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遊興同好会夏合宿 そのさん

 管理人を見届けた僕達は、暫く互いに様子を伺っていたが、いつの間にか肩を寄せ合って遊び始めていた。


「はい。これで私の勝ちね……。」


トランプのカードを畳の上に落としつつ部長は得意気な表情を浮かべる。

現在僕達が興じているのは大富豪。白亜(はくあ)ちゃんが持っていたトランプを使用して、部長の提案でやっている。

 今は三戦目で、この勝負の結果で罰ゲームを受ける人間が決まる。今の状況は二戦目に一位になった部長がその勢いのまま三戦目も一位をさらっていった。残されたのは二戦目で富豪だった白亜ちゃんと、貧民だった僕。そして大貧民だった正子(しょうし)先輩の三人だ。

 手札をと捨てられたカードを交互に見て考える仕草を見せる正子先輩に、部長はそっと顔を近付ける。


「ふふん、今回は私の勝ちだった様ね。」

「次の戦いでは負けないさ。それは良いとして、この戦いに集中しないと……。」


先輩はそう言うと、六のカードを手から落とす。それを見て、僕は九のカードを出す。手札に八のカードがあり、これを使えば番をスキップして優位に立ちまわることが出来る。しかし、まだ三人ともカードをそこそこ持っている状態だ。生き急ぐこともないだろう。

 そう考えていると、白亜ちゃんがおもむろにK(キング)のカードを出してきた。対応札があればよかったのだが、貧民の僕と大貧民の先輩の手にそんなものは無かった。

 白亜ちゃんは手番が自分に回ると、あれよあれよとカードを消化して行って二番手で上がってしまった。残された僕と先輩は互いに顔を見合わせる。


「ここまではまぁ、予想通りかな……。それじゃあ優(ゆう)君、二人で頂上決戦といこうか。」

「頂上ではなく、最下層の決戦ですけどね……。」


そんなことを話しつつ先輩の番である。

 先輩は「ふむ」と声を出して、四の数字を出す。


「まずは様子見ってところですかね。」

「そうかもしれないね。疑り深いキミのことだ、もう少し互いにカードを消費してから仕掛けようと思っているんだろう?だから急ぐ必要も無いと思ったまでさ。」

「どうでしょうね……。」


心の内を見透かされている様で少し寒気を感じつつ、僕は精一杯強がってみる。

 僕の番に回ってきたが、どうしたものかとカードを見る。先輩の言う通りまだ互いに手札が四、五枚ずつあったので少し様子を見ようと思っていた。しかしその考えを看破された今、そのまま動いて良いものか悩む。

 恐らく、僕がこうして悩むところまで先輩の予想通りだったのだろう。先輩はカードで口元を隠し、目を細めていた。


「うーむ。いや、僕はあくまでも自分の動きを貫きますよ。」


そう言って七のカードを出すと、先輩は待っていましたばかりにJ(ジャック)のカードを出した。


「バックが適応されて、この順に限りカードの強さが反転する。」


先輩は怪しく瞳を光らせる。この時点で最強の数字である三の数字は既に三枚見えており、残り一枚は先輩が持っている事は確定したようなものだ。

 僕は慌てて八のカードこの順を無理矢理終わらせる。このままペースを奪われては危ういと思った結果の、守りの一手だった。カードを横に避けた後で、ハッと我に返る。優秀なカードである八を失った今、僕の手の中に決め手となるカードは存在していなかった。


「どうやら、事を急いてしまったみたいだね。」


カードを持って固まる僕を見て、先輩が悪い笑みを浮かべる。

 その後のことは、詳しく言う必要も無いだろう。僕の出したカードに対し先輩が返し、その後先輩がペアのカードを出したことでフィニッシュした。


「終わりだね。旭(あさひ)が一位で、優君が最下位だ。勝者は敗者に罰ゲームを言い渡す権利を持つ。」

「そうね。ゆっくりしていても仕方がないし、罰ゲームを決めましょうか。」

「旭先輩、お手柔らかに……。」

「お手柔らかにと言ってもねぇ……。そこに居る白亜ちゃんにも、この同好会のことを知ってもらいたいし……。」


部長と先輩は、いつの間にか白亜ちゃんのことを下の名前で呼んでいた。僕は何度かの会合の後に、向こうからの提案で下の名前呼びをする様になったのに。少し微妙な気分だ。

 僕が胸中に複雑な感情を抱いている間、三人娘は顔を使わせて僕の罰ゲームを相談している様だった。三人で頷き合い、部長と先輩が白亜ちゃんを指差している。白亜ちゃんは手を振り拒否している様だったが、根負けしたのか立ち上がり僕の方に向かって来た。


「あ、あの、優さん。その、罰ゲームなんですけど……。」


両手の指を絡めつつ、モジモジと身体を揺らしている。一番年下の子に罰ゲームの宣告をやらせるなんて、部長達も人が悪い。


「いいよ。それで、僕は何をすればいいのかな?」

「えっと……。ちょっと、耳を貸して貰って良いですか?」


彼女はそう言うと僕の耳元に顔を近付けて小さな声で囁く。暖かい吐息が耳に掛かり、思わず背筋がピンと張ってしまう。そんな僕の情けない姿を、部長と先輩は悪い笑みを浮かべ眺めていた。

 白亜ちゃんは要件を言い終えると、顔を紅くしてそそくさと離れて行った。黙っていても仕方がないので、僕は罰ゲームを実行すべく口を開いた。


「旭部長も正子先輩も、ぼ……俺のこの話し方がそんなに面白いのか?だぜ?」


僕の言葉に、部長は肩を震わせながら言葉を返す。


「んふふ。まぁ面白いと言うよりも目新しさがあるのよね。」


相変わらずな反応。ふと白亜ちゃんの方に目を向けると、彼女も口元を抑えてそっぽを向いてしまっていた。

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