配信#39ー3 VR配信だよっ!:3
「えー……とりあえず聞くけど……ひかり、超人コマンドってなんだい?」
あの後、お姉ちゃんは建物の壁を走ったり、本人曰く超人パルクールしたり、唐突に何かのオブジェクトを出したと思ったら、それをパンチで砕いたり、木を生やしたと思ったら、それをキックで折ったり……ほかにも縮地? をしてすごい速さで移動してたり、なんかもう、見てる僕たち全員、言葉を失うという状況に直面しました。
ひとしきり動いて満足したのか、お姉ちゃんはどこかスッキリしとした面持ちで戻ってくるなり、たつなおねぇたまが突然身体能力が上がった理由だと思われる、超人コマンドについて尋ねていました。
「簡単に言えば、普通の人間じゃなくて、バトルアニメやマンガのキャラクターみたいに、ものすごい身体能力を使えるようにするコマンドっぽい」
「なんのためにあるんじゃ、それ……」
「んー、軽く動きながらこのロビーのマップを見てみたけどさ、なんかここ闘技場みたいな場所もあるっぽいんだよね。多分だけど、そこで殴り合いしていいぜ☆ みたいな奴じゃない? あとはあれ、アニメのキャラみたいに、こういう都市みたいな場所で思いっきり動いてみたい人向けってとこだと思う。特に、世の男の子たちはそう言うの憧れるじゃん? 多分そっち向け」
「あー、たしかにそう言うのは憧れるますねぇ。っていうか、男の子じゃなくても憧れる人はいる気がしますぜ」
「いや、うん、それはわかったんだけどさ……君、あのバカみたいな派手な動きしながら、そんなことを確認してたの? どうやって?」
「どうやってって……大きく動きながら、周囲の状況把握、相手の手札に、情報を確認するのなんて余裕じゃん? っていうか、行動と思考を並行してできるようにしないと、死ぬし」
「本当に君は一体何と戦っているんだい!?」
【あの動きをしながら情報の把握もしてるとか、お前の頭の構造どうなってんだよ】
【頭がおかしいっていうか、そもそも脳の構造がおかしいやんけ】
【えぇぇぇ……(困惑)】
【ってか、そんな技能が必要な存在ってマジでなんだよ】
【マジで謎すぎる……】
【っていうか、マジであのバカみたいな身体能力を扱いきれてるのヤバすぎるだろ……】
【それ以上に、結構な高さから落下してるのに、全然怖がってないんですけどあの人】
「まあまあ、そんなことはどうでもいいじゃん? とりあえず、問題はなさそうだし、このまま行こうぜ☆ それにしても、VR空間の配信って結構楽だね。動きに合わせて自動的にカメラが私たちを追ってくれてるっぽいし。自動追尾機能が付いたドローンって感じ?」
「言い得て妙ですねぇ。まあ、ドローンは使ったことねぇですけど」
「まあ、普通はないのう」
「んー、にしてもさぁ……マジこの空間すごくなーい? ビルもあるし、ひかりんパイセンの言うことがマジなら、闘技場もあるらしいじゃん? マジで気になるんだよねー」
いくまおねぇたまが周囲を見回しながら、そんな感想を零す。
それに便乗するように、めいおねぇたまもどこか楽しそうに口を開き案↓。
「そうですね。私としても初の空間、そして体験ですので、好奇心を強く刺激されます。たつな様、こちらのろびぃはどのような絡繰りがあるのでしょうか?」
「絡繰りて。機能についてだが、どうやらかなり面白いシステムがあるようでね。どうやら、街の中にある建物を購入することができるらしい」
「ん、本当?」
「正式なリリースがまだだから何とも言えないが、あらかじめもらっていたメモにはそうあるね」
「へぇ! たつなパイセン、それってどーゆーことができるん?」
「えーと……一軒家やマンション、アパートのような仮想現実における自宅の購入の他に、ブティックのような衣類を販売する店の経営、靴屋に雑貨屋、料理店、他にもオフィスなんかもあるみたいだし、他にもいろいろあるようだ」
『『『なんでもあり!?』』』
まさかのお店の経営などもできるとあって、僕たちは思わずそんな声を上げていました。
【自由度高すぎるだろ……】
【初期からいろいろできるのすごくね?】
【これってさ、ゲームをプレイする前の段階のロビー状態なんだよね? えぇぇ?】
【これから慣れてください、みたいな感じにいつぞやのイベントでは説明されてたけど……想像以上にやれることが多すぎる】
【店も開けるのか。これ、かなりすごいことだよな】
【日本だけでしかまだできないっぽいが】
【海外勢かわいそー……】
「たつなちゃんや、一つ聞きたいんだけどさ、その建物の購入ってどうやってやるの? やっぱりリアルマネー?」
「リアルマネーというより、ロビー共通の通貨みたいなものがあるみたいだ。この通貨だけど、手に入れる方法は色々あるみたいだね。一つはリアルマネーを換金する方法。通貨の名称は『VP』。ヴァーチャルポイントらしい。で、1VP=1円となっているそうだよ」
「ほほう。しかし、リアルマネー以外にも存在しているんじゃろう?」
「もちろん。じゃなきゃ炎上してしまうよ。このVPだが、入手方法はログインボーナスによる入手と、商品や料理などの売買、そのほかに公式主催の大会で高い成績を取ると入手可能らしいね」
「ん、お金が無い人にとっては最初がきつそう」
「まあ、これだけの大規模な空間だし、維持費も相当なものだろうからね。そう考えれば仕方ないさ。他にも入手方法は色々あるみたいだが」
【たしかに】
【無課金でもできることはあるし、なんだったらコツコツ毎日ログインすれば家なんかも買えそうだなぁ】
【まあ、値段によるんじゃないかね】
【その辺はしゃーないわなぁ……】
「他にもいろいろと機能はあるそうだが……あまり話し過ぎると後半組がやることがなくなってしまうので、一旦はここで打ち止めにしよう。というか……ゆあちゃんとゆいちゃんの二人が早く行きたそうな顔をしてるしね」
「「おかーさんはやくー!」」
困ったような、それでいて微笑まし気な笑みを浮かべるたつなおねぇたまの視線の先には、我慢できないといった様子のゆあちゃんとゆいちゃんが。
「私としたことが、暴れすぎてしまった! というわけで諸君! 二人を満足させるのだ!」
お姉ちゃんのその言葉を皮切りに、本格的に探検開始。
とはいっても、主導はゆあちゃんとゆいちゃんの二人で、僕の手を引いて歩く……というか、走る二人についていく形です。
「おかーさんおかーさん! あれおっきー!」
「……あっちは、ちっちゃい、です。でも、きになる」
「おかーさん、これなぁに?」
「……あれ、たのしそー、です」
「わー! これおもしろーい!」
「……こっちいってみたい、です」
いざ探検を開始するなり、二人ははしゃぎ始めました。
初めてのVR空間――まあ、それは僕たちもだけど――に、二人の子供としての好奇心がすごく刺激されちゃったんだろうね。
うん、すごく可愛いけど、できればあっちこっち行かないでくれうと僕は嬉しいかなぁ……。
そんなことを思いつつ、僕は二人の後を追う。
「あぁぁっ……やっぱり我が家の姪っ子ちゃんたちが可愛いっ……! 鼻血出そう……」
「いやでそうって言うか、鼻血出てるよ、ひかり」
「おっといかんいかん」
「え、このゲーム、鼻血が再現されておったのか!?」
「……いや言われてみればそうだね!? ひかり、なぜ鼻血が!?」
【いやマジでなんで鼻血が出てんだよ】
【エフェクトっぽい処理されてるけど、どう見ても鼻血じゃねぇか!】
【流血表現あって草生える】
【これ大丈夫? 色々】
【子供の教育に悪い奴やんけ!?】
「ん? あぁこれ? これもコマンドの一つ。その名も……『鼻血コマンド』! そして『吐血コマンド』もあるよ!」
「そのまんまじゃねぇですか」
「そりゃそのまんまの機能だしね。あ、このシステムについてはご安心を! 私調べによると、流血表現をONにできるシステムが存在していてね。しかもそれ、一定年齢以上じゃないと解除されない仕組みになってるから子供でも安心! ちなみに、流血表現が見れるのは十五歳になってからだそうです」
「ん、圧倒的無駄機能なのに、無駄にすごい」
「局所的な物のようですが、需要は大変ありそうですね」
「需要ってレベルじゃない気がするんだが」
【十五歳以上で流血表現の解除ができるってなんやねん……】
【あぁ、だから身分証とか必要なのか】
【そりゃこういう表現があるなら当然だわなぁ……】
【ちなみに、みたまちゃんが離れてるから聞くんだけど……邪神に殺されるのを覚悟で聞くんだけどさ……このゲームって、18表現とかないよね? ってか、ないであってほしいんですがそれは】
「ほう、貴様はいい度胸をしている。だがしかし、ない方がいいと言っているのでギリ許そう。まだ検証していないからあれだけど……多分、特定ルーム、それこそ自宅とかそう言う場所では服を脱いで全裸になることができるんじゃないかな? さっき、実はその辺の確認をした時に、そんな感じの旨のメッセージ出たし」
「うんちょっと待とうか。君、しれっと服脱ごうとしてないかい!?」
「いや、何かの間違いでみたまちゃんたちが至高の裸体を晒してしまう可能性があるじゃん?」
「ひかり様がいる限り、それはないように思われますが……」
「その通りではあるけど、私だって常に一緒にいられるわけじゃないからね。なので、この私の体を使っての実験は必須……! っていうかさ……って、あー、いるかちゃん、ちょっとリリスちゃんの耳を塞いで」
「ん、OK」
「え、なんでじゃ!?」
「これでよし。ピュア組が離れてる、もしくは耳を塞いだから言うけどさ、そもそもの話……このモデル18禁対応してないんだよね。具体的には、乳首とか秘所が作られてない感じ」
「ドストレートすぎるんだが!?」
「さすがひかりんパイセン! 恥がどこにもないし!」
【お前ド直球すぎるわ!?】
【えぇぇぇ……】
【いくら離れてるからとはいえ普通言うか!? 案件動画でそう言うこと言うか普通!?】
【これ絶対怒られるやろ……】
【らいばーほーむに案件を投げるのってかなり無謀だと思うんだ】
「つまるところ……裸にはなれるだろうけど、こう謎の光が発生するか、隠しのウィンドウが出るか、そもそもそれがないから、肌色の全身タイツ見たいな感じになるんじゃね? って言うのが私の考えかな」
「ちゃんと分析してるっぽいですけど、ひかりさんマジやべぇですね」
「なんと言うか……うん、ひかりに羞恥心は皆無だからね……なんか色んな意味で疲れた」
「のう、我、いつまで耳を塞いでればよいのじゃ?」
【陛下って二十二歳なのに、なんで耳を塞がれているのか、コレガワカラナイ】
【陛下の場合は、二十二歳っていうより、二十二歳児が正しい表記だから】
【↑草】
【みたまちゃんたちが遠く行ってるのにこいつらと来たら……】
【って言うかマジで怒られろ邪神】
こいつは一体何を言っているんだろうか。
みたまとリリスの二人が離れている、もしくは聞いていない状況に持ち込めば、一応下ネタは言えるのがらいばーほーむ。まあ、バレたら殺されるけどね。邪神に。
今回の場合は邪神が話しているので、切腹かな。




