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ポーカー

「今日は三人でポーカーをしましょう。」

放課後の部室。部長はトランプをシャッフルしつつ、そう宣言した。

 トランプの束は部長の手の中で混ぜられている。縦に横に、向きを変えながらカードは交差しパラパラと音を立てている。その内部長は、トランプを僕の机の上に置き、大きな音を立てて交互に混ぜ合わせる。

 ショットガンシャッフルと言うやつだろうか。綺麗な手捌き、今度是非やり方を教えてもらいたいものだ。

「良いよ、やろうか。」

いつの間にか正子(しょうし)先輩が僕の背後に立っている。

「たまには三人で遊ぶのも良いよね。」

手袋を着け直しつつ、先輩は僕の隣に座った。首筋にチクリと痛みが走る。先日見た夢の影響だろうか、正子先輩が近くに来ると首に痛みを感じるようになってしまった。一瞬のことであり、健康上の影響もなさそうなので特に気にしていない。

 部長は正子先輩を一瞥して、僕の顔をじっと見つめる。

(ゆう)君はどうかしら。まぁ断っても巻き込むんだけどね。」

「選択しは無いようですね。いや、僕も構いませんが……。」

「よし、決まりね。」

カードシャッフルを終えたのか、部長は裏向きにしたトランプの束を机の上に置く。

 僕はカードの束から五枚ずつ部長達に、配り自分の手元にも五枚カードを配る。

「ルールとかは、おさらいしなくても良いですよね?」

「ええ。あ、でも少しだけ手を入れようかしら。」

部長はカードの裏面に描かれた模様を指で撫でつつ、ひとつ提案する。

「レイズとかコールとかは無しにしましょう。積み重ねるチップも用意していないしね。」

部長の提案に、正子先輩は頷きながら口を開く。

「それは構わないが(あさひ)よ。罰ゲームはどう決めようか。」

「何度か勝負して一番勝利を勝ち取った人が、一番敗北を喫した人に命令をするのでいいんじゃない?」

「そうだね、それでいいか。優君はどうかな?」

「僕も賛成です。それじゃあ、早速始めましょう。」

 僕達は机をひとつ取り囲んで、向かい合った。

「シャッフルは順番にやっていきましょう。三人とも、イカサマをする度量も技量も無いだろうし。」

「言うねぇ……。」

「まぁ否定は出来ないので、黙って頷くしかないんですけどね。」

苦笑いしつつ、僕達は自身の手札をじっと見る。手札交換などは、目上の人から言っていく。遊興同好会に存在する、暗黙の了解だったりする。

「私、二枚交換するわね。」

「それなら、私は一枚だ。いい具合に事が運びそうだよ。」

「僕は、三枚入れ替えますね。」

カードを引き直しつつ、ふとした疑問を口にする。

「そう言えば三人それぞれシャッフルをして一巡なら、何巡しますか?」

「そうねぇ、取り敢えず二巡しましょうか。終わった後まだ物足りなければ、もう一巡すればいいしね。それでいいかしら?」

「うん、構わないよ。」

「僕も大丈夫です。」

疑問を解消したところで、僕達は一斉にカードを表向きにする。

「ツーペアよ。」

「スリーカードだね。」

「わ、ワンペアです……。」

三人とも数字は大したことないので、この回は正子先輩の勝利だ。カードを戻したら、戻したものと同じカードを引いてしまった。ポーカーの素人ならば、よくある事なのだろうか。

「次は私がシャッフルするよ。」

正子先輩はカードを集めて、シャッフルする。

 先輩のシャッフルは部長の様に滑らかでは無いが、それでも自然な手付きでカードが混ざっていく。何だかんだ言って、正子先輩も手先が器用なようだ。

「こんなもので良いかな。カードを配らせてもらうよ。」

「お願いね。」

「お願いします。」

先輩から配られたカードを見る。今の時点で、数字は弱いがツーペアは確約された。部長は手札があまり良くなかったのか、渋い顔をしている。

「私は、そうねぇ。二枚引き直そうかしら。」

「私はまた一枚で良いよ。」

「僕は、僕も二枚引き直します。」

そうして引き直し、カードを表向きにする。

「フォーカードよ。」

「私はフルハウスだ。今回は負けかな?」

「僕はツーペアでした。」

ポーカーにおける役の強さに関して、僕の知識は曖昧である。しかし、先輩の口振りから察するに、フルハウスよりもフォーカードの方が強いのだろうか。何はともあれ、僕は二度目の最下位だ。気を引き締めていかねば。

 こうして僕達は合計九回、ポーカーで勝負をした。結果としては部長が四度勝利して一位になり、合計六度の敗北を喫した僕が最下位となった。

「ううむ、私は二位か。残念だがこれも勝負の結果だ。大人しく引き下がろう。」

正子先輩はそう言うと席を立ち、いつもの席に戻って行ってしまった。

 残された僕は、恐る恐る部長の顔を見る。部長は誰が見ても分かるくらい、悪い笑みを浮かべていた。

「さてさて、優君にはどんな罰ゲームを受けて貰おうかな。この前みたいに言葉遣いを変えて過ごしてもらっても良いけれど……。」

「勘弁してください……。」

あの話し方、気に入ったのだろうか。僕としては違和感が凄いのであまりやりたくないのだが。

 部長はトランプを片付けつつ、罰ゲームを考えているようだ。震えていると、部長は何か思いついたのか輝く瞳で僕を見据える。

「早速で悪いんだけど、前みたいな話し方で正子に話し掛けて来てもらうわね。帰る時間になるまで、頑張って話しかけ続けてね。」

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