メタフィクション その伍
このエピソードは、本編になんの関りもありません。
また、物語の世界観にそぐわない発言も多々ありますので、そう言うことが苦手な方は他のエピソードを読んでいただけると幸いです。
それでも良いよと言う方は、是非お目通し下さい。
「そう言えば、ここでの話は先月に終わる予定だったみたいよ。」
定期的に訪れる白い空間で、部長は僕に向かって口を開いた。僕がこの空間を認識した時には、部長は既に目の前におり、何処から生えて来たのか分からない椅子に腰を下ろしていた。
「何の話かはよく分かっていませんが、この夢を見るのが七月までってことですかね?」
「そう言うこと。でも、画面の向こうに居る人間がまだ話したい事があるって言うから……。仕方なくこうして話している訳よ。」
「確かに、場所も固定でいる人間も僕達二人。話す内容もこれからの学校生活にも同好会活動にも影響しないとなれば、多少は楽なのかも知れないですね。何のことか分からないですけど。」
僕はそう言いつつ、部長と向かい合う様にして空いている椅子に座る。何処に椅子があったのか、はたまた何処から出てきたのかは、もう気にするだけ無駄なことだろう。
全ては僕の夢の中。例えこの場所で僕が何をしていようと、現実世界には何の影響もない。そう思うとかなり気持ちが楽だ。
「ところで、話したいことって何なんですか?勝手な妄想で申し訳ないですが、余り大した事じゃない様に思えるんですけど……。」
「大した事じゃないわよ。」
部長は足を組みながらさらりと言い放つ。僕も大概失礼なことを言った自覚があるが、部長本人がこの空間の存在意義を否定している様だった。
「この場所って、いわば自室に置いているノートの落書きだからね。深い意味はないし、意図も意義も無いわ。だからこそ、私も肩の力を抜いて言い訳だけど……。」
部長は身体を大きく伸ばして、大きく息を吐いた。
僕達は椅子に座ったまま向かい合い、中身の無い会話を交わす。どうせ目が覚めたら覚えていないのだから、どんな話でも出来る。
「そもそも言わせてもらうけど、私の胸って小さい訳じゃなかったのよ。正子にそう言う描写が入った所為で、相対的に私の胸が小さくなったのよ。」
「いや、部長は元々……。」
「だまらっしゃい。本来の私は美人でちょっとエッチで勉強も運動も出来る完璧超人なのよ。正子が少し男勝りなポンコツで、旭はお淑やかな完璧超人と言う初期設定が……。」
「別になかったですよね。そもそも初期設定って何ですか?」
「さぁ、私にも分からないわ。」
散々好き勝手なことを言った挙句、部長はそう言って肩を竦ませる。
話題を変換して、部長が言っていた画面の向こうにいる人間の話したい事についてだ。
「そう言えば部長、まだ話したい事があるって言っていましたけど、何のことですか?僕には、皆目見当もつかないのですが……?」
「そうね。私達が好き勝手話していても仕方がないし、生産性の無い話をしましょうか。」
どう転ぼうと生産性の無い話なのか。そう思ったが、敢えて言及することでもないと思い黙っておく。
「それじゃあ、何から話しましょうか。最近私達のスタンスが若干変わってきている話をしましょうか。」
「スタンスが変わった話?よく分かりませんが……。」
「元々、遊興同好会のメンバーは私達三人だけど、具体的に会話をしたりゲームをしたりするのは三人の内二人なことが多かったわ。その方が分かり易いし、何かと楽だし。まぁ怠慢よね。」
「散々言いますね。でも確かに、僕と部長が遊んでいて先輩はひとり読書をしていることが多かったかも。僕と先輩がゲームをする時は、部長が居残りだ何だと言っていないことが多かったですよね。」
「でしょ。初めの方はそう言う場面が多かったし、三人よりも二人で遊んでいたわ。それが最近では私と正子、優君の三人で会話することが増えている。時間が経ってより親密な関係になったと解釈して頂けると嬉しいわ。」
「誰に向かって話しているんですか?」
突然何もない方向に向かって話し掛ける部長を目にして、僕は少しだけ身じろぎする。
そんな僕の様子などお構いなしに、部長は話を続ける。
「それは良いとして……。遊興同好会が三人で行動するようになってから、貴方と二人きりで過ごす機会が増えた人が居るでしょう?」
二人きりで会う機会が増えた人。思い当たる節があったので僕はすぐに口を開いた。
「白亜ちゃんと、コールのことですか?」
「そう。彼女たちは優君と一対一で話すことが多いわ。白亜ちゃんに関しては、貴方がひとりで神社に向かっているから仕方ない面もあるけれどね。コールちゃんに関してはいつからか、部室で私や正子と遊んでいる姿を見ないでしょ。」
「言われてみれば……。」
部長の言う通り、コールが何か話し掛けてくるのは僕がひとりで居る時が多い気がする。それ以外の時でも、時折部長や先輩と将棋やチェスに興じているのだが。僕の携帯に居るためか、僕と話す機会ばかりになっていると言うのは紛れもない事実だろう。
話を戻す。
「私と正子が二人でいるように、コールと白亜ちゃんが関わり合うことで、常に三人以上の登場人物がいる状況を作り出せるかも知れないわね。尤も、あの二人が仲を深めるのはまだ先のことになりそうだけれど……。」
貴方が休みの日に携帯を持ち歩かない所為よ。部長はそう言ってクスリと笑う。
耳が痛い話だ。携帯を持って神社に行かなければ白亜ちゃんの連絡先も知らないままだし、いい加減改善しなければ。記憶に残らない夢の中で密かにそう誓う。
「まぁ結局のところ、この空間はこれからも出続けるかも知れないし、私と正子が優君と二人きりになる機会は減るかも知れないってことね。」
部長が雑にまとめた次の瞬間、僕の意識は現実へと引き戻された。
日程的にも一区切りと言うことで、明日も投稿いたします。それ以降はいつもの様に隔日投稿になります。




