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逢馬ヶ刻〜陰陽師奮闘譚  作者: 静ヶ崎 顯
術師翻弄
18/44

第1話


 1月9日。

 その日、逢馬は無柳(ぶりょう)(かこ)っていた。

 同僚が殉職した上に敵方の手がかりは少なく、一旦の終結をみせたものの足取りを追うことは困難を極める。

 あの日、二組八人の損耗率は五十%となった。

 四人で一組が基本の陰陽寮・戦闘部隊で二番組が一時欠番となり、生きているもので組を再編成した。

 組の行動方針は正月騒動で敵対した勢力への即時戦闘だ。

 逢馬以下、岳多、芒野、道野で構成された一番組は出撃待機である。


 逢馬率いる急造の一番組寄せ集め部隊の休暇は4日までで、5日は出勤日であった。

 5日にはどうしても行かねばならない場所があり一両日でもって往復してきた。

 今回の騒動に在って陰陽寮でも唯一、逢馬だけが行くことを許された場所がある。

 そこへ出向いた用件は言わずと知れた正月の騒動である。

 其処の主たる彼の御方に願って今回の騒動を目立たなくしてもらったのだ。

 騒動そのものの印象を薄くしてもらおうと陰陽寮は画策したが対価が足りず、結局のところ蒼い大文字に眼が開かなかった、というところで落ち着いた。

 余った対価で武者の詳細を聞いたが、ヒントがただ一言だけだった。

「過去の怠慢と見逃し」


 逢馬が帰還して式気門長に報告したが上記の一言のみでは絞り込みの仕様がない。

 今でこそ陰陽寮は所属員の方向が害有る妖の退治に向いている。

 だが、それでも文官と武官は仲が悪く、価値観の違いでバチバチしている。


 具体的には傷の多寡で陰陽師の格を測ろうとするものたちの派閥がある。

 彼らにとって今回リタイヤした鯨間綴は陰陽師の最底辺、というわけだ。

 特に彼らが質たちが悪いと評される一端に、悪口は必ず陰で。というのがある。

 陰で云われる悪口ほど面倒くさいものはない。

 残念ながらこの魔法世界に秘密は存在し得ない。

 海外の魔法では言葉や小道具による鍵がないと開かない秘密の記憶、箱、部屋などがあるが空間に術式を掛けることができる陰陽師たちの前には無力である。

 唯一不可能なのはヒトの時間移動タイムワープくらいなものだ。 


 そのことは優秀な陰陽師ほど理解している。

 属性に達者になるには行で可能なことと相剋の関係を理解する必要がある。

 そうなれば、自分達の発言は必要があれば全て聞かれることもあるという判断に達する。 


 つまり、声とは空気の、風の振動である。

 加えて彼らの部署部屋という空間に限って時間を巻き戻し動く風の動きを再現すれば完了である。

 現場に赴くことさえ叶えば盗聴器は不要となるのだ。


 そして武官どもは基本的に気が短く短絡的である。

 一応のストッパーになりそうな人員は居ても元滝口や侍の家系であることが多く。

 侮辱には敏感である。

 特に20年ほど前に綴が言われていた陰口が発端で名田が調査部門の幹部二名を半殺しにして名田自身も一時重体にまでなり、両部門の門長が決闘までしてようやく収める事件があった。

 だが、当時の幹部も名田も既に陰陽寮に無く、門長も代替わりしている。

 そこに今回の騒動である。

 戦闘部門が二組壊滅して、名田・綴・橋賢が職務から降りた。

 おかげでまた、ここ最近険悪な関係になりつつある。

 ◆◆


 で結局のところは、敵勢力が次に行動するまで待機、となった。

「これだけじゃな、、ああ、閑だ」

 逢馬は今日も今日とて、ネットサーフィンで不思議現象の情報収集である。


「一番組は残留が俺だけかぁ、寂しいなぁ」

 仕事は振られないが、死者が出ても出勤義務がなくならないあたり、相当なブラックである。

「まあ、病気は無縁だけどな」

「ウイルス、病原菌は術式印で滅殺できますしね」

「ハラスメントも仲良い先輩に相談すればぶっ飛ばしてもらえますし!」


「「、、おまえにハラスメントは無かっただろ、、。」」

 道野と仲が良いのは岳多たけだだ。

というよりも。

「お前がそもそも強いだろ」

「撲殺されるわ」

「いや、私は無かったですけど、友達が。岳多組長と私と私の使役妖でフクロにしてやりましたよ!」

 超、自慢げ。

「それって、どこの門かど?」

「四季さんです。四つの季節」


 何か聞いたことある流れだ。

「最近?」

「去年ですね」

「逢馬さん、文官陣がウチらに風当たり強いのって」

「言うな。。」

 頭痛が痛い。。。


 芒野、道野と三人、暇を潰す。

 岳多は調べ物とかで資料室だ。


 午後17時。

 頭の後ろで手を組み、背もたれに体重をかけてニュース番組が流れるモニターを眺め始めた。

 情報収集のため映っているテレビも他所属員の集中を乱さないために消音されていた。


「ん?」


 映っている公園は見覚えがある。

 陰陽寮の局員なら皆、知っている場所だった。

 テレビの音量を上げていく。

 当然ながら周りからの苦情は凄まじい。


「おい!待機員、煩っせぇぞ!」

「こっちは仕事中だ!」

「黙ってカップ麺食ってろ!」

 ・・・凄まじい。


 だが、焦点になっている公園に釘付けの逢馬には届かない。

「なあ、これって十思公園だよな」

 モニターの向こうにいるアナウンサーが逢馬を肯定した。

「今も現地では伝馬町を中心に警察と有志の町内会員が捜索を続けています。以上、現場の、十思公園からお伝えしました」

 

お読み頂きありがとうございます。

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