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合宿の終わりに

 夏合宿二日目兼最終日の朝。僕達は神社の管理人である青嵐さんに挨拶をして、神社を後にした。


「有意義な時間になったわね。」


石階段を下りつつ、部長は大きく身体を伸ばす。


「そうだね。普段とは違う、非日常を過ごせた気分だよ。」


正子(しょうし)先輩も満足そうな表情で、同調する。二人の後ろを歩いていた僕も、それに頷いた。

 朝になって僕達は布団を片付けた後、神社にお参りをして管理人への挨拶も済ませた。


「もう少し泊って行っても良いですよ。白亜(はくあ)も、その方が喜びますよ。」


青嵐さんはそう言って白亜ちゃんに肩を揺らされていた。彼の気遣いに感謝しつつも、僕達は着替えを一日分しか用意していなかったので、名残惜しくもお暇させて頂く運びになった。

 夏の日差しが木々の隙間から差し込んで来る。眩しく蒸し暑さも感じる朝だが、合宿を終えた達成感からか心地良いものに感じられた。


「また、来年の梅見会でもお邪魔させてもらえるかしら。」

「向こう次第だけど、またお世話になりたいね。」


そう話しつつ、階段を下って行く。


「そう言えば、この後どうする?」


部長は唐突に後ろを振り向き、僕と先輩にそう話し掛けてくる。


「どうするって……。」


僕は戸惑いつつ聞き返す。合宿が終わったので山道の入り口まで一緒に歩き、そのまま解散だと思っていた。荷物もあるし携帯も自室に置いて来てしまったので、何処かに行くにしても一度家に帰るつもりっだたのだが、部長の考えは違うのだろうか。

 首を傾げる僕に向かって、部長はさらりと言い放つ。


「決まっているでしょ、同好会活動よ。まだ朝早いんだから、何かしないと勿体ないじゃない。青春は長い人生の中でほんの一瞬のことなんだから。」


青春を語る部長対し、正子先輩は溜息交じりに口を開く。


「まったく旭(あさひ)は、いつも唐突なんだから……。まぁ私は別に構わないけど、優君はどうする?もしも都合が悪いようなら、遠慮しなくても良いよ。」

「分かっていて聞いているでしょう。前にも言いましたけど、僕に予定なんてありませんよ。」


僕はそう言って、階段を降りる足を早める。


「それで、何処に行くんですか?学校に戻って何かしますか?」

「それでもいいけど、折角あから遊びに行きましょうか。白亜ちゃんも呼んでさ。」


そう言って部長は携帯を触り始める。その様子を見て、僕は目を丸くした。


「部長、白亜ちゃんの連絡先を知っているんですか?」

「うん、仲良くなったし当然じゃない?」

さらりと答える部長を見て、少し複雑な心境になる。

「僕だって、まだ白亜ちゃんの連絡先知らないんですけど……。」


僕がそう言うと、正子先輩がおもむろに肩を組んで来た。


「優(ゆう)君、普段から携帯を持ち歩かないのが災いしたね。可愛い彼女を取られて、嫉妬に駆られてしまったかな?」

「可愛いってことには同意しますけど、別に彼女じゃないですよ。ただ、僕よりも先に交流を深めているんだなと、そう思っただけですよ……。」


自分でも幼稚なことを言っている自覚がある。しかし、つい口を突いて出た言葉だった。片思いの幼馴染がいたとして、その子が自分の知らない人と交際関係にあったら、こう言う気持ちなのだろうか。

 言い終えた後で恥ずかしくなりそっぽを向いていると、先輩は笑い交じりを頭を撫でてきた。


「まぁまぁ、次に会う時にでも連絡先を交換すれば良いじゃないか。それよりもこれから何処に行こうか。」

「そうね……。白亜ちゃんの了承も貰えたし、みんなでカラオケにでも行きましょうか。」

「うーん。悪くはないけど、どうかな……。」


そんなことを話している内に、山道を抜けて街に出ていた。

 ふと携帯をみた部長が、足を止めて僕達に向かって口を開く。


「白亜ちゃん、今から出るみたいだから少し待ちましょう。」


そう言われて、僕と先輩も足を止めて待っておくことにした。夏の日差しが肌に刺さるが、我慢できない程でも無い。部長も右手で日陰を作り顔を隠しており、正子先輩は何処から取り出したのか日傘を差して日光を遮っていた。

 数分程して、白亜ちゃんが息を切らしながらやって来た。


「お待たせしました。」


肩で息をしつつ、白亜ちゃんはそう言ってくる。そんな彼女の手を握りつつ、部長はにこやかに声を掛けた。


「いいよ。私達がいきなり呼び出したんだし。それより、白亜ちゃんは何処か行きたい所とかあるかしら?」


そう聞かれた白亜ちゃんはキョトンとした顔をしたが、少しして控えめに口を開く。


「でしたら、あの、私。皆さんとお買い物に行ってみたいです……。私、学校でもこんな感じで、お友達と遊びに行くこともなくて……。その、皆さんが宜しければ、ですけど……。」


言い終えない内に、部長が白亜ちゃんをギュッと抱きしめる。


「うん、行こう。買い物に行こう。」

「相も変わらず可愛い後輩仮だ。私も抱きしめてあげよう。」


正子先輩はそう言うと、僕に日傘を預けて白亜ちゃんに抱き着く。

 白亜ちゃんは顔を真っ赤にして、硬直してしまった。


「さぁ優君。あとは貴方だけよ。」

「優君、私と旭はキミのことを信じているよ。」

「圧をかけてこないで欲しいです。それに、早く離れないと白亜ちゃんがミツバチに反撃されるスズメバチみたいになっていますよ。」


真っ赤になった後輩を救出するべく、僕は三人の元へ駆け寄った。

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