102【それぞれの思惑】
A国の王宮は表彰やらお祝いやら慌ただしかった。
だけど、ミルカさんたちC国の人は参加できないと言われ、ミルカさんたちは帰国することにした。
ミルカ「見送りなどいらぬのに。」
双星「ミルカさん大活躍だったじゃないですか。それなのに町の中にも入っちゃダメとかひどいですよ。」
双星「だから俺も祝勝会には出ません。抗議ですよ!」
ミルカ「別に構わん。一度援軍に行ったところで、敵同士なのは変わりない。」
ミルカ「敵の混乱につけ入るのは普通のこと。ならば警戒するのも当然だ。」
双星「そうだけど、でもそれじゃあミルカさんたちが報われない気が・・」
ミルカ「仕事だ。やるべきことを淡々とこなすのみ・・国に仕えるとは、国民に奉仕することだ。」
ミルカ「見返りがほしいなら民間企業で働けばいい。」
かっこいいなぁ。俺も国に仕えてたらミルカさんみたいに・・あれ?
そういや俺の仕事は馬小屋の飼育員。ただし、お国に雇われている・・あ、俺も国に仕えてた!
ミルカ「以前ブラウン戦で共闘したときは、あまりお前の実力が見られなかったからな。今回は敵軍の大将や魔王を倒すのを見れてよかった。」
双星「いやー全部偶然なんですけどね。」
ミルカ「本当に偶然なのか?」
双星「本当に偶然です!」
ミルカ「・・70年ほど前も、なにをしても偶然うまくいく男がいた。」
双星「え?」
ミルカ「以前その話を聞いた時は半信半疑だったが、お前もそうなら昔もあったのかもな。」
双星「え、え、その話詳しくお願いします!」
もしかして俺と同じ?
ミルカ「私もそこまで詳しいわけじゃない。ギャンブルは絶対勝ち、喧嘩は相手が自滅し、予言は100%当たるとか、そんな話だ。」
ギャンブルは俺もなぜか勝っちゃうんですが。
ミルカ「その男はA国で革命を起こして王となり・・そしてA国をC国に売り渡した。」
ダークエルフ「まさか・・」
ミルカ「A国を無茶苦茶にして、今も続くC国とA国の不和の種を作った。だが、誰もそいつには逆らえなかった。」
ミルカ「絶対的な強運。誰もがどうすることもできなかったと言われている。」
俺と同じ?
双星「その人、今はどうしているんですか?70年前だから、もしかしたらギリギリ生きてるとか・・」
ミルカ「A国を売ったすぐ後に殺された。犯人が誰かもわかっていない。」
双星「え・・誰も逆らえなかったんじゃ・・強運は?」
ミルカ「わからん。異常なほど強運に愛され、そして不審な死で幕を閉じた。そんな男がいただけの話だ。」
俺も・・不審死しちゃう?
もしかして、その人は運を使い切ったとか?
ミルカ「では私は自分の国に帰ろう。中々楽しかったぞ。」
双星「う、うん。こっちも助かりました。ありがとうございます。」
ミルカ「A国が嫌になったらいつでもC国に来い。歓迎するぞ。」
チュッ。
ミルカさんが俺の・・頬にキスをしてから帰っていった。
あ、あれ?
メイド「これはお仕置きですね。」
ダークエルフ「路地裏」
人気のないところへ連れて行かれた俺は、拷問を受けミルカさんとの関係を吐かされた。
といっても、ミルカさんとはなにもないよ!!!
・・
・・・・
国王「ははは、さすがヒミカだ。100万程度の魔族など敵ではないな!」
ヒミカ「魔王が倒されたおかげです。私などまだまだ。」
国王「そう謙遜ばかりするな。お前がいたからこその勝利だ。」
大臣「王様、そろそろスピーチの時間です。」
国王「おおそうか!我も負けずに感動的なスピーチでもしよう。」
上機嫌で王は大臣と支度しに行った。
ヒミカ「(・・ここまで大規模な戦いは初めてだったが、我ながらうまくできたと思う)」
ヒミカ「(双星は魔王を封印したが、私とて負けない活躍をしたはずだ)」
ヒミカさんは功労者一覧を見た。
第一功労:ヒミカ
第二功労:双星
何度も双星の計画に翻弄され、自分の未熟さを恥じていたが・・双星に負けない働きができた。
そもそも双星は猿の手に頼んで魔王を封印しただけではないか。
どうせ封印は破られ復活するというなら、あの場で倒せばよかったのだ。
それができなかった時点で、双星の活躍はその程度なのだ。
兵士「ヒミカ様・・その、B国の者が手紙をヒミカ様に渡してくれと・・」
ヒミカ「B国?手紙を運んだ使者はどうした?」
兵士「すぐいなくなりました。どうしましょうか?」
ヒミカ「まぁ構わぬ。注意して開けるとしよう。」
兵士から手紙を受け取り、封を開けた。
中には便箋が入っていた。
”この手紙がA国の方に見てもらえることを願っています。”
”私はB国の王女、シャルロットです。”
ヒミカ「シャルロット王女?」
武闘大会で双星と闘った相手。
まだ16という若さで姫騎士と言われるほどの実力者。
”B国は魔王が出現したこの機会に、A国を攻めようとしていました。”
”A国と魔王、どちらが勝とうと残った側は疲弊する、そこを攻めようと・・”
手紙には信じられないことが書かれていた。
B国とは同盟を組んでおり、70年前から10年前まで行き場を失ったA国の王族を庇護してもらっていたほどだ。
”しかし魔王が封印されたことで、どの道A国と魔王の両方と戦わなければならなくなることから、今回の出兵は見送られました。”
”A国のブラスト殿が亡くなってから、B国の野心は表に出ようとしています。”
”A国のみなさんは気を付けてください。”
”私はこのことをA国へ伝えようとして、王宮に軟禁されました。”
”どうかこの手紙がA国へ伝わりますように・・”
手紙はそこで終わっていた。
ヒミカ「・・」
ヒミカさんは、急いで土門将軍のところへ行った。
土門将軍「ヒミカ、お祝い事の席ではそんな怖い顔をするな。」
ヒミカ「これを。」
土門将軍「ん?・・・・そうか、ついに・・か。」
ヒミカ「将軍?」
土門将軍「場所を変えよう。ここでする話でもない。」
・・
・・・・
土門将軍「B国の野心は昨日今日の話ではない。」
ヒミカ「では以前も?」
土門将軍「ここA国がC国に支配されていた頃にはとっくにだろうな。もっとも、A国を取り戻すという名目であったが・・」
土門将軍「そして10年前、A国が独立するとき・・B国はA国の政治に口出しできるよう提案をしてきた。」
土門将軍「王は受け入れようとしたが、独立の立役者であるブラスト殿に断られた。」
ヒミカ「そのようなことがあったのですか。」
土門将軍「10年前は・・まだお主は子供だったからな。大っぴらに他言する話でもないから知らなくて当然だ。」
土門将軍「ブラスト殿はせっかく擁立した王を廃王することも辞さないとまで言ったのだ。」
ヒミカ「ブラスト殿はB国の野心に気付いていた。」
土門将軍「ブラスト殿だけだった。他の者は半信半疑か疑いもしなかった。」
土門将軍「かくいう儂も半信半疑でしかなかった。」
土門将軍「色々言われることもあるが、ブラスト殿はこの国にとって巨星であった。C国もB国も手出しできなかったのだ。」
ふと思い出した。
以前、双星に革命を起こさせ、その後で双星を追い落とす計画。
王や大臣、大手新聞社・・そして、B国も計画の一員だったことを。
ヒミカ「まさか、以前双星に革命を起こさせたときも・・」
土門将軍「今思えば、B国はこのA国に兵を入れる口実がほしかっただけかもな。」
土門将軍「王を人質にすることも容易だったであろうし。」
双星が・・それを防いだ?
土門将軍「今回も双星に助けられた。魔王を封印していなければ、今頃はB国と戦っていただろう。」
ヒミカ「双星はB国のことまで知っていて!?」
土門将軍「儂にはわからん。だがもしかしたら・・そうかもな。双星の元にはブラスト殿の腹心だった者もいる。」
ヒミカ「ダークエルフ・・」
土門将軍「ヒミカ、このことは内密にしろ。今B国と争うわけにはいかぬ。」
土門将軍「B国を敵に回せば、C国とB国の両方を相手にしなければならん。A国にそこまでの力はない。」
ヒミカ「はい。」
土門将軍「よいか、もしかしたらC国の名を騙り我らとC国を争わせようと画策する者がいるかもしれん。」
土門将軍「だが容易に信用するな。その裏でほくそ笑んでいる者がいるかもしれぬのだ。」
ヒミカ「はい。注意します。」
土門将軍「ではパーティに戻ろう。儂らがいないとわかれば大事にされかねんからな。」
双星は、魔族からA国を守るだけでなく、B国からも守っていたのか。
誰も知らぬところで功を成し、それを誇るような真似もしない。
お前はいつも私の想像を超えたところにいる。
まだもう少し・・お前の背中を追いかけるとしよう。
・・
・・・・
C国。
ミルカ「ただいま戻りました。」
王女「お帰りなさい。A国はどうでしたか?」
ミルカ「強力な魔道具を所有していました。攻めても甚大な被害を出すだけで終わるでしょう。」
王女「やはり・・以前あなたがA国に攻めてから表立ってA国の軍備に変化がないのは、少なからず対策があったから・・」
王女「なら、私たちはまずなにをするべきでしょうか?我がC国の敵は、A国や魔族だけではないのです。」
ミルカ「王族をはじめとする権力者、軍の中枢、魔道具、そして裏の世界・・その全てに関わりのある者の籠絡。」
ミルカ「今、この地は70年前と同じことが起ころうとしています。」
ミルカ「どの様な結末を辿るにしろ、鍵を握るのは・・」
王女「70年前と同じ、幸運を持つ者・・」
しばらく沈黙が場を支配する。
王女「・・なにはともあれお疲れ様。ゆっくり休んでください。」
ミルカ「はい。ありがとうございます。」
まだやるべきことは残っている。
王へ報告。詳細を記した報告書の作成。休むのはそれから。
でもその前に・・ミルカは仕舞っていたロケット(ロケットペンダント)を取り出した。
ロケットの中には男性の写真が入っていた。
ミルカ「パパ・・パパの魔剣があれば・・」
・・
・・・・
C国。国王の寝室。
そこには双星に関する報告書が山ほど積まれていた。
国王「・・前は半信半疑だったが、ようやく見つけた。10年・・長かった・・親友よ、息子の仇はワシが必ず取る。」
国王はミルカさんの報告書を読み、涙を流した。
・・
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