第7話 揶揄い上手?
「そういや立花、片桐さんと付き合ったきっかけってやっぱあの事故?」
「えっ?付き合ってないけど?」
僕の言葉に教室中の注目が集まった。
「お前まじかよ!毎日あんなに距離が近いのに!」
「そうだねぇ」
「もしかして立花くん、好みのタイプが片桐さん以上に可愛い子!?」
「そんなことないよ」
「じゃあ、誰が好きなの?」
興味津々なクラスメイトに、言ってもいいものだろうか。
僕の口から片桐さんに伝えたいのに。
僕は悩んで、とりあえず微笑んだ。
指を一本唇に触れるか触れないかの距離で当てて。
「内緒」
にこりと笑って言えば、クラス中が脱力した。
「立花って本当に立花なんだよな〜」
なんて、不名誉な言葉を投げかけられる。
「失礼だな」
「だって立花なんだもんな」
「まあ、あのクールな片桐さんが立花の前だとあんなに喜怒哀楽が激しくなるんだから何かしら脈はあるんだよ」
それは僕も思っている。
「来週の体育祭、格好いいところ見せなよ!」
「そうだな!……って、お前は足のことがあって出場種目を減らされたんだよな。どうしよう」
どうしようは僕のセリフだ。
いくらギプスが外れるとはいえ、まだ安静にしていなきゃいけない。
格好いいところを見せたくても球投げぐらいしか出場種目がない。悲しい。
相談したいけれど、みんなに知られるのは恥ずかしいしな。
さっき内緒って言っちゃったし。
そこで僕は考えた。
せめて、デザートの差し入れでもしようかな?
まだ梅雨前だし、暑くはないから常温でも問題ないお菓子とか?
みんなで食べてねって大袋のお菓子を渡したらどうだろう。
僕は閃いた!って顔をして、にんまり微笑んだ。
ちょうどバイト先の友人から僕が休みの間に色々なお菓子が入荷したって言っていたっけ。
帰りにどんな種類のお菓子が好きか聞いて、差し入れしよう!
「立花、楽しそうだな」
「やっぱり片桐さんが好きなの?」
「なんでもないよ」
そう言ってわいわい騒いでいたら予鈴が鳴って、みんな慌てて席に着いた。
僕は窓際の席で、片桐さんがどんなお菓子が好きか、どうやって聞き出そうか頭を巡らせた。
帰り道にまた片桐さんの自転車のサドルに乗って、自転車を押し歩く片桐さんを後ろから見る。
風に揺られ、さらさらした髪が靡く姿を見て何日経つだろう。
「片桐さんはさ、好き?」
また片桐さんが自転車を揺らす。
「えっ、あ、何をですか……?」
「何ってお菓子だよ」
「あ、お菓子ですか……そうですね、割となんでも食べますけどクッキー系が好きですね」
ふむふむ。片桐さんはクッキー系のお菓子が好き、と。
「……あと、あの、立花先輩。あんまり紛らわしい質問はちょっと」
「紛らわしいって?」
僕が首を傾げると、相変わらずすぐに赤くなる片桐さんが赤くなって答える。
「……好き、とか」
「わざとだもん。やめられないなぁ」
僕が笑いながら言うと、片桐さんが余計に赤くして叫んだ。
「なおのこと悪いです!」
こうしてクールな片桐さんがどんどん変わる様を見るのは楽しい。
僕にしか見せてくれない顔。
「片桐さん、好き?」
「はいはい、好きですよ。どんなお菓子でも」
「僕も好きだよ」
そっと耳元に近付いてみて囁く。
今度こそ自転車は倒れて、僕は頭と足を庇って転がった。
「すっ、すみません、立花先輩!」
「いやいや、僕も悪かったから」
へらりと笑うと、今度こそ助け起こされようとしていた僕はその手を離されて、どさりとお尻から落ちた。
非難を込めて見つめると、片桐さんがこれ以上なく赤くなって叫んだ。
「だから!立花先輩のそういうところが立花先輩なんですよ!」
ああ。また見慣れぬ顔が見れた。
僕が嬉しくてにこにこしていると、片桐さんは余計に赤くなって叫んだ。
ううん。片桐さん、僕が告白したら卒倒しそう。




