アウクスブルク帝国への招聘15
「私が相手が相手になるわ、この化け物!」
「クリスさん大丈夫ですか?」
「任せておいて、この魔族は私が倒します」
本気で戦うとみんなを巻き込むかもしれない。今の私はレベル80位にはなっている。さっきの紅蓮の炎の広範囲攻撃魔法エグゾーダスで私は魔物の1/3を屠ったし、空の魔物を片っ端から倒して私のレベルは今日だけで20は進んだ。だが、中途半端なレベルで皆に気を使っている余裕がない。
「敵、お前が敵? 殺していいのか? 殺せるのか?」
この魔族、知能がおかしい。瘴気を吸収し過ぎておかしくなっているのかもしれない。本来リッチは狡猾で知能の高い魔物だ。それは魔族となっても同じ筈だ。
「クリスさん! 私達も戦います!」
「ええっ? 危険な事はクリスだけでいいんじゃ?」
何だとアル? アンが心配してくれているのに、お前は危険な事を女の子の私に任せて平気なのか? 平気か。そういうヤツだった。彼女になっても扱いは基本変わらないらしい…
「ここは私に任せて、今の私のレベルだと、中途半端で、一人の方が戦い易いの。必ず倒すから、安心して」
「……クリスさん」
アンは心配そうな顔で私を見る。心配してくれるアンは可愛いな、でもアル、お前は許さん。どさくさに紛れて、故意に電撃をかまそう。私言ったわよね? アルは私の物だって!…口に出して言った事はないか…
「危険、危険だ。この女は、とてつもなく危険……」
魔族がまるで意思がないかの様に、機械の様に話す。
「良く分かったわね。私はあなた達の眷属を100匹は倒したわよ!」
「手加減は、手加減はできない。遊ぶ事はできない、確実に、徹底的に、殺す……」
怖っ! この魔族はめちゃ怖いんですけど、頭がやられている様だ。それは幸いだ。本来魔族となったリッチはとてつも無く強敵だ。だが、頭がやられているなら、脅威は半減する。リッチはその頭脳が一番怖いからだ。
そして……。
「クリスさん来ます!」
「アン、任せておいて」
キシン! と凄まじい勢いで闇の魔法の刃が襲い掛かってきた。禍々しく黒く光る刃は鈍く光っている。そして、全く予備動作を見せずに襲い掛かってきたことから、無詠唱の魔法だろう。大抵の人なら不意を突かれてこの一撃で死んでしまうだろう。だが、戦いに慣れた私は一気にバックステップでかわす、後ろに一気に飛ぶことによって、その刃の脅威から逃れた。
凄い威力高っ!? 魔力どんなけ高いの? 心の中で毒づく。想像以上の刃の威力に驚く。あんなのくらったら、一たまりもない。あれ? 私聖女よね? ここはアルに戦わせて、死にそうになったら、メガヒールをかけた方が良かったんじゃ? 結婚の言質も取れるし、しまった…
「めちゃめちゃな魔力ね!」
次々と繰り出される黒い刃をミスリルの剣で受け止める。剣には虚無の魔力がたっぷりのっている。剣が折れるのだなとは思っていなかったが、なんと私の虚無の魔力と拮抗している。魔素だけで私の互角なのだ。とんでもない魔力量だ。
黒い刃にただ黙って斬られるつもりは無い、私は隙を見てリッチに斬りかかり、それはリッチの黒い刃が受け、リッチの黒い刃は私が受ける。
「殺す、殺す……。我らが魔王様をお迎えするため、より多くの瘴気を……。人の血と聖石を、殺さなければ……」
私の剣がリッチの黒い刃を受けると、刃は私の剣と触れ合う瞬間に軌道を突然変えて、ぐにゃりと折れ曲がるように曲がり、私の剣を支点に更にそのまま折れ曲がり私の身体を襲った。
「きゃぁっ!?」
「クリスさん!?」
「大丈夫だよ、アン、クリスはあれ位じゃ死なないよ。ゴキブリの事を心配する様なものだよ」
何だとアル? 彼女をゴキブリに例えんの? 後で電撃100回ね!
「グッ!? メガヒール…」
たちまち私の身体が癒える。聖女のメガヒールを虚無で発動するととてつも無い回復力だ。だが、その隙をリッチは見逃さなかった。
「爆炎障壁ガンズン=ロウ!!」
リッチが炎の最上位呪文を唱える、簡易詠唱だ。
「魔法防御ファランクス!!」
すかさず防御魔法を唱える。視界が炎に染まる。だが、私の防御障壁をリッチの魔法が突き破る事はなかった。そして、炎が収まる前に、
「爆炎障壁ガンズン=ロウ!!」
リッチと同じ呪文を唱える。だが、その威力はリッチのものの数倍は強いものだ。魔素で発動した魔法と虚無で発動した魔法。同じ魔力なら100倍威力が違う。魔力事態はリッチの方が上だろう、だが、私は虚数魔法使い。それが私が最強の魔導士たる由縁だ。
「うぉおおおおおおおおおお、こ、殺す、殺せるぅううううううう」
私の炎の魔法に焼かれたリッチは呪詛の声をあげる。だが、私はこの機会を見逃さなかった。リッチは霊体だが、アンデッドでもある。不死者の苦手な魔法、それは炎なのだ。実際、私の炎を攻撃魔法は効いている様だ。ここで、一気に畳みかける。
「魔法剣! 飛燕斬・焔爆灰燼!!」
私の持てる魔力を全て剣につぎ込み、魔法剣につぎ込む。未だ私の炎の魔法が消えていない状態からリッチの直ぐ直近に瞬歩で近づき、一閃。しかし、
「鬱陶しい、鬱陶しい。さっさと死ね、どうせ死ぬだけなのに……」
リッチは私の最大奥義を食らってもなお、生きていた。それどころか、
「そんな攻撃は効かない、効かないのだ。無駄な事をしないで、早く死ね」
「なっ…………どうして?」
「クリス、気をつけて!?」
禍々しい瘴気を感じると、突然目の前に黒い刃が出現する。そんな馬鹿な! この魔法は闇魔法のダムドの筈、術者から離れた処に刃を突然出現させる事なんてできない筈、だが、
「きゃっあああああああああああああああああああああああああ!?」
お腹が焼けるように痛いし気絶しそうなほど痛いんですけど!! こんなチートな魔法あり? 突然目の前に魔法の刃を出現させるのだなんて!!
私の究極奥義はいなされ、私に黒い刃は今なお刺さったままだ。そして、黒い刃が私の身体を切り刻み始めた。激しい痛みの上、吐血する。しかし、
「(うおおおおおおおおおおおお!! 何としてでも勝ってやる!! たとえ、アンを犠牲にしてもだからね!!)」
「(流石クリス、発想がクズ)」
「(クリスさん、最低…)」
「(これはクリス殿が悪い、少々痛いのは自業自得かと)」
だが、私もみんなも私が負けるのだなんて考えていなかった。
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