メタフィクション その弐
このエピソードは、本編になんの関りもありません。
また、物語の世界観にそぐわない発言も多々ありますので、そう言うことが苦手な方は他のエピソードを読んでいただけると幸いです。
それでも良いよと言う方は、是非お目通し下さい。
気が付くと、僕は見覚えのある白い空間に居た。
辺り一面真っ白で、先も見えない場所。少し前に、先輩と二人で語らった場所である。
今まですっかり存在を忘れてしまっていたが、いざ再び訪れてみるとこの空間の事を自然と受け入れている自分に気が付く。どうして今まで忘れていたのか、そんな疑問を抱いた様な気もするが、細かい事は気にしないでおこう。
「おやおや、まさかこんな所にキミが来るとはね……。」
聞き覚えのある声がしたと思うと、背後から肩をポンと叩かれた。
僕は振り向きつつ、その女性の名前を呼ぶ。
「……正子先輩。」
「優君こんにちは、夜だからこんばんはかな?」
正子先輩はおどけたように首を傾げる。先輩は制服姿であり、僕も同様だった。
「立ち話も何だし、取り敢えず座ろうか。」
何から話したものかと迷っている僕に、正子先輩はそう言った。
気が付けば、僕達のすぐ横に学校の椅子が置いてある。元からあったのかこの白い空間が創り出したものか、考えていても答えは見つからないのだろう。根拠は無いが、そんな気がする。
正子先輩は当然の様に椅子に腰掛け、僕にも座る様に促してくる。
「遠慮せずに座りなよ。キミがいつまでここに居るか分からないけど、足が疲れてしまっては嫌だろう?」
「そうですね。では、お言葉に甘えて……。」
別に立っておく理由も無いので、彼女の言葉に従っておくことにした。
椅子に腰を下ろした僕は、正子先輩に質問を投げ掛ける。
「正子先輩はどうやってここに来たんですか?」
「どうやってねぇ。キミと同じだよ。目を覚ますと知らない天井、そういう展開に自ら巡り合えるとはね。至極光栄だよ。」
とどのつまり、この場所に行く方法は分からないらしい。
次の質問。
「この場所について、何か知っていることがあるんですか?僕がいつまでここに居るとか……そういうことを言っていましたけど。」
「何かと言われても、あまり言える事は無いね。」
先輩はそう言うと、右手の人差し指を僕に向かって伸ばす。
「簡単に言うと、ここはキミの夢の中。そして私は、キミが見ている夢だ。それ以上でも以下でもない。」
「僕の夢の中、ですか……。」
「そう、夢の中だ。だから何を言っても良いし、何をしても良い。目が覚めればどうせ、綺麗さっぱり忘れているだろうからね。」
すっかり忘れていたが、確か部長もそんなことを言っていたような気がする。あの時部長は好き勝手話していたし、忘れていたのも事実なのでそう言うことなのだろう。
僕が自身の中で納得を得たところで、正子先輩が口を開いた。
「舞台裏の様なものを話したかったけど、大したことも無いんだよね。」
「舞台裏なんて、わざわざ話すようなことも無いでしょう。そもそも、大したことないけれど話せる事なんてありました?」
「例えば、そうね……。青嵐さんは元々登場する予定じゃなかったとか、そう言う話とかどうかな。」
その話は初耳だった。と言うか、この場所で聞く話は全て初耳だろうか。
「登場とか、そう言う話をして大丈夫なんですか?」
見えない何かに対して心配になる僕を見て、正子先輩は困ったように肩を竦ませる。
「さぁね……。ただし、ここはキミの夢の中だ。キミの夢の中で私が何を話そうと、現実の私に何か責任が発生する訳でもない。」
尤も、私達の存在が現実なのかも分からないんだけどね。先輩はそう言い可愛らしく笑っていた。
確かに僕達は夢の中の存在なのかも知れない。前回も目が覚めた時にはすっかり忘れてしまっていたので、あまり気にしなくて良いのかも知れない。
「それはそうと、青嵐さんが登場する予定は無かったって、どういうことですか?」
「そうだねぇ……。」
正子先輩は顔を真っ白な天井に向け、小さく息を吐く。そして、
「これはあくまで、私ではなく私の背後にある存在によるものだからね。」
そう前置いて話始めた。
「元々、私達の世界。この狭いコミュニティ内での登場人物は私と旭、キミとコールの三人と一体のみだったんだよ。しかし、話の流れで神社で祭りごとをすることになると、その神社の従業員が出てこないとおかしいだろう。だから、新たな登場人物を出そうと考えた。」
「それが、青嵐さんだったんですか?」
「そう言うことだね。元々は、彼女の祖父である方が登場する予定だったんだけどね。私達の名前の法則は知っているよね。」
「はい。部長が春の朝で先輩が冬に深夜、僕が秋の夕暮れですよね。」
「そうだ。名前も判明しない人物を出すより、その法則に従って新しい登場人物を出そうと考えたわけだ。」
「それが、青嵐白亜さんですか。」
「そう。」
白い空間で、僕達は椅子に座り向かい合って話を続ける。
「青嵐は夏の季語だから、私達に足りなかった夏が来たわけだ。名前の白亜は、名前の白から白昼夢を連想できるし。」
「かなり無理矢理ですね。それに、青嵐さんとこれから関わっていくのかも分かりませんよ。」
「無理矢理で良いじゃないか。フィクションと言うのはそんなものだろう。」
正子先輩はスッと立ち上がり、僕の元に歩み寄る。そして小さな声でひと言。
「まぁそう言うことだから、これからあの子と関わっていくこともあるだろうし、少しずつ距離を詰めていけば良いよ。と、そろそろ目が覚める頃かな?良い朝を迎えるといい。」




