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逢馬ヶ刻〜陰陽師奮闘譚  作者: 静ヶ崎 顯
術師翻弄
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第14話


「しかし、あれだな」

「?」

 逢馬のぼやきを岳多が聞き付ける。


「ホラ、確認に行くわよ。どしたの」

「イヤ」


 胸骨を張り、肩を回す。

「いざ、天狗となると気が抜けねぇなと」

「まぁ。そりゃ、ねぇ」


 先ほど竹林庵が見てきた通り、都市部といえど鳥は居る。

 さっと見渡して、鳶は見えない。

 だが濡烏は属性行を操る。


「あっこのスズメも濡烏の擬態なのかホントにただ居るだけの野鳥なのか。判断に困るよな」

「区別する必要無いんじゃない?全部眷族だと思って警戒してれば?」 

「それだと警戒対象、多すぎンだよ。風だって警戒する必要があるし」

「ま、天狗の現場だからね。その辺は諦めってことで」

 逢馬と会話していた岳多が周りを見渡す。

「今は陣にいるからいいけど、さっきまでの捜査本部の内容も聞かれてたと考えるべきだしね」

「そうだな」


「今回の人天狗はいつ頃に成ったモンだろうな」

「成って当分は修行タイムだからねぇ。周囲の、時代の移り変わりに気を配れるようになるまでは長いって聞くわよね」

 岳多の体がくりんと別方向を向く。

「竹林さん。そのあたりは如何でしょうか」

「そうさの」


 竹林庵は顎に手をやって思案する。

 髭がきれいに剃られた跡を触り、剃り残しを探す。

 そうしていても竹林庵の眼は宙を向き、焦点はあっていない。

 彼が深く考え、記憶を探っている際の癖だ。


「あやつらの、最盛期。もっとも増えたのは。修行場と田舎の山と。未踏の。迷子の、人買い。彪技の連れ子。室町の愛宕。上杉は無く、八流は師範。求道は独り」

 ブツブツ言い出した。

 端から聞いていると脈絡はない。

 が、本人が口に出しているのは今構成している理論のキーワードである。

 其れが証拠に。

「逢馬」

「うん?」

「いま、ワシャ何言うたかの。田舎と迷子の、、、?」

「人買い」

「奥州関連でなんぞ言わんかったか」

「修行場」

「ほうか。そうか」


「で?いつが多そうだ」

「諸々。思案したがやはり遠野で藤氏が頭領じゃった頃であろうな」

「1192(いいくに)の前か。」

「開府したころにゃ奥州藤原は滅んどるでの。武張(ぶば)った藤氏が田舎に来て、改革を始めた。始めたぁ~ころの、源氏の棟梁が義家公の頃と見るのが妥当じゃな」

後三年(ごさんねん)か。あー、1100年くらいだったか?」

「役が終わって実権握ってから。じゃから1087年の以後じゃな」

「古ぃ天狗だな」

「およそ、成ってから950年程かの」 


「933年です、竹林さん」

「950のうちの17だろ、ほぼ誤差だ」

 竹林と逢馬の会話に出ていた数字の齟齬を芒野が指摘したが流された。


「さて、そしたらアレだな」

「?」

「あの~アレだ、防衛の守り札をここで作成しないとな」

「そうね。陣の中で見えないように作らないと直ぐ対策されちゃうわね」


 逢馬と岳多が額を突き合わせて思案する。

 すこし考え込んで、ふいと余所を向いた。

 逢馬は道野に、岳多は竹林に、である。

 芒野は独りで考え込んでいる。 


「道野にも教えときたいが小テストはまた今度な」

「竹林さん。どうします?風と水と空間あたりの構築妨害で足りると思いますか?」

「岳多さん」

 芒野が声をあげる。


「なぁに?」

「相手は証拠品やカメラ映像にも手を出してます。せめて雷と(おん)も必要かと」

「芒野、よぅ気付いた。逢馬、追加の属性はないかの?」

「火と氷が足んねぇ」


 逢馬の言葉に四人の反応は三種に別れる。

 竹林庵と芒野がそれぞれ、「正解」と言う顔と「なるほど」という納得顔。

 岳多と道野が「はぁ?」という怪訝顔。

 いや、顔だけではない。

「は?氷はいいわ。確かに風と水に対策しようって言っといて雷と氷が入ってなかったのはミスかもね。でも火の要素はないでしょ」

「そうですよ、愛果さんの言う通りです!天狗がお天気操るのは知ってますよ、でも火は降ってこないです!」


「いや、小石が降っても天狗礫(てんぐつぶて)って言いますから本当は地属性も対策したいんですけど」

「天狗もそこまで手広い訳ではないゆえな。今回は傾向がみえぬことから除外対象じゃ」

「石だったら土属性だろ。だが、まぁそうだな。全部対策したいのは山々だが載っけすぎると広く浅くの典型になっちまう。ある程度の耐性ラインは確保したいから今回土属性はナシだ」

 否定意見の女性(のうきん)陣をよそに術式に長けた組が盛り上がる。

 基本的に三人は研究者タイプであるのだ。


「ちょっと!ムシしないで下さいよ!」

 割って入るのは道野。矛先は逢馬だ。

「いやいや。ちょっとは自分でも考えてくれよ。意見が合わないときはそれなりの理由があるんだからさ」

「分かんないから納得してないんですよ!」

 道野の後ろで岳多が腕組んで頷いている。

「ホントに思いつかない?岳多も?」

「ちょっと思い当たんないです」

「今度、機会つくるからさ。田螺蛇のお母ちゃん呼んでくれよ。説教してもらおうぜ」

「何でですか!」

「分からないことがあってもそれを隠さないのは良いことだ。でもよ、研修上がりの道野と同レベルは勘弁してくれよ」

 岳多もさすがに返しが出ないらしい。

 むむぅ、と唸って顎を引いた。

 じっとり逢馬を睨んでる。


「で?何で火が関係あるんですか」

 へこたれないのは道野である。

 というよりは普通にわからないので聞いてるだけだ。

「ああ。雷落ちたら火ィ出るだろ。海外とか田舎の山で突然、森林火災が発生したとかなると原因は大体が落雷か観光客の不始末だからな」


お読みいただきありがとうございます。

今日は2020年の大晦日。

皆様、よいお年をお迎え下さい。

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