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ふたりでなら、どこまでも  作者: 千子


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10/16

第10話 体育祭

いよいよ体育祭がやってきた。

いけるかな?格好いいって思われるかな?どうかな?

そんなことを考えながら、ドキドキしている。

僕の種目は球投げなんだけどね。

球投げで格好いいところ……たくさん球を投げる?

……格好いいかなぁ?

そうこうしているうちに球投げの時間になった。

「立花ー!無理はするなよー!」

「足が痛くなったらいつでも棄権しろよー!」

クラスメイトの温かい声に励まされて入場する。

この姿、片桐さんも見ているのかな?

そう思ったらやる気が湧いてきて、ちまちまとだけど動き回ってひょいひょいと赤い球を籠に向かって投げつけた。

結果は半々だった。

これは、格好いいかなぁ……。

もっと頑張らないと!と、思ったところで時間切れ。

終了のホイッスルが鳴り響いて、僕の競技は終わってしまった。

無念な気持ちが大きい。

これじゃあ告白なんて夢のまた夢だ。

きっと片桐さんはそんなこと気にしないだろうけれど、僕は気にするんだ。

あーあ。

足がこんなんじゃなければもっと活躍できたかもしれないのに。

でも、この怪我がなければ片桐さんとも知り合わなかったわけだし。

……そういえば、片桐さんは怪我をする前から僕のことを知っているみたいだった。

いつもうやむやにされていたけれど、今度聞いてみたい。

なんで僕なんかを好きになったのか。

すごく気になる。


次は片桐さんが活躍する番!

短距離走と長距離走と借り物競走に出る彼女は、短距離走も長距離走も難なく一位。

格好いいなぁ。

男女ともに声援が熱い。

この騒ぎなら、僕も言えるかな?

「片桐さん、格好良かったよー!」

すると片桐さんと目が合った。

にこりと微笑む片桐さんの笑顔は、クールな彼女がたまに見せる笑みとして、より周囲を騒つかせた。

でも、僕だけが知っている。

あの微笑みが僕に向けたものだって。

僕は赤くなって手をめいいっぱい振った。

片桐さんも振り返してくれて、周囲からの注目が僕たちに集まっていることなんて気がつかないくらいお互いしか見えていなかった。


「これ、みんなと食べて」

お昼ご飯には片桐さんがいる紅組一年のクラスの集団に一人で向かうのは気恥ずかしかったけれど、片桐さんが牽制してくれたおかげでなんとか手渡すことができた。

「ありがとう」

「いえ」

受け取ってくれたお礼を言って、自分のクラスに帰ろうとすると、女の子が一人、僕に尋ねてきた。

「すみません、立花先輩。立花先輩たちっていつになったら付き合うんですか〜?」

気管支がむせた。

「こら!変な質問しない!」

「うーん。……内緒」

唇に一本指を立てて曖昧に誤魔化す。

クラスからはまた大騒ぎだし、片桐さんは期待の目で見てくるから早々に退散した。

だってまだ格好いいところを見せられていないんだもん。

これは僕の矜持。

午後の中盤戦にはお祭り騒ぎの借り物競走!

片桐さんが颯爽と走りお題の紙を取ると、絶望した顔になり、頭を抱えてしゃがみ込んだ。

十秒程悩むと、何かを探してキョロキョロ辺りを見回す。

目と目が合ったら、片桐さんが真っ直ぐにこちらへ走ってくる。

「立花先輩、私と一緒に来てください!」

そう言って手を伸ばしてくる片桐さんに、クラスメイトから押されながら思わず手を伸ばす。

手と手が触れ合う。

小指だけじゃ無い、しっかりと手を握り合う。

「立花先輩、失礼します」

そう言うと、肩を担ぎながら二人三脚で走り出した。

えー!どうしよう。

「片桐さん、お題なんなの!?」

「それは……秘密です!」

片桐さんは僕を気遣いながらも少しずつペースを早めて見事一位になった。

『紅組、一年片桐選手ゴールです!』

放送部の声がどこか遠くに感じる。

とにかく疲れた。

足が全開ならこの程度、なんてことないのに。

「片桐選手おめでとうございます!お題の内容を確認してもよろしいですか?」

実行委員の生徒が片桐さんからお題の紙を受け取って、中身を見ると、ニヤリと笑って片桐さんに尋ねた。

「これ、お題の内容を公表しても大丈夫ですか?」

「勘弁してください」

また片桐さんがしゃがみ込む。

「いやぁ、あのクールな片桐さんがねぇ。お医者様にも治せないって言いますしねぇ」

僕は片桐さんが顔を隠してしゃがみ込んでいる間に、実行委員の人に尋ねた。

「なんて書いてあったんですか?」

「それは片桐さんの名誉のためにも言えませんね」

「どうせ好きな人とかそんなところじゃないでしょうか?」

お医者様にも治せないって言ってたし、片桐さんの言動を見ていたら分かるよ。

「なんだ。もうお付き合いされてるんですか?」

僕は見栄を張って「内緒」と答えた。

とにかく、片桐さんの大活躍で紅組が優勝した。

勝てないなぁ。

僕から告白するなんて、まだまだ早い。

一体いつになったら告白できるんだろう。

僕のちっぽけなプライドさえ捨てれば早く叶うのに、情けない僕は片桐さんと釣り合うことしか考えていなかった。

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