アウクスブルク帝国への招聘2
私達帝国招聘団一行は、アウクスブルク帝国の第十三騎士団にエスコートされて帝国極東の地、デッセルドルフへ向かう。移動には馬車や馬では無く、転移の魔道具が用いられた。帝国の施設、帝国大使館ケルン支部より魔道具にてデッセルドルフへ一路、向かった。
アウクスブルク帝国は大陸の西部全域と大陸の東側南のアクイレイア王国と北のバース共和国を分断する青い山脈付近の旧自由同盟領を領有する。山脈の麓はアクイレイア王国とバース共和国を結ぶ通商の要の位置にあり、大陸の西側の大半を治め、主要通商路を治める大国だ。
大陸はほぼ四角な形をしており、西側全域が帝国、東南側にアクイレイア王国、東北側にバース共和国、西側は全て海には面している。帝国の前身は魔族が住んでいた魔境だ。今は魔境はほとんどない。だが、帝国には今も深い大魔石を擁した森が多数あり。未だ魔族は存在する。500年前から帝国の開拓が始まったが、今なお、帝国全域が人が住む地になった訳ではない。深い森の最奥は魔族が住む地なのだ。
目的地であるデッセルドルフの前身は旧自由同盟領だ、そして、この地には大きな黒の森が存在する。その黒の森の最深部には今も魔族が住むと言われている。
魔道具のおかげで、デッセルドルフへの移動は半日程度で済むが、魔道具での移動はやや人の精神にも肉体にも影響が出るので、到着後、半日の休暇が与えられた。宿はアウクスブルク帝国ディセルドルフの領主の城を中心に街の宿屋も使って分散して宿泊する。聖女の私達はディセルドルフの領主の城が宿だった。
今回の聖女招聘団は第一騎士団の第三中隊の騎士約40名で構成され、陣営は前回の赤の森討伐の精鋭を中心に若手も多く参加していた。若手の中には第四中隊から第三中隊へ転属になった、アンの同級生、ヨランとロジャーの姿もあった。彼らは聖女エリスちゃんの直衛の護衛が役目だ。彼らは目覚ましい成長を遂げ、早々に第三中隊に編入されたのだ。
「遠路はるばるご足労頂きまして恐縮致します。よく来て頂けました。アクイレイア王国騎士団及び聖女団の皆さま」
挨拶をしたのは、この街の守護騎士団団長ボリスだ。ボリスはこの街を守る帝国十三騎士団団長にして、この街を治める領主でもある貴族だ。城の主でもある。
「みんな今日一日といいっても午後だけだが、街を見物するも良し、休息をとって、明日からの黒の森の大討伐に備えるもよし! 今日は自由にしろ!」
第三中隊長から今日と明日の説明を受ける。
「先ずは皆様の宿へ我が第十三騎士団の各団員がご案内させて頂きます」
「みんな、明日からの黒の森の大討伐は命がけだ! 十分に静養して英気を養えよ!」
こうして私達は先ず宿泊場所へ案内される事になった。私達聖女団と護衛のアル達は帝国の騎士団長ボリスに案内されてディセルドルフの城へ向かう事になった。改めてボリスと挨拶をかわす際、騎士団長のボリスは私を何度も見つめていた。いや、そんなガン見されると恥ずかしいわ。いくら私が美少女でも、てへへ。
「…いや、まさか、そんな、しかし、髪の色が違う…」
「どうされたんですか?」
私は首をコテリと曲げて聞く。あざとい仕草だ。アンから学んだ。
「いえ、知っている人とあまりに似ていたものですから…」
知っている人? 私に良く似た人がこの街にいるのだろうか? まあ、人はこの世界に十人はそっくりさんがいると言われているからな。この時は私はあまり気にしないでいた。
城への道中、私は違和感を覚えた。道すがら、周りを見渡すと、道端で会う人たちが私達いや私を見て頭を下げる。頭を下げるどころか、その場に座りこみ、私に頭を垂れる人々さえいる。どういう事? これ?
「こんなにも、私達聖女団の一行は期待されているのでしょうか?」
私は気になって、騎士団長ボリスに聞いた。
「いえ、原因はそれだけでなく、聖女クリス様、あなたです」
「どういう事ですか?」
「城につけばわかります。その時、お話しましょう」
説明を城まで待たされるが、滅茶苦茶気になる。
城へ近ずくにつれて、私は500年前の記憶を蘇らしていた。そうだ、500年前に私はこの街に来た事がある。あの時は冒険者として、この街を襲った魔物の軍勢と闘ったのだ。あの頃は私は救世主として崇がめられた。今はもう、忘れ去られてしいるだろうが…
しばらく歩くと、私をじっと見つめている子供と目が合った。私は子供は大好きだ。意外だろう? 私を見つめるその男の子はとても可愛らしい顔立ちで、顔に笑みを湛え、じっと私を見つめていた。私はその子の近くに寄っていった。子供と無邪気な会話って、癒されるんだもん。子供の近くに来て、かがんで目線を子供と同じにする。私と至近距離で目があった瞬間、子供は更に笑顔を増し、
「魔導士様!」
「へぇ?」
思わず声をあげてしまった。魔導士? 私は今、騎士団服に身を包んでいる。魔導士といういでたちではない。
「僕? 人違いよ。こう見えても私は聖女なのよ。魔導士じゃないわよ」
笑顔で子供に話しかける。しかし、
「どうして魔導士様の髪は青くないのですか?」
私の顔は一瞬でこわばる。魔導士様、髪が青い、それが意味成す事は? この地方には私の大魔導士時代の事が伝承されているだろうか? 私の容姿は確かに500年前の前世の私に良く似ている。しかし、500年も前の人物の事を何故この子が知っているんだろう?
「僕、勘違いよ。私はアクイレイア王国から来た聖女なのよ。僕の知っている人とは人違いよ」
「そうかな? そっくりなのに?」
やはり、この土地には500年前の私の容姿が伝わっている。それに大魔導士の髪が青い事も…でも、どうしてそんなに詳しく?
「あなたはこの地方の伝説の人物にそっくりなんですよ。それで皆、あなたに注目してしまうのです。かくゆう私も驚いた一人です」
騎士団長のボリスはそういって、そう私に言うと、子供に飴玉を渡した。
「本当に魔導士様だったら、いいけど、この人は聖女様だよ。でも、魔導士様と同じ様にこの街を助けてくれるから、安心して」
「うん、わかった。魔導士聖女様がこの街を助けてくれるんだね。ありがとう、魔導士聖女様!」
そういうと名残惜しそうに、私達がその場を過ぎ去るのを眺めていた。
ヤバババ、この地方、ヤバババ、私の正体がバレる確率高ぇー、第三中隊のみんなは私の正体に気がついているッポイ、でも、この街の人にバレたら? 帝国や王国に連絡がいったら、私、ヤバくない? 結局、斬首刑とか勘弁して欲しい。
たくさんの人に注目されながら、私達はディセルドルフの城に到着した。
……ああ、懐かしい、あの頃と同じままだ。城は500年前と同じで、今もあの頃のただずまいでそびえたっていた。青い山脈に似合う白を基調として、所々青い美しい城を目にした私は、思わず懐かしく思えた。500年前に大活躍した私はこの城で当時の公主に厚く遇された。3日程滞在したが、たくさんの料理と、そういえば、当時の王子に嫁がないかと散々公主に口説かれた記憶がある。
城に入り、大広間に通された。そこで城の中の施設を説明される予定だが、大広間には確か女神エリス様の絵画がかけられ、豪奢な装飾がなされていた記憶だ。だが、
「――――――~~~~ッ!!!!」
またしても、思わず声を出しそうになった。私の目に入ったのは、エリス様の絵画ではなかった。広間の中央に飾られた一枚の絵画には、腰まである青い髪の少女が黒い剣を掲げたさまが描かれていた。そして、少女を取り巻く3人の青い髪の男女。それは間違いなく前世の私と私の従者達だ。当時の私の姿形、衣装もこの街を救った時のものに瓜二つだ。その青い髪を風になびかせ、白を基調とした、このアクレイア王国の騎士団服に良く似た服。当時の私のお気に入りの服だ。
だから、指名手配絵画やめようよ!
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