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ふたりでなら、どこまでも  作者: 千子


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帰り道

帰り道。

今日も椅子に座らされて持ち主は僕を乗せて自転車を押して帰っている。

わざわざ遠回りしてさ。

何気ない話の中で、僕はバイトを休んでるって言ってしまった。

「バイトしていたんですか?なら、バイト代払わせてください。私のせいで今休みなんですよね?」

「ギプスが外れる今週末までだから大丈夫だよ。それに、片桐さんにそんなことさせられないじゃん」

「そんなことは……怪我の原因は私ですし」

「そう、それなんだけどさ、今週末にギプスが外れるから来週からは送り迎えもいいよ。今までありがとう」

にこりと微笑めば、また美麗な片桐さんの顔が歪む。

「そう……ですか、それは良かったです」

「もしかして、寂しいって思ってくれてる?」

言えば、すぐに赤くなる。

バレバレなんだもん。

「ギプス外れてバイト復帰したらさ、今週末まで送り迎えしてくれたお礼になにか奢るね」

「あ、ありがとうございます」

僕はまた笑った。

「デートの約束出来たね」

「デ……!デート、ですか?」

また赤くなる。

可愛いなぁ。

これをそのまま伝えたらどうだろう?

「可愛いね、片桐さん」

「いい加減、揶揄わないでください!」

ちょっと荒げた声。

ここまではまだダメ。

焦らず見極めないと。

僕と片桐さんの距離。

「揶揄うなんて心外だな。本心だよ」

「なおのこと悪いです!」

真っ赤な顔は迫力がない。

心なしか涙目だ。

泣かれるのは僕としても困る。

「ごめんね」

「いえ……こちらこそ声を荒げてしまい申し訳ありません」

ゆっくり、ゆっくり。

自転車が進む速度のように。

片桐さんはなんでか僕のことを好きらしいけれど、本当になんでだろう。

どこまでが今の僕に許される範囲か見定めて、のんびりと過ごす。

可愛いなぁ、片桐さん。

そう言ったらまた怒られるかもしれないけれど、僕が好きって言って付き合えるようになったら笑い返してくれるんだろうか。

そんなことを思いながら自転車は乗せている僕のことを気遣ってくれてあまり揺らさないようにゆっくり進んでくれる。

しかも遠回りというサービス付きで。

そんなに僕といたいのかな?

また怒られそうなことを考える。

片桐さんの琴線に触れないように、好きって言えるように、対等になってから言えるようになるって難しい。

というか、文武両道、学校一の美少女の相手なんてどうやったらなれるんだろう。

成績は全部平均、顔もそこら辺にいそうな顔、なんで片桐さんは僕を好きなんだろう。

疑問は尽きない。

「ねぇ、片桐さん。恋って難しいね」

「……そうですね」

少しの間と肯定。

後ろから見る片桐さんは風に吹かれる髪の隙間から首まで赤いことが分かる。

うぅん。

片桐さん、絶対僕のこと好きじゃん。

分かりきっているのに、片桐さんから僕に告白する気配はない。

僕からの告白を待っているみたい。

そういうところ、乙女で可愛いな。

「そういえば、もうじき体育祭だね」

「そうですね。同じ紅組で嬉しいです」

「僕もだよ。頑張ろうね!」

「はい」

そんな会話をして、今日もゆっくりと帰って行った。

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