第6話 好きなタイプ
ギプスが外れる金曜日の受診まであと少し。
迷惑がかかるから、片桐さんには送り迎えは不要だって言ったけれど、接点が行きと帰りの送迎しかないから自分で言っておいてギプスが外れるのが寂しい。
不自然さがないように片桐さんとまた登下校に一緒に歩けないかな。
誘ってみて断られたらショックだしな……。
でも、打算的な僕は片桐さんなら絶対に断らないって思っている。
分かっているのに誘えない。
だって、本当に怖いんだ。
断られたらどうしよう。
格好つけて送り迎えはいいなんて言わなければ良かった。
つらつらと生産性のない考えがぐるぐる回る。
「どうかしました?立花先輩」
いつの間にか玄関先に片桐さんが来ていたのに気付かなかった。
「なんでもないよ」
僕は首を横に振って答える。
片桐さんの自転車のサドルに乗って学校へ向かう。
言ってもいいかな?
どうかな?
「ねぇ、片桐さんが良ければなんだけど、僕をこうして自転車に乗せなくてもいいから登下校一緒に行かない?」
片桐さんが立ち止まった。
「……立花先輩が良ければ」
「良かった!登下校デート出来るね」
「な……!だから、そういうのは好きな子に言ってください!」
赤い顔で怒られても怖くはない。
ただただ可愛いなぁとしか思わない。
だから怒られるって分かっていてもつい言ってしまう。
「片桐さんって可愛いね」
「……立花先輩も可愛いですよ」
うわっ!反撃された!
「顔、赤いですね」
片桐さんが笑う。
「赤くなるよ」
僕はいつもの片桐さんくらい赤いだろう。
体温も上昇している。
「ねぇ、片桐さんの好きなタイプってどんな人?」
片桐さんは僕をチラリと見て、答えた。
「そうですね……。可愛いけど、無自覚で、こちらを試してくるのが腹立たしくて、振り回されて、でもやっぱり好きで許せちゃうっていうか、この人ならしょうがないなぁって思っちゃうんですよね」
「具体的だね」
「理想論です」
片桐さん、そんなふうに思ってくれていたんだ。
片桐さんはチラリと顔をこちらに向けて、尋ねる。
「……立花先輩はどうなんですか?好きな子のタイプ」
少し期待した目。
「僕の好きなタイプは好きになった人かな?今なら反応が可愛くて、可愛いとか言ったら首まで真っ赤でそんな反応も可愛くて、でも言いすぎちゃうと怒られるからあんまり言えないんだけどね。対等になれないから、せめて成績がもっと良くなってから告白したいな」
それから体育祭ではこの足のせいでろくに競技にも参加させてもらえていなくて応援くらいしか出来ないけどね、と付け加えて言うと、片桐さんは振り向いて呟いた。
「立花先輩、好きな子がいるんですか?」
「うん。毎日会っているけど、毎日可愛い。本当はギプスが外れても毎日会いたい」
またいつもは丁寧に僕を運んでくれる自転車が揺れた。
「それは、つまり……期待していいってことですか?」
「さてね、どうだろう」
僕が笑いながら言うと、また真っ赤な片桐さんが語尾を荒げて言う。
いつもならクールなのに、僕にだけ違う面を見せてくれる。
それが嬉しい。
「立花先輩のそういうところが、立花先輩なんですよ!」
怒りながら自転車は進む。
ううん。からかいすぎたかなぁ。
でも、片桐さんが僕にもっと興味を持ってくれたみたいで良かった。
怒られたけれど、今日も片桐さんが可愛いことだけは分かった。
良かった、良かった。




