第13話 可愛い×格好いい
あれから病院へ行ったらまた骨折していたと言われギプス生活に逆戻り。
両親からは危険な行動をしていたことも含めて散々怒られた。
でも、片桐さんを守ったことだけは褒められた。
「彼女なの?」
って聞かれて、また見栄を張って内緒と答えてしまった。
「はいはい。まだ彼女じゃないのね。頑張りなさい」
……親にはすべてお見通しらしい。
それからはまた片桐さんの自転車に乗って、後ろから彼女を見るばかり。
「すみません、立花先輩。私のせいでまたそんな目に遭って」
チラリと僕の方を見て、片桐さんが申し訳なさそうに言う。
「気にしないで。僕がしたくてしたんだから」
笑えているだろうか。
痛み止めを飲んでもまだ痛い利き足。
「それより僕の方こそごめんね。怖かったよね。もっとちゃんと助けられたら良かったのに」
しょんぼり言うと、片桐さんは前を向いて言ってくれた。
「あの時も言いましたけど、立花先輩とっても格好良かったです」
キラキラと輝く太陽を見ながら。
梅雨ももう終わりそう。
片桐さんの心に日差しが灯せたらいいな。
学校に辿り着くと、僕が初めて片桐さんに自転車に乗せられて学校に来た時くらいの騒動になった。
自転車置き場に自転車を置いて、松葉杖をつこうとすると片桐さんがフォローしてくれた。
それがとても自然で、格好良くて、僕の好きな人は本当にすごいって思った。
「大丈夫ですか?先輩」
「う、うん……」
なんとか松葉杖をついて歩いていく。
でも、前と違うことが一つある。
前は遠慮気味に後ろから見守っていた片桐さんが、僕の隣を歩いてくれる。
それがとても嬉しい。
「ふふふ」
小さく笑うと片桐さんが僕の顔を覗き込んだ。
「どうしたんですか?立花先輩」
「片桐さんってすごく可愛くて格好いいよね」
「なっ、そっ、そうですか?」
また赤くなる片桐さん。
これで格好いいもあるんだもんなぁ。
ずるい。
そう思っていると、今度は片桐さんが笑った。
「立花先輩も、可愛くて格好いいですよ」
今度は僕が赤くなる番だった。
「可愛いは、不本意かな」
「でも、可愛いです」
お互い褒め合いながら下駄箱まで行っていた僕たちは、自転車置き場で僕たちが去った後に噂されていたことなんか分からなかった。
「あいつら、あれでまだ付き合ってないらしいぜ」
「本当に、なんで付き合わないんだろう」
「見ているこっちが恥ずかしくなる〜!」
「私も彼氏欲しいなぁ」
僕たちの耳に入ってこなくて良かった。
聞こえていたらまた真っ赤になるところだった。
下駄箱で別れると、僕は教室に向かった。
そうしたら一斉にクラスメイトが集まってきた。
「ちょっと、立花!片桐庇って骨折ったらしいじゃん〜!ここ?大丈夫〜?」
ペシペシギブスを叩く前も相談に乗ってくれた女子生徒。
痛いから勘弁して欲しい。
「なんで知っているのさ」
「うちの母さんがおたま持って不審者退治に乗り込んで行ったからね〜」
あの勇敢なおばさん、君のお母さんだったの!?
なんて突っ込みが頭をよぎったけど、言う前に他のクラスメイトに揉みくちゃにされた。
「そうなんだよ、立花ー!俺の親父も行ってたぜ!」
「うちの両親も!」
どれだけの確率で見られてたんだ!?
僕は慌てて首を横に振った。
「そんなに格好いいもんじゃなかったよ!」
「いいや!命懸けで愛する女を守ったら立派な男だよ!さっさと告白しちゃいな!」
そのまままた賭けの更新が始まった。
胴元がノートに日数と金額を書き込んでくる。
「もう!僕らのことで賭け事はやめてって言っているでしょう!」
僕が怒ると、女子からは立花くん可愛い〜!なんて言っているし、男子生徒も片桐さんは可愛い男が好きなのか……なんて感傷に浸るし、もう僕ってばどうしたらいいの。
途方に暮れていると、女子生徒が僕に声をかけた。
「立花。私は二週間に賭けた。二週間後に告れよ。絶対」
「なんなの!もう!」
「ギプスにも片桐にアピールするように書いといてやるよ」
「やめてってばー!」
それでもギプスを掴まれて書かれそうになった時、予鈴が鳴った。
「ちっ、ここまでか」
「助かった……」
それでも女子生徒は諦めなかった。
「立花!二週間だぞ、二週間!」
「だから、放っておいてよね!」
こうして、僕のクラスでカウントダウンが一方的に始まった。
かなりの大声だったらしく、下の階にまで聞こえていたなんて思いもしなかった。




