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逢馬ヶ刻〜陰陽師奮闘譚  作者: 静ヶ崎 顯
術師翻弄
35/44

第18話

昨日、副題を変えてみました。


…。

まだ、しっくり来ません。


 逢馬が諸手で印を結ぶ。

 握った右拳(みぎこぶし)左掌(ひだりてのひら)で下から包む。

「竹林爺さん、属性は」

「二種、警戒せよ。行使は共に(はざま)。攻勢は光と虚じゃ」

「くっそ、めんどいので固めてんな」

 おもわず逢馬が吐き捨てる。


 握った拳のなかに白い綿胞子が見える。

 結んだ印は宝甕(ほうへい)。陰行の効能があり、存在や行動については比較的、誤魔化しが利く。

 白い綿胞子が表すのは光と虚。

 逢馬が行使した行と形代が行使する行の種類が被っているのは偶然にして必然でもある。

 逢馬の術式は光で行使し虚でもって攻勢としている。

 逢馬達の動きが形代札の支配下にあると誤認させることを狙う。同じく形代の攻勢術式が光と虚であるのは光の速さで術式を行使し強力な虚の属性を叩き込むためだ。

 

 拳のなかに十二分に相当する力を集めると、弾くように解放して行使する。

 

中留為(あてるい)

 

 古代日本国の東北に住まいし(えみし)の英傑、中央朝廷に対しまつろわぬ民を纏めあげて叛逆した武人。その阿弖流為(あてるい)の名にに音を借りた術式である。

 ()のものは狩猟民族の長。陰行と狙撃に秀で、現代戦術に置き換えるならばゲリラ戦術の達人である。

 当留為は隠蔽が基本の陰行印に珍しく、攻勢式にも利用できる。


「中留為か、遣うのはエエが反転さすなよ」

 竹林が苦言を呈する。言葉だけでなく顔も若干苦い。

「おぬしに惑わし掛けたんはそれが原因じゃでな。すぅぐ火力に走るのぉ」

「おんなじ式気組が、偉そうな」

 当然だが逢馬は不満げだ。

「何言っとるか。ここの札は貴重なんじゃ」

 対して竹林庵は心外だと目を向いた。

「ワシの術式がいちいち強いのは自覚しとるわ。じゃが時と場合は考えとる。おぬしに同類扱いされる筋合いはないわい」


 逢馬が口をまげる。

 なんとなく、言い返せない何かがあるようだ。

 竹林庵が、

「とにかく、壊すな。」

 と告げた。


 大木があったはずの、今では灌木が植わるその場所で竹林庵と逢馬が連れ立った。

 灌木の根本は掘り返された跡が残り、少々暗い色をしている。


 前に立つのは逢馬。後ろで待機するのが竹林庵。

 竹林庵は網を持っていた。

 いつの間にやら何処(いずこ)より取りだせしその網はいたって硬質で、堅牢な暗灰色の石材がその形状をとっていた。

 そして四方を囲っているせいで石造りの魚籠(びく)にも見える。

 一辺、凡そ30cmほど。取り回しは良いだろうが持ち運びには、すこし難儀であろうその網の。

 天井部分の内側の中央に七つ星の図が描かれ、オレンジ色の玉が一つ填まっている。


「お?それがハッキング用品か?」

「おぬしが攻勢術式おさえとる間にこれで形代の本体を確保するんじゃ。ワシに攻勢術式が逸れるのはかまわんが鯱昊網(しゃちあみ)にだけは向けさせるでないぞ」

「シャチアミ?」

「取り敢えず、そんなモンがあるとだけ今は憶えておけェい」


 改めて、竹林庵が網を構える。直ぐにも動けるように中腰だ。

「起動させるぞ。」

「応」


 逢馬は組んだ手をそのままに踵を踏みしめ体重を後ろにかける。

 何度か踏んで踵を避ければそこには三角形の小さい跡ができている。

 そこへ更にちいさなガラス片を落としこむ。

 とくに研磨も整形さえしていない、本当に欠片だ。


『其は此処に在れ』

 逢馬が呼べば灌木の根本へ光が走り。


 いっとき、置いて光が帰ってきた。

 逢馬の足元にあるガラス片だけではない。

 ガラス片、逢馬、竹林庵、鯱昊網、網のなかにあるオレンジ玉、逢馬が腰裏に置いている警棒にまで光の先が動く。

 まるで視線が動いているかのようで気味が悪い。

 と、光が弱まり筋が消える。

 光が当たっていた焦点は消えずにそのままだ。


「来るぞ!」


 竹林庵が強く呼んだ直後に地面から太い糸が放たれた。

 光の当たっていた場所に向かって真綿を()り上げたような見た目の紐が灌木の根本から這い出る。

 数十を数える綿の紐は地面を押し上げ、その動くさまから決して早くはないがどこまでも追ってくる意思がひしひしと感じられた。


「はあ”あ”っぁ」

 逢馬が吶声を挙げて握った印を開く。

 すると中からは無数の綿帽子が飛び散った。

 空中に散った綿帽子が一粒、綿縒糸に触れれば残りの宙に浮かぶ綿胞子がすべて次から次へと綿縒糸へ殺到した。 縒り糸が通り逢馬と竹林庵へ巻き付くのを妨げ、あげく十以上の綿帽子をくっつけた縒糸は次々に地面に落ちて動きを止めた。

 

「爺さん、止めたぞ」

 逢馬の背後では竹林庵が大きく眼を剥いていた。


 返事がなかったことを訝しんだ逢馬が、視線を地に落ちた縒り糸へ向けたままに竹林庵を再度呼ぶ。

「爺さん?」

「!おおぅ」


「どうした」

「ここの警固罠は厳重じゃ」

「おお。結構ヤバかったぞ。綿が紐でくるとは思わなかった」

「一発で成功とは此処何十年と類を見んほどじゃ。大体は成功するまで、そうさの。四度はかかろう」


 まさか只の一度で、と竹林庵はまた呟く。

 竹林庵が手放しで褒めてくるとは思わなかった逢馬は少々照れ臭げだ。

「珠には居るだろ。一発で出来るヤツ。爺さんだって手練れだしよ」

 だが竹林庵が感心した表情を崩すことはない。

「いいや、謙遜せんでよい。ワシが初めて挑戦したときは、今の逢馬より遥かに年上じゃった。おまけに儂は一度失敗っておるでな。こりゃ誇って良いぞ」


お読み頂きありがとうございます。

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