#219 激辛猫、異常幸運狐
のんびりお話をしていると、寧々お姉ちゃんと千鶴お姉ちゃんの二人が戻ってきました。
「ただいまぁ! 持ってきたぞ!」
「二人の分ですよぉ~」
「あ、向こうで待ってたの?」
「うん、どうせなら一回で済ませよ! ってなってね! っていうわけで、こっちがカツカレーで、こっちがオムハヤシだぞ! あと、飲み物!」
寧々お姉ちゃんが元気な声と一緒に、僕と藍華お姉ちゃんの前に注文したお料理を置いてくれました。
「美味しそう!」
「ん、いい匂い。やはり、レジャー施設のカレーはある意味定番」
「あー、たしかにそのイメージはあるぞ。あとラーメン」
「私はラーメンですねぇ~」
「ふっ、あたしも定番の焼きそばだぞ」
「その定番の焼きそばが真っ赤すぎる件について、何か一言ある?」
「めっちゃ美味しそう」
「それを美味しそうって言えるんだ……」
寧々お姉ちゃんの目の前に置かれている焼きそばは、なんていうか……うん、すごく赤いというか、真っ赤というか……うん、赤い通り越して赤黒い感じが……あと、匂いがすごく辛いです……!
そんな焼きそばを前にして、美味しそうと言える寧々お姉ちゃんはすごいというか……本当に辛い物が好きなんだろうなって。
「あ、それぞれのところにアイテムのくじがあるけど、それは食後に見よ! 今はご飯ご飯!」
「ん、お腹空いた」
「それじゃあ、食べましょうかぁ~」
「「「「いただきます!」」」」
いただきますと言ってから、ご飯を食べ始める。
早速オムハヤシを一口分すくってパクリ。
「あ、美味しい!」
たまごはふわとろだし、ソースの方もシンプルなのにすごく奥が深くて甘みと酸味のバランスがすごくよくて、ご飯はバターライスでとても美味しい。
バターライスは単体だとちょっと重めなんだけど、ソースの酸味がちょうどよくしてくれてる感じかな?
むぅ、僕もこれくらい作れるようになりたいなぁ。
「ん、美味しい。カツが大きくてよきよき」
「ラーメンも王道の鶏ガラベースの醬油ラーメンですねぇ~。あっさりめですごく美味しいですよぉ~。あと、冬なので余計ですねぇ~」
「ずるずる……んむんむ。おおぉぅ、いい辛さだぞ! 素晴らしい! 美味しいし辛いし体が熱くなるぞー! あ、やべ、鼻水も出て来た」
「熱いものとか、辛い物を食べると、鼻水出て来ちゃうよね……すごくわかります」
「ん、風邪引いた時はある意味いい。体が死ぬけど」
「それ、美味しいんですかぁ~? 注文した時の店員さん、すごく驚いていたというか、この世の物じゃないものを見た様な顔でしたけどぉ~」
そんな顔されてたの!?
「ごくんっ。うん、すっごい美味しいぞ! 食べる?」
「……ちょ、ちょっとだけぇ~」
「どうぞどうぞ! ちょっとと言わず、がばっ! と行っていいぞ!」
「いえ、私は人並程度なのでぇ~……と、とりあえず、三本ほど……ちゅるちゅる……あら? 結構おいし――~~~~~~~~~~!!!???」
想像以上に辛くなかったと思ったらしい千鶴お姉ちゃんだったけど、すぐに辛味が襲い掛かって来たようで、涙目になって口元を抑えてぶんぶんぶんっ! と頭を大きく振って、そこからお口の中の辛いのをどうにかしようとして、ミルクティーをごくごくと飲み始めました。
「んくっ、んくっ、んくっ……ぷはぁっ! か、辛いっ、辛いですよぉ~~~!? え、これ、人が食べていい辛さじゃないですよぉ~!? げほっけほっ! うぅぅぅ~~~、く、口の中がぁ~っ、喉がぁ~~っ、食道がぁ~~~っ、私の胃がぁ~~~~っ! よ、よく食べられますね、寧々さん~!」
「いやまあ、これくらいなら大して……むしろ、もっと辛くてもいいぞ!」
「絶対人間じゃないですぅ~!?」
「それ、千鶴さんにだけは言われたくないぞ」
「ん、はげどう。でも、どれくらい辛いのか気になる。……寧々、私も貰っていい?」
「いいぞ! ほいどうぞ!」
「じゃあ、一口だけ……ちゅるげほぁっ!?」
「口に入れた瞬間から!?」
「み、水っ……水がっ!」
「あ、藍華お姉ちゃん、お水は逆効果だよ! えと、牛乳とかそっち系の方が……!」
「ち、千鶴、み、ミルクティーをっ! わ、私が新しいの買うからぁ~~~~~っ!?」
「どうぞぉ~~~!」
「ありがごくごくごく……! ぷはっ! はぁっ、はぁっ……ひ、ひりひりする……灼熱の焼きごてを口の中にくらった気分……」
ミルクティーを求める藍華お姉ちゃんに、千鶴お姉ちゃんは一切嫌な顔をするどころか、一切の躊躇をしないでミルクティーを差し出していました。
それだけ辛かったようで、舌に残る辛みをなんとかするためなのか、舌を出していました。
うん、わかります……すごく辛いのを食べた時って、なぜか舌を出しちゃうよね……。
「はむはむ……そんなに辛いかなー?」
「「辛い(ですよぉ~)っ!!!」」
「お、おう、そっか。あ、椎菜ちゃんは食べる?」
「僕は止めておきます……」
苦手ってわけじゃないけど、得意ってわけでもないので……。
「ん、英断。マジでやめたほうがいい」
「普通の人間が食べるものじゃないですよぉ~! 私は無理ですねぇ~!」
「まあ、あたしも愛菜さんに殺されたくないからその方がありがたいぞ。はむはむ」
なんて、そんな一幕がありつつも和やかに(?)お昼の時間が終わって食器を片して、最後にアイテムを確認することに。
「んじゃ、アイテム確認しよ! ちなみに、このアイテムで最も確率が低いアイテムは、衣装アイテムだぞ。ここのスタッフの衣装が男女両方で手に入るって言う感じで。その次が必殺技、次が武器、一番下はスタンプで種類が10種類ってな感じ」
「ちなみに、確率はどれくらいなんですかぁ~?」
「ん~、衣装に関しては封入率が圧倒的に低すぎて、0.01%って言われてるぞ」
「まさかの一万分の一」
「そ、そんなに低いんだ……」
「ゲーム課金をしまくるガチ勢でも、さすがに遊園地に通って、食べまくるわけにはいかないからねぇ。なので、持ってる人は尊敬されるっていうか、一躍時の人になれるぞ。当たり報告、めっちゃ少ないし」
「「なるほど」」
「あの、なんでこっちを見るの……?」
「「「当たるかなって」」」
「当たらないと思うよ!?」
さすがに、一万分の一は無理だと思います!
……それ以上に確率が低い宝くじを当ててはいるけど、あれで運は使い果たしたはず……だよね?
「まあ、武器と必殺技がでても全然当たりだけどね」
「ん、飲み物分も含めて二枚あるから、チャンスは二回と言う事」
「ですねぇ~。とりあえず、二つとも開けちゃいましょうかぁ~」
千鶴お姉ちゃんのその言葉で、僕たちは一斉にくじを開いて……。
「……」
「「「やっぱり」」」
「やめてっ、そんな目で僕を見ないでぇっ……!」
ほらみたことか、と言わんばかりの表情を三人に向けられました。
なんていうか、その、えと……はい……二枚とも、衣装でした。
「なんかもう、あたしは椎菜ちゃんが怖いぞ」
「ん、何やっても当たりしか引かないのは異常」
「さすがですねぇ~。ちなみに、椎菜ちゃんはそのゲームをプレイしていませんけど、このアイテムはどうするんですかぁ~?」
「え、えーっと……寧々お姉ちゃんと藍華お姉ちゃん、これいる?」
「え、いいの!?」
「うん。僕はやらないと思うし……時間もあんまりないので……」
「え、ほんとに? ほんとにいいの?」
「うん、どうぞ!」
「ヤッタァァァ! なんかあたしの方も武器が当たってるしメッチャ嬉しいぞ!」
寧々お姉ちゃんは僕からくじを受けとると、ガッツポーズをするくらいにすごく喜びました。
こんなに喜んでくれる人が貰った方がいいよね。
「藍華お姉ちゃんはいる?」
「ん、私はいい。そこまでやってるわけじゃない。恋雪さん辺りに渡したら?」
「あ、それいいと思うぞ。たしか、恋雪さんも持ってなかったはずだし。と言うかあの人、人混みが嫌で手に入れたくてもできてなさそうだし」
「「「たしかに」」」
あり得るなぁ……。
アイテムはすごく欲しがりそうだけど、実際に現地に来ないといけないから断念してそうだよね、千鶴お姉ちゃん。
「とりあえず、電話で聞いてみようかな?」
「それがいいと思うぞ」
「じゃあ、えと、千鶴お姉ちゃんにかけるね」
LINNのメッセージでもいいかなって思ったんだけど、せっかくなので電話をしてみることに。
早速スマホを取り出して、恋雪お姉ちゃんに電話をかける。
『も、もしもし、えと、みた……あー、うー、き、狐さんですか……?』
狐さん……あっ、そう言えば今って配信中、だっけ?
本名を言うわけにはいかないし、配信者名を言えば周りに聴こえちゃうかもしれないから、狐さんって言った、っていうことかな?
な、なんだか申し訳ないことを……。
「あ、うん、狐さんです」
『あ、よ、よかった、です。それで、えーっと、わたしに何か用事が……?』
「うん。えーっと、うさ……こゆ…………あっ、か、株主さんって、オーシャンズ・ロードっていうゲームをやってるよね?」
『やってます、けど……それが、どうかした、んですか?」
「実は、株主さんから貰った遊園地のフードコートでくじを引いたんだけど、そこで衣装が当たったの。それで、株主さんに譲ろうかなって思って電話したんだけど……んっと、いる、かな?」
『……エッ、あ、あの、狐さん、も、もう一度、いい、です、か?』
「え? あ、うん。えっと、フードコートのくじで、衣装を当てたので、株主さんに、って思ったんだけど……」
『ま、まま……マジですかぁ~~~~~~~~~!?』
「ぴゃ!?」
今までに聞いたことないレベルの大きな声が恋雪お姉ちゃんから放たれて、思わず小さな悲鳴が。
び、びっくりした……。
『あっ、ご、ごごご、ごめんなさっ……い、いえ、そ、それ、本当、です、かっ!?』
「う、うん。二枚当たってて、一枚はえと、猫さんに……」
『に、二枚もぉ~~~~!? さ、さすが狐さん、ですぅ! わ、わたし、そのアイテム、欲しかった、んです、けど……ゆ、遊園地に行くハードルが、た、高くて……て、手に入らなかった、んです……も、貰っても、い、いいんでしゅか!?』
「うん、もちろん! 株主さんのチケットで来れたから。譲るよ!」
『あなたが女神かっ……い、いえ、ある意味女神、でしたねっ! あ、あぁっ、なんという幸運……と、とりあえず、し、シリアルコードは、写真で送ってくれると、う、嬉しい、ですぅ!』
「あ、うん。じゃあ今送っちゃうね」
『はいぃ!』
恋雪お姉ちゃんに言われた通り、スマホでシリアルコードの写真を撮って、それをLINN経由で恋雪お姉ちゃんに送信。
『ひゃわわぁぁ~~~~~~! ほ、本当に衣装ですぅ~~~!? こ、これはぁっ……RTAしてる場合じゃねぇですぅ~~~~~! ひゃっは~~~~~~~~!! レアアイテムぅぅぅぅ~~~~~! あ、えと、あ、ありがとうございますっ! さ、早速試します、ねっ!』
「うん、喜んでもらえてよかった! それじゃあ、楽しんでね!」
『は、はいぃ! そちらも、楽しんで、くださいっ!』
通話終了。
なんていうか……うん。
「恋雪お姉ちゃん、すごくテンション高かったです」
「「「知ってた」」」
だ、だよね……。
「というか、普通に恋雪さんの大声が聞こえて来たぞ」
「ん、あの人、あんなに大きな声出せたんだ」
「好きなことになると声が大きくなるということですよぉ~」
「恋雪お姉ちゃん、だもんね」
まあ、何はともあれ、喜んでもらえてよかったです。
◇
あの後、恋雪お姉ちゃん……というか、うさぎおねぇたまのトワッターがすごく、その、エキサイト? した結果、うさぎおねぇたまとアイテムが貰えるゲームがトレンド入りしていました。あと、なぜか僕もトレンド入りしてました。
なんで!?
寧々は激辛料理が大好きです。多分ですが、某愉悦神父が食ってるクソ辛いあれも普通に食べきるんじゃないですかね。
あと、椎菜の幸運はもう言うまでもないよね!




