アウクスブルク帝国への招聘3
ディセルドルフの城で城の中の案内を聞くと、私とアルはディセルドルフの街へ出かけた。ディセルドルフの街はアクレイア王国にはない物がたくさん売っている。見物がてらデートだ。面白いものみつけたら、大量仕入れして、ケルンで売ろうと意気投合した。何せよ、私には大量収納可能な収納革袋があるのだ。第三中隊に配った革袋は馬車一杯分位だけど、私の専用のは馬車10台分位優に入る。大量仕入れができれば、ぼろ儲けだ。アルにこの事を話したら、脳内麻薬が決まったらしく。ほぼアル中みたいになった。
二人で手を繋いで街中に繰り出す。いつもの事だけど、とても懐かしい感じがする。特にディセルドルフの街ではそんな気持ちが強くなった。
この街には独特の空気がある。街は赤や黄色等が多い家屋が多く、500年前から雰囲気は変わらない。歴史がある街で、歴史的な建造物も多い、その為、この街はロマンティックストリートとして有名だ。デートにはもってこいなのである。
私も最近アルが気になるのだ。何せよ、アルは鬼のように追い込めば、騎士団長にすらなれそうなのだ。その上、私は幼馴染、圧倒的ないいポジションでしょ? 誰だ? 幼馴染は負けヒロインのフラグだなんて言う奴は? でも、もう、アルでいいよね? という結論になってきている。唯一の心配が浮気だが、それは徹底的な束縛で何とかしよう! それと常時監視する魔法とか開発しようかな? 妻帯者達に命を狙われそうな気もするが、私の様な美少女は命までは取られないだろう。うん、よし、開発しよう。
そんな事を想って鼻歌を歌っていると、周りの人達が何故か二度見、三度見していく。そうか、この街の人達は私が500年前の青の大魔導士だと思ってるんだ。実際、そうなんだけど、どうしたものか? そうこうしていると、見知った子供に出会った。あれはお城迄行く途中に出会った子供? 何故か泣いている。私は慌ててその子の傍に寄った。
「どうしたの僕? 昼間会った子よね?」
「青の聖女魔導士様! 助けて! たすけてくらひゃい!」
「一体どうしたの?」
私はただ事じゃない様な気がした。この男の子はおびえていた。その怯えは尋常なものではなかった。まるで、ついさっき魔物でも遭遇したかの様な、そんな怯え方だった。
「サリー達が、サリー達が!」
「サリーちゃん達がどうしたの?」
「街の外の草原の広場で、大きな魔物が出て、僕、サリー達を遊び場の洞窟に隠して、何とか逃げ切ったんだけど、誰も魔物が出たって事、信じてくれないんだ」
「ま、魔物? 街を出たばかりの広場で?」
信じられない話だった。ディセルドルフの街には聖石が埋まっている。例え魔石の瘴気が濃くなったとしても、そんなに急に、この街のすぐ近くに魔物が現れるのだなどと信じられない。しかし、この子が嘘を言っているとも思えない。幸い、収納革袋には剣も入っている。
「アル、行くわよ!」
「へぇ? 何処へ?」
「広場に決まっているでしょうが!」
「なんで、そんな慈善事業みたいな」
「私は贖罪をしたいの!」
「なんか、クリスは時々いい人になるな」
「私だって、たまには善人になるわよ!」
逆にアルみたいにいつも悪人の方が疲れない? ブレないところは凄いと思うけど…でも、こいつ私に対しては時々助けてくれたりするから、自分だって、言う程悪人じゃないくせに…
「じゃ、仕方無い、行くか? ちょうど腹ごなしにいいかもね」
私とアルと少年は三人で街の外へ向かった。少年はアシベと言った。街を離れるにつれてアシベの顔色が悪くなる。やはり、魔物はホントのことだろう。一体何がおきているの?
程なくして、広場に来た。私とアルはそれぞれ、皮袋から剣を取り出すと、帯剣する。探知のスキルを使う…感はない。しかし、
「(??????)」
何だ? この魔力は? 気配はないが、何か強い魔力を感じる。魔物とは少し違う。魔物には強い瘴気を感じる。強い魔力と瘴気を感じない存在、それは人間以外だと?
「まさか、聖獣?」
「確かに、赤の森の聖龍に似た感じだね」
アルは察しがいい。
「アシベ君、サリーちゃん達を隠した洞窟に連れて行って!」
「うん、直ぐ近くだよ」
そういうとアシベちゃんは100m程歩いて洞窟に連れて行ってくれた。
「こ、これは!?」
そこにはゴブリンの死骸が朽ちていた。まさか、ホントに魔物が? それにしても、この魔物は誰が滅ぼしたのか? 既にサリーちゃん達は救助されたのか?
「サリー? いる?」
アシベ少年が洞窟に声をかける、すると、
『ガルルルルルルルルッ!』
「なっ? 魔物?」
シュンと剣を抜く、アルも続く、何かいる!
「アシベちゃん、下がって!」
私はアシベちゃんを下がらせると、洞窟の中に進んだ。すると、
「きゃっ、きゃっ!?」
子供の可愛らしい声が聞こえた。どういう事? 私はライティング懐中電灯の魔法を唱えると洞窟の中へ進んだ。すると、
『ガルルルルルルルルッ!』
そこには身の丈3mはある黒豹がいた。しかし、黒豹の近くには女の子が、しかも、黒豹にしがみついていた。信じられない。魔物でなくても、動物でも豹は危険な生き物! 人間となれ合うのだ等? いや、例外がいた。そうだ、聖獣…まさか、私はこの聖獣を知っているかもしれない。身に覚えがあるのだ。黒豹の形をした聖獣に。
「まさか、ロデムなの?」
「アリシア様ですか? お変わりない」
アリシアは私の前世での名前だ。
「黒豹が喋った!」
アシベちゃんが驚く。
「大丈夫よ。この子、害はないわ。でも、どういう事なの? あなたが何故こんな処にいるの? あなたはアクレイア王国の白の森の守護聖獣でしょ?」
「それは500年前の事です。今はディセルドルフの街を守る黒の森の守護聖獣です」
「ちょっと待って! この街の守護聖獣という事は黒の森は一体どうなっているの?」
「察しがいいですね。アリシア様、私は魔族に敗れました。今は力を蓄えています。しかし、再戦して勝てるかどうか…あまりにも魔石の瘴気が強すぎる」
聖獣ロデム、前世で私の従魔だった三匹の内、一匹。姿は黒豹と小柄だが、その力は軽くエンシャントドラゴンをも凌ぐ、聖龍と同様、女神様の加護を受ける、聖なる獣なのだ。他に聖海獣ポセイドンもいるよ。
「ロデム、私が助けてあげる。500年前と同じ様に、それと私は今はクリスティーナというの。クリスと呼んでちょうだい、ロデム」
「クリス様、いや、アリシア様、懐かしゅうございます」
そういうとロデムは私の近くに寄ると、まるで猫の様に私に甘えてきた。
ゴロゴロゴロゴロ
ロデムは喉を鳴らして喜んだ。ロデムは前世の私のペットだったのだ。当時聖獣をペットにするのはどうよ? という論議もあったが、当の本人であるロデムが快く私のペットになったのだ。というか、こいつは猫気質で、都合がいい時甘えて、都合が悪いと私がピンチだったりしても助けに来てくれない、超猫気質なのだ。ペットにするのも結構胆力がいるのだ。普通の人、多分キレる。この猫型聖獣酷いんだよね。よしよしと頭を撫でてやると嬉しそうに目を細める。
「ところで、クリス様、言いにくいのですが、のんびりしている暇はございません。魔族はとてつもなく巨大な瘴気を取り込みました。おそらく、魔族は一両日中にこのディセルドルフの街を襲います」
「えっ? 魔族は魔物に瘴気を供給できるよね? それじゃ魔物はディセルドルフの街に…」
アルがとんでもない事に気がついた。500年前度々あった事だが、魔族が力を付けると、森の奥から街へ出て来る。魔物を伴って、アルの言う通り、魔族は聖石に打ち勝つ程の瘴気を持つだけでなく、他の魔物へ瘴気を供給して、聖石のある街にも大量の魔物を運んで来る。ロデムの言う事が本当なら、森の奥へ行って、魔石を浄化している暇などない、魔物は直ぐにでもこの街に押し寄せるだろう。500年前と同じ様に、
「で? 魔族の名前は?」
「この森の魔族はアザエルです」
「復活したのね。500年前に私が倒したヤツでしょ?」
「ええ、500年前は白の森ででしたが…」
「また同じヤツにやられたのね?」
「面目ない…」
全く、500年前と同じパターンか、黒の森も結局そうだった。今度は白の森バージョンを黒の森でするのか? 仕方ない、頑張るか…でも、本気出さないと魔族には勝てない。今の騎士団でも魔族には…聖龍ロプロスや聖獣ロデムの力を借りてようやく対等。それにしても、私は虚無の力を使うしかない。正体がバレるかもしれない。私達の騎士団は薄々知っていて見逃してくれている。だけど、ここはアクレイア王国でもケルンの街でもない、アウクスブルク帝国領なのだ。見つかったら討伐隊が組織されるかも…でも私には逃げるという選択肢は持ちえなかった。例え私が騎士ではなかったとしても…
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