メタフィクション その肆
このエピソードは、本編になんの関りもありません。
また、物語の世界観にそぐわない発言も多々ありますので、そう言うことが苦手な方は他のエピソードを読んでいただけると幸いです。
それでも良いよと言う方は、是非お目通し下さい。
またまた、真っ白な空間。もう四度目にもなると、色んな事に慣れてきた。
忘れる事も思い出すことも、この空間を再認識することにも、あまり動じなくなった。異常な現状に慣れて来たのか、僕の頭がおかしくなって来たのか……。
いずれにせよ、この空間に来るときはいつも誰か知り合いがいるのだが、今回は僕ひとりだろうか。
「あ、あの、優さん……。」
背後から耳に馴染んだ声が聞こえたので振り返ると、巫女装束に身を包んだ可憐な少女が背後に立っていた。
「あ、白亜ちゃん。」
「は、はい。その、こんばんは……。」
僕が名前を呼ぶと、少女は小首を傾げて可愛らしくはにかんだ。
真白な空間の中、僕達は向かい合って立っている。
何か話したものか、その前に何処かに腰を据えた方が良いだろうか。そんなことを考えた拍子に、足元に畳があることに気がついた。
「積もる話もあるだろうけど、取り敢えず座ろうか。」
畳の上に腰を下ろしつつ、白亜ちゃんにも座る様に促す。彼女は軽く頷き畳の上に膝を着けた。
僕は胡坐をかいた姿勢、白亜ちゃんは正座をして向かい合う。彼女は緊張しているのか、肩に力が入っている様に見える。
僕は彼女の緊張をほぐす為に、聞き齧った認識でこの場所について説明する。
「ここは、いわゆる夢の中の様な場所でね。ここでの会話や出来事は、目が覚めると綺麗に忘れてしまう。そして、再びこの場所に訪れるまで決して思い出すことは無いんだ。多分ね……。」
言っている内に自信が無くなって来たので、最後に付け加えておく。
「そ、それじゃあ、ここは私の夢の中ってことですか?」
「そう言うこと。こんな変な場所で関係を深めても、物語的におかしくなりそうだから忘れてしまうんだろうね。」
「も、物語……?」
白亜ちゃんは不思議そうに首を傾げていたが、言葉で聞いても理解できないのは当然のことだろう。この空間に複数回訪れて、理屈ではなく感覚で理解してもらうしかない。
それはそうと、折角なので話したい事がそれなりにある。
「白亜ちゃんって登場してからそれなりに経つけどさ、実はコールと直接話した事ってないよね?」
「コール、さん?とは、話した事ないです。どんな人かも、知りませんし……。」
どんな方なんですか?と、白亜ちゃんは身を乗り出して聞いてくる。
何度か二人で会ったからか、彼女は僕に対して少し積極的に感じる。話を戻して、自称高性能アンドロイドの話だ。
「コールは僕の友人なんだ。私生活にもよく口を出してくるけど、良い子だよ。」
「私生活って……。もしかして同一緒に住んでいるんですか?」
プログラム上の存在が自身の携帯に住み着いている状況は、一緒に住んでいると言えるのだろうか。
「少し微妙だけど、ひとつ屋根の下に居るのは事実かな。」
「ふ、不純ですっ。」
白亜ちゃんは顔を真っ赤にしてそう抗議する。
画面の向こうの存在と関わっているだけで、不純とは……。あらぬ誤解を与えているような気もするが、それが何かが分からない。これ以上何か言われる前に、話題を変える事にしよう。
「それよりもさ、白亜ちゃんは現状何か思うこととかあったりする?何と言うか、遊興同好会の物語として、要望みたいなものはある?」
「思うこと……。要望ですか……。」
彼女は唇に手を当て、考える仕草を見せる。そうして何か思い当たるものがあったのか、真っ直ぐに僕を見つめて口を開いた。
「その、何となくで申し訳ないのですが、私の出番が少ない気がします。」
出番なんて言葉が出て来て、思わず目を丸くする。若いだけに、順応が早いのだろうか。と言っても、歳はひとつしか変わらないのだが……。
「まぁ、神社に行くのは一ヶ月に一回くらいだからね。出番と言うか、話をする機会も限られてくるよね。」
しかし、先月と今月は二回ほど出番があったような気がするが。確かに部長や先輩、コールと比べても少ない気がする。彼女はまだ中学生であり同好会活動に参加できないので、仕方ないと言えば仕方ないのかも知れないが。
「私も毎回?の様に登場したいです。今のところ、神社の休憩所に友達を招いて遊ぶだけの人ですし……。」
「確かに、この物語の扱いとしてはそんな感じだね。」
ひとつ付け加えるとしたら、可愛い後輩と言うことだろうか。
「でも、白亜ちゃんが毎回登場するとなると、私立青丈高校に入学して遊興同好会に入るしか方法は無いね。あくまでも、遊興同好会だから。」
「早くても、来年と言うことですか……。」
「そう言うことになるね。」
まぁ、来年も僕達がいるとは限らないのだが。それは黙っておこう。
それはそうと、彼女は覚悟を決めた様な表情を浮かべている。
「私、来年必ず青丈高校に入学しますから。そうしたら絶対に声を掛けて下さいね。」
自身を鼓舞する様な、決意にも似た言葉に僕は頷いた。
「そっか……。頑張ってね。」
「はい。ありがとうございます。」
在り来たりな言葉しか言えなかったが、素直な白亜ちゃんの言葉に、僕も元気を貰えた。
長くは続かない青春だろうが、精一杯走り抜けよう。そう決意を新たにした僕は、彼女に見られないようにひっそりと拳を強く握った。




