#223 観覧車、からの帰宅
撮影会? のような状態になってから、少しして、衣装を返却……しようと思ったんだけど、なんていうか、その……うん。
「よかったら貰ってください!」
なぜか今日僕が着ていた衣装を貰えることになりました。
「あの、えっと……ど、どうして……?」
「お礼です! ひったくり犯を捕まえてくださったのと、ここのエリアにものすごく人が集まりましたからね! ちなみに、オーナーからは許可は貰ってます! あ、よろしければ、お連れの皆さまもどうぞ!」
「え、いいの?」
「ん、私も?」
「あらぁ~」
「もちろんです! いやぁ、そこそこの期間ここで働いてますけど、こんなに繁盛したことはないですからね! 遠慮なく!」
と言われ、受け取ることにしました。
まあでも、さすがに大剣は大きいので、うん……そちらに関しては返却しました。
衣装に関しては、スタッフさんの方から紙袋をもらったので、そこに入れてお持ち帰り。
着ることはあるのかわからないけど……。
そんなこんなで、更衣室で元のお洋服に着替えて出る頃には、日が暮れ始めていました。
「さて、最後に観覧車にでも乗って今日は帰ろっか!」
「ん、さすがに疲れた」
「ですねぇ~。まさか、私たちの方も撮影会に巻き込まれるとはぁ~」
「でも千鶴さん、すっごいいい笑顔で椎菜ちゃんとくっついてたぞ」
「ロリと触れ合える機会があるのなら、私は触れ合いますよぉ~~~~!」
「あ、あはははは……でも、楽しかったね? 衣装も貰っちゃったけど」
「だね! 椎菜ちゃんのおかげだね!」
「う、うーん……なんだか申し訳ないけどね……」
レンタル衣装なのに。
貰う際に、
『そもそもこちらの衣装は着られる方がまったくいなかったので……同じ身長の人はいても、胸が……』
と言われたこともあって、結局貰うことにしたしね。
「ん、椎菜のような体型は超稀有。だったら、着られる人に譲った方がいいと思うのも事実」
「そうですねぇ~。実際、今の椎菜ちゃんはSNSですごく話題になってますしぃ~」
「え、なんで!?」
「そりゃ、コスプレ衣装着てあんな動きしたらそうなるぞ。ちなみに、大抵がかっこかわいいと言う声だぞ」
「そ、そっかぁ……」
「ちなみに、さっきから私たちに愛菜さんからのLINNの連絡が止まらない」
「うん、今はスルーで」
「ですねぇ~」
「心配させちゃったよね……」
「まあねぇ。っと、いやぁ、観覧車はマップを見なくてもわかるからいいよね。あと、大きい」
「ん、景色良さそう」
「観覧車から見える景色はいいですよねぇ~。近くには街もありますし、明かりがすごくいいだろうなぁ~、って思いますしぃ~」
「だね! そう言えば夜ご飯はどうする? どこかで食べてく?」
「ここに来るのに二時間弱だったっけ? 今が四時十五分くらいで、観覧車に乗ることを考えると……地元に帰る頃には七時前くらいになってるかな?」
「それなら、どこかで食べた方が良さそうですねぇ~。私の知り合いが経営している焼肉店があるので、そこに行きましょうかぁ~。私がご馳走しますよぉ~」
「焼肉! いいの!?」
「もちろん~。あ、でも、焼肉以外がいいなら、それでも構いませんからねぇ~」
「焼き肉食べたい」
「僕もそれで大丈夫だよ!」
「じゃあ決まりですねぇ~。あ、お酒飲みたかったら飲んでもいいですよぉ~」
「いいの? 私、免許持ってるから運転できるけど」
「藍華さんは絶対にハンドルを握らないでくださいねぇ~~!」
藍華お姉ちゃんが運転できると言うと、千鶴お姉ちゃんが見たことない勢いでそれを拒否していました。
ゴーカート、何があったんだろう……。
なんて、そんなことをお話している内に目的地の観覧車に到着して、事前予約のおかげですぐに入れました。
「ふぅ~~……なんだか疲れたねぇ」
「ん、かなり動き回ったから当然」
「インドアではありますけど、今日は楽しくてずっと歩けていましたけど、いざ座ると疲れがぶわぁ~! ってきますよねぇ~」
「すごくわかる。私も今来た」
「さすがに僕もちょっと疲れちゃったかなぁ」
「あれだけのことをして、ちょっとって言える辺り、椎菜ちゃんの体力はすごいと思うぞ……」
「TS病って体力も増えるので……」
「羨ましい」
「椎菜ちゃんはTS病だからわかりますけど、愛菜さんとか、あの人はどうして疲れた素振りとかないんでしょうねぇ~?」
「あの人はほら、邪神だからだぞ」
「ん、人間でありながら人間を超越した人だから仕方ない」
「さすがにそこまでじゃないと思うよ!? た、たしかに、お姉ちゃんはすごくその……うん、体力もあるし、すごい動きができるけど……でも、ちゃんと人間さんです!」
だよね? そうだよね!?
「おっ! 大分上の方に来たぞ! って、おぉ~~! 景色、すごくいいぞ!」
「ん、よき。街の明かりは高い所から見るとすごくいい。恋雪さんには感謝」
「本当ですねぇ~。大株主だったからこそ、こうして快適に楽しめたわけですしぃ~」
「今度お礼した方がいいよね」
「いや、椎菜ちゃんが当てたあのアイテムだけで、恋雪さんは満足してると思うぞ。手に入れにくいからね」
「そ、そうかな?」
「まあ、ゲーム廃人からすれば、超レアアイテムが貰えたことは死ぬほど嬉しいこと。寧々の言うことも間違いじゃないと思う」
「それに、恋雪さんはらいばーほーむ一のお金持ちですしねぇ~……。と言うかあの人、下手したら、日本国内でも上から数えた方が早いレベルでお金があるのではぁ~?」
「ひ、否定できない……」
恋雪お姉ちゃんが一体どれだけのお金を持っているのかはわからないけど、少なくとも相当な額は持ってることは確定してるもんね……。
その割には、ゲーム以外にお金をあんまり使ってないし、住んでいる場所だって高級マンションとか豪邸ってわけじゃなくて、防音設備がある普通のマンションだし……。
「ま、恋雪さんはちょっとおかしいので、気にしたら負け! というか、らいばーほーむにいる人たちはみんなおかしいからね!」
「それ、私たちもおかしいって言ってる」
「いや間違いじゃないでしょ。椎菜ちゃんだって、こんな感じだよ? 普通の人なんてまずいないぞ」
「あれ、僕もおかしい側なの!?」
「少なくともまともではないですよねぇ~」
「そもそも、TS病してるし、家事能力もおかしいし、外部コラボした時にライバー全員分のケーキ作ってる時点でまともじゃないぞ」
「うっ……」
そう言われると、たしかに、その……普通じゃない気が……。
でも、ケーキはほら、やっぱりいろんな人に食べてもらいたいし……やっぱりおかしいのかな……?
「ん、致し方ない」
「だね! にしても、明日は山かー。あたしたち、まだ愛菜さんが作ったツリーハウスとログハウスがどんな感じなのか知らないけど、なんかすごそうな気配がしてるよねぇ……」
「僕もまだ行ったことないからちょっと楽しみだったりします」
「絶対とんでもないのが建ってるはず」
「愛菜さんなら建築できてもおかしくない気がしますしねぇ~。と言うかあの人、出来ないこととかあるんですかねぇ~?」
「お料理、とか?」
「いやでも、椎菜ちゃんのご飯なら再現できるし……うん、ほんとにない気がして来たぞ。仮にあったとしても、する必要がないからやってないだけな気もするし」
「ちょっとありそう……」
「ん、でも、明日は椎菜のご飯が食べられるし、楽しみ」
「ですねぇ~~~! 椎菜ちゃんお手製ご飯が食べられるだけで儲けものですよぉ~~~~!」
「あはは、喜んでもらえるように頑張るね!」
色々と材料とか買わないとなぁ、なんて思いつつ、観覧車を楽しみました。
◇
観覧車が一周し終えたところで、ゴンドラから降りて、僕たちは荷物を持って遊園地を出ました。
出る時に、スタッフさんに感謝されるなんてことがあったり、なぜかオーナーさんが出て来たこともあったけど……。
「それじゃあ、忘れ物はないですねぇ~」
「「「大丈夫(だよ)!」」」
「じゃあ、出発しますねぇ~!」
そうして、後ろの座席に荷物を全部置いて、シートベルトを付けて千鶴お姉ちゃんの運転で出発。
「いやー、楽しかったね!」
「ん、ゴーカート、なかなかよかった」
「私は二度と藍華さんとはああいう乗り物には乗りませんからねぇ~!」
「あたしはむしろどんな感じなのか乗ってみたくなったぞ」
「僕もちょっと気になるかも……」
「機会があったら乗せる」
「絶対やめた方がいいですからねぇ~! あれは人間が乗っていいものじゃないですよぉ~!」
千鶴お姉ちゃん、本当に一体何が……。
「あたし的には、お化け屋敷で、お客さん側なのに、脅かし役の人たちに怖がられた千鶴さんが一番面白かったぞ」
「いやぁ~、鼻血と吐血が止まらなかった物ですからぁ~」
「それが原因で後に入った人たちが本気で怖がったらしいからねぇ……」
「本当に血があったら怖いよね……」
僕も何も知らなかったら、もっと怖がってたと思うしね……うん。
それに、お化け屋敷なのに本当に血があったら怖いのも当然だし。
「私的には、千鶴が絶叫系が苦手だったのは驚いた。千鶴に一般人のような苦手ジャンルがあるとは思わなかったし」
「あ、それあたしも思ったぞ」
「僕も意外だなぁって思ったかな?」
「誰にだって苦手なものはあると言うことですよぉ~。個人的に、おねロリとロリおねは好物ですが、途中で攻守交替するのはあんまり好きじゃないですからねぇ~!」
「お、おう」
「そう言う苦手はまた違う気がする」
「どうしよう、なんのことかわからない……」
「知らなくてもいいことですよぉ~! 知らなくとも、何一つ人生に困ることはないですしねぇ~」
それならいいけど……。
「ん、ふわぁ~~~……んゅ……眠くなってきちゃった……」
不意に欠伸が出て来て、瞼がちょっと重くなってきました。
歩き回ってる時はそんなに眠くなかったんだけど……車での移動になったから疲れたのかも……。
「眠かったら寝ててもいいですよぉ~。お店に着いたら起こしますからぁ~」
「んんぅ……じゃあ、お言葉に甘えて…………くぅ……すぅ」
運転する千鶴お姉ちゃんに優しく言われて、僕は瞼が重くなっていくことに抵抗をせずに目を閉じると、すぐに意識が落ちました。
◇
「千鶴さん、どう考えてもここで椎菜ちゃんが寝たら、千鶴さんは死ぬぞ!」
「ん、椎菜の寝言はまずい。確実にロリコンの千鶴を殺しに来る」
「ふっ……椎菜ちゃんが乗っている以上、事故を起こすことはできませんからねぇ~! まあ、本気でヤバかったら適当な場所で止まりますよぉ~」
「ん、それがいい」
「だねぇ」
「何はともあれ、私の次なる目標は、お腹いっぱい美味しいお肉を食べて、幸せ笑顔を振りまく椎菜ちゃんの顔ですからねぇ~~~~! それを見るまでは死ねませんよぉ~~~!」
「ん……にへぇ……もー、たべられないよぉ……むにゃ……」
「「ごはっ……!」」
「んごぁっ! くっ、た、耐え、ましたぁ~……! こ、この調子で、お店まで直行しますよぉ~~~!」
この後、千鶴は何度も死にかけながらも、事故を起こすことなく、何とか無事に焼肉店に到着。
その後、椎菜以外の三名はレバーを大量に注文し、失った血液を回復。
お高いお肉に舌鼓を打ち、満足して一行は帰って行った。
……尚、どこぞの邪神は、椎菜ちゃんセンサーにより、何か危ない目に遭っていることを察していたし、一緒に遊びに行った三期生の他三名に情報を求むメッセージを飛ばしていたが、殺されたくなかったので、とりあえずスルーしていた。
結果的に、危うく処されそうになっていたが、三人は椎菜のコスプレ写真を送ることで、なんとか無事に処されることなく、事なきを得たのであった。
……もっとも、例のひったくり犯に関しては後日、な ぜ か 何かに酷く怯えるようになったらしいが……真相は不明である。
遊園地編終了ッ!
次回からは例によって四期生全員との料理配信になります。まあ、料理配信っていうか、椎菜がひたすら料理を作って、それを振舞うだけなんですけどね。尚、場所は山の中の模様。
VTuberが山の中で料理配信ってどういうことなんだ……???




