなく、こいつは笑顔でOK。
なんだったら、ちゃっかり自分も料理にありつくべく、カメラマンを買って出た。
そして、配信をしている裏で、邪神は畑の拡張をしたり、建物の点検をしたりなどなど、色々として過ごした。
これは余談だが、建築中のこいつの食事については、適当に魚を獲って焼いて食べたり、襲い掛かってきた猪などを返り討ち(素手)にして捌いて食べるなどをして生活していた。
己は野生児か。
私は一体何を書いたのか、本当にわからないですが……まあ、いつもの邪神に比べれば薄い方でしょう。
やはり、長く書いていますし、ネタ切れ感が否めない……最近、割とマジで、ちょっとした休息期間を設けた方がいいのでは? とか思ってます。
まあ、仮に休息期間に入っても、結局書きたくなって書いちゃうんですけどねぇ!




